第42話 素質

「えーリーダーの皆さん。

お集まり頂きありがとうございます。

わたくし、運営のグランドです。

どうですか。 リアルクラフトの世界を

楽しんでおられるでしょうか」


おおおー!

いぇーーい!


周りから声が上がる。


「残りのリアルクラフトの日々も

今日を含めて三日。

ちょうど折り返し地点となりました。

そこで更にリアルクラフトを

盛り上げるため、明日、四日目に

大きな大会を開催したいと思います。

競技内容は銃を使った

バトル・ロワイヤルです」


バトル・ロワイアルって

最後の一人になるまで戦うゲームか。


「フィールドはここ。

この円形の闘技場内で戦って

いただきます」


俺たちが集められた闘技場は

小さな壁が点在している。


人数によるかもしれないが、

そんなに大きなフィールドじゃないし、

仮に100人くらいで一斉に戦ったら

そんなに長く続かないだろう。

つまり、短期戦か。


「このフィールド内で皆さんに

戦っていただき、最後に生き残っていた

パーティーのリーダーが勝利とします。

リーダーがやられたチームはその時点で

負けです」


うわ、まじか......

てことは、俺が死んだら終わりじゃん。

どうしよ......俺FPSとやったことないよ......


「以上が大会の概要となります。

ちなみに、勝利したチームには

コイン5万をプレゼント致します」


コイン5万!?

と周りのリーダー達が驚いた声をあげた。


「出場したいパーティーは今日の

21時までに申請をしてください」


大会の説明が終わり、集まっていた

パーティーのリーダー達がグランドに

出場申請をし始める。


俺も直ぐにその列に並ぼうとしたそのとき、


「あ!」


あのZIGENと鉢合わせした。


こいつリーダーだったのか。


「なんだ。絵畜生か」


「あのね。そういうのは配信上で

言わない方がいいぞ。

炎上した者からのアドバイス」


「は? 炎上なんかに

ビクビクするわけねぇだろ」


そう言って、彼は俺より前に並んだ。


なんでこんなにツンツンしてるんだか。


「おい! お前ZIGENじゃねぇか!」


すると、近くにいた配信者が

彼に怒鳴り付けた。


「この前はよくも俺の拠点

襲ってくれたじゃねぇかよ!」


怒鳴ると言っても、

本気で怒っているというわけじゃない。

軽いプロレスを仕掛けてるようだった。


ここでZIGENが上手い返しができれば

配信として盛り上がるのだが、


「この大会で見返してや」


「黙れ。消えろ」


たったこの二言で空気を凍らせてしまった。


炎上してしまったZIGENを

救おうとしたのにも関わらず、

事故ってしまった彼は黙ってどこかに

行ってしまった。


これ今ネット荒れてるだろうなぁ......


そんなことなどお構い無しに、

彼はグランドに出場申請をする。


しかし、


「は!? なんで俺が

出場できねぇんだよ!」


「あなたパーティーは作ってても、

あなたしかいないでしょ?

この大会は5人パーティーじゃないと

出場できません。

あくまでこの大会はこの配信者祭を

盛り上げるためのもの。

そのために、いろんな人との絡みが

生まれるようにパーティーを

5人にするのを条件としています」


「な......」


「ソロでやるよりも、誰かと

関わる方が配信は盛り上がります。

ですから、貴方もパーティー仲間を

作ってください」


そう言い返されて、不機嫌そうに

ZIGENは背を向けた。


クスクスとZIGENを嘲笑う

声が聞こえてくる。


相当ZIGENは嫌われているようだ。


「はい、では次の方」


そうグランドさんに急かされるも、

俺もパーティーは5人いない。


「あ~すみません。

また来ます」


そう一言残して、

闘技場を離れようとした俺に、


「あれ?」


聞き慣れた声が届いた。


「オー君!?」


「マリアさん!」


炎上の夜に言葉をかけては

貰っていたが、ゲーム内で話すのは

一日目の最初ぶりだ。


なんで会うだけでこんなに嬉しいんだろ......


これが同期というものか。


「わああああ!

よしよし。大丈夫だった?

私心配で心配で」


そしてこの溢れる母性!


素晴らしい。


「大丈夫ですよ。

今は炎上もしてないですし、

仲間も増やしてリーダーも

やれてます」


「ええ!? オー君リーダーなの!?

実は私も!」


「え!? マリアさんも!?」


そう驚いた俺の前に、

ずらずらと四人のプレイヤーが

現れた。


「誰だ! 我々の聖なる母に

その無礼な口を効くやつは!」


聖なる......母?


「ママ誰この人」


「おい、そのママ呼びはそろそろキツいぞ」


「マリア様は俺たちのママだから

いいんだよ!」


「ですよね!? ママ?」


「ええ。大丈夫よ~」


え、えらく癖の強い人達を

仲間にしてるな......


マリアさんをママって呼ぶなんて。


彼女のリスナーと

俺だけじゃなかったのか......


