第32話 触れてはならない相手

「さてと、我輩もパーティーを

組んでくれる人を探しますか......」


街から出たネオは、マップ上にいる

プレイヤー画面を見て、

どんな配信者がいるのか確認する。


集会所でも一応この目で見てきたが、

さすがに200人全員を確認することは

できなかった。


(へぇー、こんな人達がいるのね。

なるべく絡んでも大丈夫そうな

相手に目星をつけとかないと)


そう思いながらプレイヤーの名前を

確認していたネオの指が静止した。


(嘘……でしょ?)


『ドリームガールズ』


ネオはその名前を疑った。


ドリームガールズ

略してドリガル。


それは女性しか所属していない

Vtuber事務所。

アニファンのように女性しかいない

事務所は他にもあるが、

ドリガルには他の事務所と

異なる点が一つある。


それは男性との絡みが

一切ないことである。


外部コラボも滅多にせず、

したとしても女性Vtuberだけ。

ほぼ鎖国状態である。


だが、その路線であるが故に、

他の事務所に比べて圧倒的に

男性ファンが多い。


事務所のメンバー数でいえば、

シャイニングが上だが、個々の同接数や

登録者数でいえば、圧倒的に

ドリガルが上。

登録者数が100万人を超える

Vtuberがごろごろいる。


(なんでドリガルのVtuberが

配信者祭にいるの? そういえば、

最近男性とのコラボを

していたような……

鎖国状態の路線を変えてきたってこと?)


ドリガルの名前が頭に

ついているのは一人。


彼女と絡むことができれば

こちらとしても大いに利がある。


しかし、男性が絡めば間違いなく燃える。

これまでも彼女たちとコラボしただけで

ファンから集中砲火を受けた

男性Vtuberが何人もいた。


(彼女と話さないようにって

オオカミンに言っておくべきだった。

まさかドリガルも参加してるなんて……

それにドリガルの中でもこの人はやばい……

彼女と話でもしたら……)


────────────────────


俺にも新しい絡みがあるって、

そう思ってた時が俺にもありました。


あれから一人で島を徘徊すること

二時間。

未だにまともに話せていない。


こういうときはコメント欄の

リスナーと話していたいのだが、

コメント欄を見るのは禁止。

まあ今まで過疎ってた中で一人で

ペラペラと喋っていたから、

この状況でも無言になることはない。


けど、コメント欄は見れなくても

同接数は確認できる。


現在の同接 600


これは酷い。


有名な配信者が同時に

配信をしているのも要因には

あるだろうが、

やっぱり絡みもなく、

ただ徘徊しているだけの

取れ高のない配信が一番の原因だろう。


けど! 俺だって頑張ったんだぞ?

全く知らない配信者に声をかけて

仲間に入れてもらうとした。


けどな! ここには有名な

配信者しかいないし、

皆今までどこかで繋がりがある。

簡単に言えば、既にグループができた

クラスに転校してきたみたいな

感じなんだよ!


この状況でどうやって

繋がりを作るんだよ!

無理だよ!

だって、俺全然知名度ないもん!

相手側に利益ないし、

俺が無名だって知ったら

皆どっか行っちゃうもん!


辛い……

帰りたい……

まあ家にいるんだけど……


落ち着け……一回冷静になれ。

ここには200人もいるんだ。

いつかパーティーに

誘ってもらえるかもしれない。


いやいや待て待て。

何を誘い待ちになってんだ。

ここは配信者祭だぞ。

自分から誘いに行かなくて

有名になれるわけないだろ。


決めた。


次、俺と同じボッチの人見つけたら、

その人とパーティーを組む。

絶対誘う。

どんなことがあろうとも。


そう思っていた俺は

深い森の中を徘徊していた。

食料を食べないと死んじゃうから、

果物を採取しようと思っていたのだ。


だからだろう。

同じようなことを

考えてるプレイヤーがいた。


俺の視界に入る範囲で

ずっとリンゴを採取している。


名前は『ドリームガールズ 柊ニノ』


ドリームガールズ?

何かどっかで聞いたことが

あるようなないような。


シャイニングぐらいしか

有名どころを知らないから、

ぴんと来ない……


まあ、でも見た感じ一人だし、

これはチャンスじゃないか!?


別に相手が誰だろうとぼっちを

脱却できるのだからどうでもいい!


この好機を逃すわけにはいかない。


「あのすみません」


「……ん?」


びっくりした。

子供かと思った。

そう思ってしまうくらいに

ロリボイスだった。


「初めまして。

オオカミンっていいます」


「はーい、僕はニノって言います」


僕っ子か。

一人称が我輩とかいる

Vtuberの世界だから、

全く驚くこともない。


「ニノさんは今一人ですか?」


「うん、そうだね。

みんな僕の前からいなくなっちゃうんだ」


「ああ、分かります。

やっぱり数字の世界ですからね」


俺はこのとき、こちらが

底辺だから人が逃げていくのだと

捉えていた。


「そうだね~

数字もあるかも。

けど、僕の事務所がちょっと

特殊だからってのもあるかもね」


そう言って、彼女は力なく笑った。


「オオカミンはいいの?

僕なんかと話しても」


「え? いや、全然大丈夫ですよ」


「ほえ~オオカミン変わってるね」


「……そうですかね」


な、なんで? 

そんなおかしなことしてるか?


ま、まあいいや。

この人がぼっちじゃなくなる前に、

パーティに誘わなきゃ!


「あ、あの話変わって

申し訳ないんですけど、

ニノさんって今一人なんですね?」


「うんうん、そだよ」


「なら、俺とパーティー組みませんか?

俺ずっとぼっちで仲間になってくれる

人を探してたんです」


「……へ~」


「駄目でしたか?」


「ううん、そうじゃなくて、

本当にオオカミンは変わってるなって」


「は、はあ……そうですかね。

やっぱ……無理ですか」


「いいよ? 僕でよければ」


「え? えええ!?

本当ですか!?

やったあああああああ!!」


「キャハハハ! めっちゃ喜んでる!」


すげえ笑われてんだけど。

このロリボイスと無邪気な

態度だからかもしれないが、

子供を相手に話してる気分。


「僕もパーティーの人探してたんだ~

オオカミンがいいなら、入りたいかも」


「じゃ、じゃあ申請しますね」


「はーい。あ、あとさ

敬語は嫌かな。

僕敬語使われると疲れちゃう」


「分かった。

じゃあニノ改めてよろしくね」


「よろしくね~オオカミン」


こうして、俺はニノとパーティーを

組むこととなった。


────────────────────


(柊ニノ.........彼女と絡むのはまずい.....)


柊ニノ


登録者数 350万人 同接 40000


登録者数において、ドリガル内、そして

他のVtuberで彼女より上はいない。

つまり、彼女こそが紛れもない

世界一のVtuber。


(そ、そんな相手と狼が話でもしたら......)


ネオは脂汗を滲ませて、

オオカミンが彼女と接触しないことを

願った。




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。





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