第63話 お化けのせい

「ちょ、ちょっとネオさん?

しっかりしてくださいよ」


「あらあら~ネオンちゃんったら」


「なーによー! 逃げるの?

そうですかそうですか……

私が怖いですか……」


めっちゃ気にしてるじゃん。


「あれ冗談ですよ。

そんなこと思ってるわけ

ないじゃないですか」


「ふーん……なのに……

そうやって逃げようとする……」


立ち上がろうとした俺に

ネオさんが飛びついてきた。


こんなこと初めてだ。


「マリアさん助けてください!」


「あらあら~二人で

いちゃいちゃしちゃって」


と微笑まし気に言ってくる。


いや、もう色々と当たり過ぎて

こっちはやばいんですけど。


「マリアさーん!」


俺はもう無我夢中で助けを求めた。


「は~い。しょうがないわね~

ネオンちゃん?」


「んえ? なに?」


マリアさんが食器を洗うのを中断して

ネオさんに歩みより、


「オー君はまだ未成年よ」


そう告げた。

その直後、びしっとネオさんの

背筋が伸びる。


「ちっ」


そして、不機嫌そうに舌打ちをした。


それから、子供のように駄々をこねる

ネオさんをマリアさんと介抱して、

これは一人で帰らせるのが危険だと思い、

今日は泊まってもらうことにした。

勿論、マリアさんも。

空いてる部屋はあるし、そこに

敷布団を引いた。


「じゃあ、オー君お休み。

覗いちゃだめよ?」


「覗きませんよ」


そう冗談を言ってくれるのが

信頼されている証拠なのだろう。


ま、まあ? 興味ないし。

別に覗きたいとは思わないけど。


それに、俺も夜遅くまで食べていたので

もう眠くして仕方がなかった。


ベッドに横になった瞬間、

一瞬で眠りについてしまった。


それから、三時間後。尿意で目が覚め、

トイレに向かっていたときだった。


何かキッチンから音がした。


恐る恐るキッチンの様子を窺う。


「だにぇよ!」


やば……見つかった。


そこにはもう呂律のおかしい

ネオさんが酒を飲んでいた。


まさか、一人抜け出して飲んでたのか!?


「ネ、ネオさんまだ起きてたんですか?」


「ふえ? ああ、ねむねにゃくね」


「はい?」


「もういい!」


できあがってんな。


これ以上飲んだらやばいんじゃないか?


「ネオさん。

もうお酒はやめて寝ましょう?

もう2時過ぎてますよ」


「いや!」


子供か。


俺はネオさんの手に持った

お酒を奪い取る。


「あ! おしゃけ……」


ネオさんが必死に背を伸ばして

奪い返そうとするが、

届かないようだ。


「大人を馬鹿にしてぇ………

ただでしゅむと思わないで……

あ、あ、ああ!」


直後、ふらついたネオさんの

体重が俺にのしかかる。


俺はネオさんの下敷きになり、

床に倒れた。


「いてて……ネオさん大丈夫で」


びっくりした。

ネオさんが俺の顔を

まじかで覗き込んでいる。


ち、ちか!?


「あんまり……大人……のこと

……馬鹿にしてたら……

ほんとに……痛い目にあう……わよ」


なぜが不気味に笑みを浮かべる。


「ネ、ネオさん?」


いつもと様子が違う。

本当に。

何か猛獣のような感じがする。


それはそう。

今すぐ、襲われそうな。


「狼……」


「は、はい」


「あなた……いくちゅよ」


「今年で17です」


すると、ネオさん満足げに

意地悪そうにこう言った。


「なら……フフフ……

あと……一年ね」


「ど、どういう意味で」


その直後、ネオさんが倒れた。


俺は慌てて抱き抱える。


「ネ、ネオさん!? 大丈夫ですか?」


一瞬、焦ったがどうやらついに

眠りについたようだ。


何のことか分からないが、

まあとりあえずよかった。


翌朝。

10時ごろ。

遅くに起きてきたネオさんは真っ青だった。


「あ、おはよう、ネオンちゃん」


「お、おはよう」


「おはようございます」


「ね、ねえ狼」


「何ですか?」


「わ、私……夜中に貴方に会った?」


その絶望した表情から、あのことは

なかったことにした方が良いと考え、


「いや、何も。

俺昨日は7時まで一回も起きなかったので」


そう返答すると、

ネオさんはほっと胸を撫で下ろした。


「そうよかった……夢か……

そんな気がしたのよ。

あまりにも現実味のない夢だったから」


「え~気になる~」


「教えないわよ、マリア」


「ふえーん」


まあ、これでよかった。

ネオさん、あの日は様子おかしかったし。


そう一件落着と朝食を食べようとしたとき、


「そういえば、ネオンちゃん?

夜中にお酒飲んだの?

床に缶が捨てられてたけど」


「………………え」


再び、ネオさんの顔が真っ青になった。


さっとこっちを見てくる。


「や、やっぱりあの夢って」


まずい……


「あ、ああ! 

そういえば俺の家って

お化け出るんですよね! 

お酒が好きな」


「え!? そうなの!?」


ありがたいことに

マリアさんが食いついた。


「そうなんです。

普段はお酒置いてないんで、

こういうことなかったんですけど、

親がいたころはよくあったんです。

いやー久しぶりだな。懐かしい」


「ええええ! 

私初めて怪奇現象

目撃しちゃったかも!

この空き缶記念に持ち帰っちゃお!」


「そ、そう……怪奇現象……」


一方で、ネオさんは青ざめたままだった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る