第51話 ペア決め

「じゃあ改めて自己紹介しまーす!

Vtuber名は星宮リナ!

モデルも兼業している現役Jkです!」


星宮リナ 登録者数 123万 平均同接 15000


「うちはグレイナ・カレンっていいます!

まだシャイニングでデビューして

5ヶ月ちょっとなんでブイライブの

皆さんと同じぐらいなんですけど、

皆さんの力になれるように頑張ります!」


グレイナ・カレン 登録者数 68万

平均同説 9000


「妾は凛風! かつて中華の......は

先ほど申したな......

まぁとにかく! この中で最も

Vtuber歴の長いのは妾じゃ!

どーんと頼るがよいぞ!」


凛風 登録者数 150万 平均同接 14000


「一番長いのはネオ先輩ですけどね」


「星宮! それを言うな!」


「凛風ちゃん可愛い......」


星野さんと凛風さんのやり取りを、

マリアさんが慈しみの目で見詰めている。


「可愛すぎて飼いたい......」


ちょっと怖いこと言ってる。


「はい。皆さんの自己紹介も

終わったところで、本題に入らせて

いただきます。まず本日中に

決めなければならないのが誰が誰とペアに

なるかです。3D配信で何をするかは

ペアで考えていただきますから、ペアで

案が出ないと我々もサポート

できませんので」


誰と誰がペアになるかか。

運営側が勝手に決めるものかと

思ってたけど、自分達で決めるのか。


にしても、自分からこの人がいいって

指名する勇気は俺にはない。


沈黙が流れる中、先に動き出したのは、


「あ、あの凛風ちゃん。歳はいくつなの?」


マリアさんだった。


もう完全に狙ってる目をしている。


「そなた! 妾に向かってちゃん

付けだと!? 妾は20じゃ!」


見た目によらず、けっこういってんな。


「か、か、可愛い~」


「可愛い言うな!

妾のことを馬鹿にしておるのか!?」


悶絶しているマリアさんは、

バックに手を突っ込んで袋に入った

クッキーを取り出した。


「これ私が作ったクッキーだけど食べる?」


「食べる!!!」


突然、凛風さんは顔をぱっと輝かせて

キャッキャ喜びながらクッキーを

受け取った。


「うまひっ! このクッキーうまいぞ!!

そなた......中々やりよるな......モグモグ」


「可愛い......ねぇ私凛風さんのこと

ちゃん付けしてもい~い?」


「よいぞ! 許す!」


「やった!」


モグモグとクッキーを食べる凛風さんの

頭を、マリアさんはニヤニヤしながら

頭を撫でていた。

今にも誘拐しそうな雰囲気である。


「あの二人はもう決まったようね」


「そうっぽいですね」


一瞬でマリアさんに手懐けられた

凛風さんの様子を見て、ネオさんは言った。


「さて......残るは私たちね」


まぁあの二人がペアになった以上、

俺が選ぶべき人はもう決まってるよな。


「星野さん、俺と組もうか」


「......へっ!? ちょ、直球すぎない!?

あたしびっくりしたんだけど!!」


いや、だって気まずい空気が流れてる

ネオさんと星野さんを組ませるわけには

いかないし。


「うわ嘘マジで......これ......くはく......

みたい......じゃん」


なぜかずっとゴニョゴニョ言ってるから

何も聞き取れない。


「ダメかな?」


「え!? ううん!!!

全然!? めっちゃ嬉しいよ!

