第38話 同類

ここでほんとにいいのか?


三日目。時刻は朝の8時。

プレデターさんをパーティーに

迎え入れた俺たちは、誰がリーダー

になるのかと押し問答を繰り広げた。

結果、多数決で俺となってしまった。


おかしくね?

我、底辺ぞ?

底辺が頂点の二人のリーダーって。


まあ、なってしまったものは仕方がない。

今はこの任務に集中しよう。


今俺が受けている任務は

『ダイヤモンドを見つけ出せ』

という任務だ。


モンスターがうじゃうじゃいる

ダンジョンに潜り込んで、

ダンジョンに隠されたたった一個の

ダイヤモンドを見つけ出すクエストだ。


なんとダイヤモンドを一個売るだけで

5000コインが手に入るのだとか。


とはいえ、農業系のスキルをひたすら

上げていた俺がモンスターを

倒せるはずがない。


だが、そういう者たちの救済処置として

傭兵制度というのがある。


クエストを受けるギルドで

傭兵制度を依頼をすると、

傭兵クエストが発注される。

それを戦闘系のスキルを高めた

他のプレイヤーが受託すると、

共にクエストに付添ってくれるのだ。


戦闘系のスキルがない

俺みたいな奴は無料で

自分を守ってくれる

仲間を手に入れられて、

傭兵側はダイヤモンドが

手に入らなくても、

報酬を手に入れられるという神制度だ。


ちなみに、これはプレデターさんに

教えてもらった。


「このダンジョンか」


周りには傭兵としてきた配信者が5人。

ダイヤモンドを探しに来た配信者が

俺を含めて5人いる。


よかった~俺のこと守ってくれる

パートナーもいそうだ。


「あ、キリギリスさん、

傭兵なんですか?

一緒に行きましょうよ」


「お、蟻さん。いいですよ」


俺の目の前で以前から

知り合いであろう人達が

パートナーを作った。


やべ、早く作らないと。


しかし、俺が声をかけても、


「あ……ごめん、もう他の人と

約束してて」


「すまん。無理! 

別の奴と約束してんだ」


炎上した者として有名になって

しまった俺を皆が避けていく。


「…………」


この人に限っては無視だった。


酷い……泣きそう……


「はい、ではこれから制限時間までに

ダイヤモンドを見つけ出してください!

よーいスタート!」


一斉に四人組が中に入っていく。


残されたのは俺と、

先程俺を無視した人だった。


「が、頑張りましょう!」


「……」


はい、無視。


俺は諦めて一人で中に入った。


振り返ると無視した人がゆっくりと

後を追って来る。


な、何がしたいんだ?

あ、もしかして、無視じゃなくて

ミュートか?


「すみません! ミュートになってますよ」


「……」


はい、無視ですねこれは。


そう思っていたときだった。


前方から猪みたいなモンスターが

突進してくる。


「や、やべ!」


俺はなけなしの短剣をぶんぶんと振る。


その直後、斬撃音がダンジョン内に

響き渡った。


重々しい鎧の音と共に、

無視した人が目の前に着地する。


「た、助けてくれたんですか?」


「……」


そう訊ねても無視である。


でも、人が死ぬのを目の前で

見て楽しむタイプの人ではないらしい。


マイク故障してるのか?


チャットしたいけど、パーティー内の

人としかできないからな。


俺はちらっとプレイヤーの

名前を確認する。


『ミルミル』って人か。

ちょっと調べてみよ。


昨日、ニノとプレデターさんに

人を知らなすぎると注意されたばかりだし、

まずは知る所からだ。


え~と、チャンネル登録者数120万!?

歌手!? あ! 

このアニメ知ってるぞ!?

このアニメの主題歌歌ってるのか。


す、すごい……大物過ぎる。


俺はスマホ片手に彼女の情報を

探っていった。

そして、彼女が俺を無視し

続ける理由を理解した。


「あ、あの……ミルミルさん。

もう少し大きな声で喋らないと

聞こえないですよ」


去年の12月。

初の対面ライブがあるも、

お馴染みのコミュ障を発動して

全く話せず終了。


そのネット記事を読んでしまった。


「ひっ…………!!」


微かに声が聞こえた。


ガタガタとマイクを

動かしてる声がする。


「あ、あの……」


凄く綺麗な声だった。

これが人気歌手のミルミルさんの声……


「だだだだだだだだだだだ

大丈夫でひょうかああ!?」


その直後、綺麗な声をしていた

ミルミルさんのイメージが

完全に崩壊した。


その噛みようからとんでもなく

動揺してるのが伝わって来る。


「わわわわ私の、

おおおお音のちょ調子は!!!」


だが、俺はそんな彼女を笑いはしない。

分かる。初対面の人と話すの

緊張するよね。


俺もバイトし始めた頃は

こんな感じだった。


「ミルミルさん」


俺は人と仲良くなる方法を知っている。


「だだだだだだ大丈夫

でひゅよおおおお!」


それは対等になることである。


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ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

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是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。



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