第50話 合流

畠山さんが退出し、俺たちの間に

沈黙が流れる。


一応、三人とも畠山さんの提案を

了承したが、ネオさんの顔色は

暗いままだった。


「よかったんですか? ネオさん」


「......ええ。正直、不安しかないけど、

これはブイライブにとって

大きなチャンスだわ。シャイニングとコラボ、

そしてVtuber活動の一大イベントである3D配信ができるんだもの」


けれど、ネオさんは元シャイニング所属だし、

気まずそうだな......


「でも、どうしてシャイニングが

協力してくれるのかな?

ブイライブがたくさんお金出したの?」


マリアさんが疑問を投げかける。


「それはないわ。それだけの費用があったら3D作成とかを専門にしている会社に依頼するだろうし。きっと、今のブイライブが

旬だからよ」


「旬?」


「そう。シャイニングは大手だけど既に

人気のあるシャイニングのVtuberは

3Dデビューしてるから。そんなに

人気のない自社のVtuberに3Dデビュー

させるより、今が旬のブイライブに

協力して、それとコラボした方が圧倒的に

利益があるって思ったんでしょ」


はぁ~なるほど。


「つまり......私たち利用されたってこと?」


「まぁそうなるわね」


「なら、俺らも利用してやりましょうよ。

シャイニングとコラボできるって

考えれば、俺らにもめっちゃ

利益あるじゃないですか」


「......そうね。狼の言う通りだわ」


「私たちで頑張って

3D配信成功させましょ!」


────────────────────


それから三日後。

シャイニングの人達と顔合わせが

あるということで、再び本社に

呼び出された。


「どんな人かな!? ワクワクするね!

オー君!」


「そ、そ、そうですね」


完全にコミュ障モード now


シャイニングから派遣されるってことは

めっちゃ人気のVtuber達だろ!?


配信者祭で人気の配信者と絡んだけど、

あれはオンライン上だったからなぁ......


対面だと緊張で吐きそうになる。


「皆さん、シャイニングの方々が来ましたよ」


も、もう!?

畠山さんの言葉に背筋がピーンとなる。


バクバクと心臓が鳴る中で、

畠山さんの後ろからシャイニングの

人達が顔を出した。


「オオカミン!!!」


「なっ!?」


「来ちゃったよ!」


「星野さん!?」


一番最初に現れたのは星野さんだった。


まぁ星野さんはシャイニングの中でも

五本の指に入るぐらい人気だし、

来ることは予想してたけど。


しかし、この陽キャオーラを

発せられるといつものように

ドギマギしてしまう。


それに前、星野さんに教室で

抱きつかれたからな......


なんでか知らないけど。


それからずっと星野さんのことを

意識してしまっている。


「あたしが来て嬉しい?

ねぇ嬉しい?」


いきなり隣に座られて詰め寄られる。


「......あ、ちょちかっ!?」


半分パニックになってしまい

隣にいたマリアさんに助けを求めた。


「あー! マリアママ!!」


マ、マリアママ!?

星野さんとマリアさんいつの間にそんな

関係になったんだ!?

オフコラボのときか?


「ルイ......じゃなかった。

ネオ先輩もお久しぶりです!」


す、すげぇ!

絶対二人は気まずいはずなのに、

お馴染みの陽キャオーラで

吹き飛ばしやがった!


「ひ、久しぶり......」


「星野ちゃん久しぶり~

星野ちゃんだったらいいなって

思ってたから嬉しい!」


「あたしもです!

このコラボの誘い受けたときは

嬉しくて飛び上がっちゃいました!」


そんな会話を星野さんたちがしていると、


「あ! 星宮先輩もう入室してる

じゃないっすか!」


ボーイッシュな金髪にピアスをした

スポーティーな女性が入ってきた。


「どもどもちわっす!

ブイライブの方々!