やろやろ!」


「いいですか? ネオさん、カレンさん」


「うちは問題ないっすよ」


「私も。寧ろ、その二人の方がいいと

思ってたわ。オオカミンがバズった

きっかけの相手なんだし。

ていうことは、私とカレンさんが

パートナーね。よろしく」


「はーい! よろしくっす!」


こうして、俺たちのパートナーが

確定したのだった。


────────────────────


3D配信が行われるのは二ヶ月後。

それまでに自分のペアと色々話し合って

3D配信で何をするのかを決めていく。


それを運営側に相談して、

実行可能かを審議してもらう流れだ。


そのため、早めに何をするのか

決めなければならないのだが、


「えー長かった夏休みも明け、

再び皆さんの元気な姿を見れたことを

嬉しく思います」


始業式の長い校長先生の挨拶と共に、

二学期が始まった。


星野さんとこうして会えるのはいいのだが、

学校の中だといつも輪の中心にいる

彼女に声をかけづらい。


かといって、デスコのチャットで

3D 配信で何をするのかを決めるのも

面倒だ。


折角、会える機会があるのだから

対面で話し合った方がいい。


「ねえねえ! 聞いてよ! この夏休み

彼と鎌倉行ってさ。これ写真!」


「うわー!

千尋の彼氏めっちゃイケメンじゃん」


「えへへでしょー!」


「凛は? 夏休み何してたん?」


「え? あたしは基本モデルの

仕事だったかなぁ。あとは家でのんびり」


「うっそだぁ。それ以外にも

何かしてるでしょ。もしかして、

隠すってことはデート?」


「きゃーーー!!!

凛隠さなくてもいいのに!」


「もー! そんなんじゃないって!」


話しかけづれええええええ。

無理だろ。あの中に話しかけるの。


けど、ブイライブの3D配信だし、

星野さんたちはわざわざ手伝いに

来てくれてるんだよな。


だから、俺が色々リードしなくてどうする!


気を引き締めろ俺。


いくぞ!!!


それから昼休みの間、あと一分したら

話しかけようと決め続け、

結局話しかけることはできませんでした。


帰りのショートホームルーム後、

仕方ないから後でデスコ送ろうかと

教室を出た俺に、


「あ! ごめん皆! あたし

今日カラオケパス!

健児君と用事あるの!

ちょっと健児君待ってよ!!!」


星野さんが超大声で言ったのだった。


「ちょ、星野さん! 声でかいって!」


「え? もー気にしすぎたよオオカミン。

誰も見てないって」


めっちゃ見てます。

てか、今も教室の窓からクラスメイトが

顔を出してこちらの様子を窺っています。


「ほ、星野さんはもうちょっと

自分がどれだけ存在感あるか

知った方がいいよ」


「あぁ~あたし目立つからね。

この髪色だし」


そういうことではない。


「て、てかさ。俺らなんか約束とか

してたっけ?」


「したじゃん!

今日じゃないけど。

この前ペア決めた帰りに、

学校始まったらそこで話し合おうねって」


.....................なんかそんなことを

言われた気がする。


「それって約束?」


「約束だよ! どーせオオカミンは

学校じゃ話しかけて来ないだろうから、

学校終わってから話し合おうと思ったのに!

一人でそそくさと帰ろうと

してるんだもん」


「す、すみません」


「配信者祭ではあんなに

暴れてたのにねぇ?

学校だとほんと大人しいんだから」


ギクッ


「み、見てたの?」


「最初から最後まで全部見てたよ」


「............」


「どうしたの?」


「......マリアさんが言ってたのは

嘘だから」


「どういうこと?」


「いや、だから四日目の大会で

マリアさんが言ってたことは

でたらめなんだよ」


「あ、たぶんそれまだ見てないかも!

あっぶな! 忘れてた!

あたしその日昼から仕事だったからさ」


「......え?」


「オオカミンありがと!

後で四日目のアーカイブ見るね!」


俺は直ぐ様、スマホを取り出して、

四日目のアーカイブを非公開にした。


「ごめん。四日目の

アーカイブ間違えて消してたんだった」


「大丈夫だよ?

あたしオオカミンのアーカイブ

全部ダウンロードしてるから。

よかった。間違えて消しちゃう前に

ダウンロードしておいて」


.........ああ。神様仏様。


どうか助けてください。




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。
















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