「この人たちが私の仲間なの。

なんでもjp? っていう強い

プロゲーマーの人たちなんだって」


プロゲーマー......


「フフフ.....悪いが小僧。

明日の大会は我々のいただきだぜ」


「俺たちの聖母に5万コインを

捧げるのだ」


「そしたら、ママ!

ご褒美頂戴?」


「ほんとやめてくれ......これ以上、

jpのイメージを崩さないでくれ」


ボケとツッコミと半ばマジの人もいる。

バランスもとれてて面白い

パーティーメンバーに見えた。


「それじゃオー君、私たち行くわね。

何か困ったこととかあったらいつでも

言ってね」


「ママはそう言ってるが先に

我の許可を取れ!」


「だから、やめろって。

失礼します。オオカミンさん」


そんなやり取りをしながら、マリアさん

パーティーはグランドさんの元へと

向かって行った。


「プロゲーマーが四人か......」


調べてみたがjpは格闘ゲーム、

FPSなどの多種多様な分野で

優勝している日本最強プロゲーマー

チームのようだ。


それが四人もいて、競技はFPS。


まず俺は戦力にならないし、

ニノもたぶん苦手なんじゃないか?


ミルミルさんは分かんないな。

歌うのが仕事の人だし。


頼れそうなのはプレデターさん

だけかもしれない。

なんでも昔、FPSの大会で無双した

経験があるとか。


でも、プレデターさん一人で

勝てるのだろうか。


他にもゲームが上手い人いるだろうし。

残りの5人目はゲームが上手い人に

しないとな。


でも、もう折り返し地点の

このタイミングで

ソロプレイヤーがいるかな。


タイムリミットもあるし......

流石に目星を付けて探さないと......


ゲームが上手くて、この時期でも

一人でいそうな配信者か......


「あ、いた」


────────────────────


「ねぇミルっち。

ミルっちはどうしてうちのパーティーに

入ってくれたの? ミルっち強いし、

他にも誘われてたんじゃない?」


「え!? い、いえ!

全然そんな......むしろ、

誰も誘ってくれなくてずっと寂しくして。

そんなときにオオカミンさんに

誘ってもらえたんです」


「なら僕と一緒だね」


「ニノさんも?」


「うん! あのときは嬉しかったなぁ~

プレっちは? プレっちはどうして

オオカミンの誘い受けたの?」


「俺? なんて言うか、

オオカミンに興味が湧いたからだよ」


「興味?」


「そう。俺も長年配信やってるから

今までたくさんの人と

知り合ってきたんだよ。真面目な人、

人見知りな人、人と感性がズレてる人、

常識人な人、ラインとか考えない

ヤバイ人。そういう色んな人と

関わってきて、だんだん今後

人気出そうだなって人が分かってきた。

どんな人だと思う?」


「コミュ力ある人ですかね......」


「ハハハ。まぁ人脈は確かに重要だね」


「リアクションが面白い人かな?」


「それもある。

でも、それよりももっと

人気が出る人はね、真面目なのに

常識に囚われない人だよ」


「どういうこと?

真面目な人って常識人だと思うけど」


「大抵の人はね。

でも、たまにいるんだよ。

根は真面目なのに、頭のネジが外れてて、

普通の人だったら絶対にしないことを

進んでする人がね。

例えば、関わりずらい相手に気にせず

声をかけたりとか」


「それって......」


「そう。だから、俺は彼の誘いを受けた。

彼はどこか頭のネジが外れてる。

俺をパーティーに誘うなんて普通は

できないよ。けど、彼は真面目な人だから、憎めない。一見、アンチが増えそうな

ムーブでも、彼なら許してしまう。

それってとんでもない魅力だと思うんだ。

だって、普通の人がしないことを

できちゃうんだよ。

配信盛り上げ放題じゃん」


「......やっぱり僕の推しって

凄い人だったんだ」


そう自慢気にニノは笑うのだった。


────────────────────


「やっと見つけた」


時刻は19時。

あれからしばらくパーティー仲間と

ダンジョンに潜ったり、探索をしていた。


だが、5人目探しをサボっていた

訳じゃない。


この広大なフィールドでとある

人物の情報を収集していたのだ。


その情報はプレデターさんの人脈があった

おかけで何とか集めることができた。


仲間には、もう5人目を誰にするのかは

言ってある。


てっきり反対されると思っていたが、

なぜか三人とも俺の意見に賛同してくれた。


中でもニノが一番嬉しそうだった。


「な、なんでお前がここにいるんだ。

何しに来やがった」


正直、俺もこいつを仲間に誘うのは

嫌だ。

ニノが頑張って建てた拠点を破壊したし。

けど、ニノはもうそのことはいいって

言ってたから、俺も気にしないことにした。


それに、彼以上に今の俺が求めてる人物が

いなかった。


「探したよ。ZIGEN」


「探してた? 俺を?」


「うん。俺の最後の

仲間になってもらうために」




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

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