うち、シャイニングのグレイナ・カレンって

いいます! よろしくっす!」


また陽キャそうな人が入ってきた。


星野さんとは違った明るさを

持っていて、この人も人気ありそうだな。


ネオさんの反応を見る限り、

知り合いじゃなさそうだ。

星宮先輩って言ってたから、

レインボーの中でも最近デビューした人

なのだろうか。


「お!?

もしかしてもしかして!

その人が今話題のオオカミンさんすか!?」


突然、カレンさんがぐいっと

近寄ってくる。


「おおー!

あんな渋い声してるから、

中身おじさんなのかなって

思ってましたけど、めっちゃ

若いっすね!?

高校生ぐらいっすか!?」


ち、ちかっ!?

なんで陽キャはこんなに

近寄ってコミュニケーションを

取るんだ!?

怖いんだけど!

威圧されてる!?


圧倒されて何も言葉が出ない俺の代わりに、


「そうだよ。

オオカミンは高一。

あたしの同級生なんだ~」


星野さんが答えてくれた。


「えええ!?

星宮先輩とタメ!?

てことは、うちより年下じゃないっすか!

うちは大学一年生です!

てか、なんで一言も話して

くれないんですか!?

もしかしてうち嫌われてます!?」


「カレンがそんなに話すからだよ......

それより近いって!

オオカミンが困ってるでしょ!

離れなさいーーー!」


「ええ!?星宮先輩もさっき

こんな感じだったっすよ!

なんでうちだけー!!」


そんなやり取りを眺めていると、


「こほんっ!」


ダンッ!


注目しろと言わんばかりに、

地面を足踏みしているもう一人の女性。


女性というより、女子?

小学生と言われても信じてしまいそうな

身長に、可愛らしい三つ編み。


そんな彼女が顔を真っ赤にして怒っている。


「えええええええい!!!!

このたわけどもがああああ!!

この妾を無視するなああああ!!!」


「あ、忘れてた。

入ってきていいんですよ?

凜風(リンファ)先輩」


星野さんが冷静にそう言った。


「わ、忘れていただと!?

わ、妾......そんなに存在感ないのか?」


さっきまで威張っていたのに、

今度は今にも泣き出しそうである。


「そんなことないですよ!

ほら! 入ってきてください!」


星野さんが優しく手を握ってようやく

入ってきた。


なんか幼稚園みたいだな。


「じゃあまずは自己紹介しましょ!

凜風先輩」


「ふん!

仕方あるまい!」


今度は腕を組んで偉そうにしている。


「妾の名は凜風!

かつて中華の全土を支配した

皇帝である!」


「ていう設定っす。

あ、ちなみに純粋な日本人なんで。

あと中国の歴史は何も

知らないみたいですよ」


「カレン!! 妾のイメージを崩すな!」


「イメージも何も配信以外は

素でいいんすよ?」


「妾の素はこれじゃ!」


まじ?

と俺は星野さんを見る。


「あー......凜風先輩は元々こういう人

じゃなかったんだけど、キャラを

守ろうとし過ぎて、リアルでもこういう

キャラで生きるようにしてたんだって。

そしたら、リアルの性格を

忘れちゃったみたい」


なにそれ!? 怖い!?


それだけストイックな人ってことか。


「相変わらずね......凜風」


すると、隣にいたネオさんが

口を開いた。


「なっ!? そなたルインでは

ないか!?」


「久しぶりね。凜風。あと今の私は

ネオって名前よ」


「知り合いなんですか? ネオさん」


「ええ。凜風はシャイニングの

三期生だから。私の後輩ね」


「突然辞めてしまったから

心配しておったぞ!

元気そうで何よりじゃ!」


「ええ。貴方も元気そうでよかったわ」


ネオさんの反応を見る限り、

彼女とは悪い関係ではなかったようだ。


三人目が凜風さんだと判明して、

ネオさんの緊張も和らいだように見える。


「えーでは。シャイニングの方々も

到着されましたので、これから

3D配信について

色々決めていきましょうか」


畠山さんがそう言ったのだった。



────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

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