第34話 迷い

俺は困惑の中でチャットを送り返した。


『すみません......今見ました......

ネオさん俺どうしましょう......

なんかめっちゃコメント欄が

荒れてるんです』


【遅かったか......いい?

明日は彼女と話さないこと。

じゃないともっと悪い方向に進むわよ】


『な、なんでですか?

俺悪いことしました?』


【してないけど、彼女と絡むのは

やめなさい。

ドリガルはね、普段は全く男性と

絡みがないVtuberグループなの。

だから、ドリガルのリスナーは

自分の推しが男と絡むのを

異常に嫌がる傾向がある。

たとえ、相手が悪いことを

していなくてもね】


『......そ、そんな』


【だから、男の配信者はドリガルと

絡もうとしないの。リスキー過ぎるから。

ドリガルの子も相手に

迷惑がかからないようにあちら側から

接して来ることもない。

けど、どうやら最近ドリガルの運営側が

その方針を変えてきたみたいなの。

女性ファンも獲得しようと

男性と絡むようにしてる。

それで今回男性配信者の多いこの

配信者祭にドリガルで一番人気の

柊ニノを送り込んできたようね】


なるほど。

だから、ニノと絡んだ瞬間、

俺の配信にドリガルファンが

なだれ込んで来たのか。


ニノが俺のことを変わってる人だと

言っていた意味も何となく分かった。


俺以外の人は彼女と話そうとすら

しなかったのだろう。


【トイッタ―とかも見てみなさい。

凄い騒ぎになってるから】


オオカミン 炎上

オオカミン キモい


俺のサジェストはこんな有り様に

なっている。


『柊ニノ 男と絡んで炎上する』


対して、ニノも男と絡んだことで

炎上解説動画が出るほどに荒れている。


【オー君大丈夫?

気にしないでね】


それから直ぐにマリアさんからも

チャットがきた。


どうやらこの一夜で俺は

一躍有名になったらしい。

悪い方向で。


俺もこういう類いのリスナーや

配信者がいるのは理解してた。

けど、正直ここまで大事になるとは

思わなかった。


ドリガルリスナーが怒るような

会話をニノとした覚えもない。

ただ、話しただけだ。


それでこんなことになるなんて。

甘く見すぎていた。


【とりあえず、鎮火するのを

待つしかないわね。

謝罪しちゃダメよ。

相手のリスナーが調子に乗って

更に叩きに来るから。

とりあえず、ニノとこれ以上

関わらないように配信者祭が終わるのを

待ちなさい】


そうネオさんに言われてしまった。


本来であれば自分で考えて

行動しなければならないのに。


自分ではどうすればいいのか分からない。


明日か......

これからめっちゃ楽しみだったんだけどな。

今日は農業と家を建てたから、

明日はもっと家を増築して、

畑も強化して。

ニノとこれからしたいことをあんなに

話し合ったのに。


ああ......だから、今日落ちるときに

寂しそうにしてたのか。


ニノは分かってたのかもしれない。

俺と彼女が遊べるのは今日だけだと。


翌日、俺はネオさんの助言で、彼女と

行動を共にすることになった。


俺がニノと絡んでいた一方で、

ネオさんも新しい配信者と

絡んでいたらしい。


「こんばんは。彼が同じ事務所の狼よ」


「皆さんよろしくお願いします」


「き、君がオオカミン君か……」


「よ、よろしくね……」


だが、昨日炎上したばかりの

俺を快く受け入れてくれる人

なんていない。


俺の今の同接数は7000人。

こんなにも跳ね上がっているのは

炎上を聞きつけて面白半分で

見に来た者ばかりだろう。


きっととんでもないレベルで

荒れてるんだろうな……


だが、仕方がない。

残りの日数を静かに耐えるしかない。


「オオカミン!? 

オオカミンじゃないか!?」


そんなときだった。

ネオさんが設立した

パーティーメンバーの一人に

声を掛けられる。


どこかで聞いたことのある声。


もしかして、


「黒猫……クロネ?」


「そうだ! 私だ!」


それは二か月ほど前。

俺はクロネとコラボした。

彼女がバイト先の石城先輩

とも知らずに。


あれから俺は配信業に集中するために

バイトを辞めてしまって、

クロネとはそれっきりだった。

まさかこんなところで再会するとは。


「オオカミンも参加していたのだな!」


「クロネこそ配信者祭に

参加してたなんて知らなかったよ!」


ああ、この声。

懐かしい。

何度もこの声に怒られたっけ。

今はもう素の声で配信してるんだな……


「貴方達知り合いなの?」


「そうなんです。

俺が個人時代に一度だけ

コラボしたことがあって」


「へ~狼がコラボを。

けど、一度きりのコラボにしては、

仲良さそうに見えたけど」


そりゃリアルでは知り合って

まあまあ長いですから。


「ネオさんとクロネも

知り合いだったんですね」


「ああ。昨日私が一人でいたところに

声をかけてくれたんだ。おかげで、

何とかぼっちにならないで済んだ。

オオカミンは……色々と

大変だったようだな。けど、

またこうして参加してくれてよかった。

心配していたんだぞ」


この人こんなストレートに気持ちを

ぶつけてくれる人だったか?

色々と彼女にもあったのだろう。


「まあ、とりあえず、これで狼を

入れて五人になったわね。

我輩たちのパーティーの所持コインは

下から数えた方が早いから、こっから

追い上げていくわよ!」


ネオさんの頼もしい言葉に皆がおー!

と盛り上がる。


その雰囲気に乗るも、

俺はずっと心の中で何かが

引っかかっていた。


本当にこれでいいのかと。




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ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

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