第23話 始まる文化祭

ああああああ嫌だあああああ!!


文化祭なんてやりたくない!


クラスの皆が和気あいあいと青春を

謳歌している中、俺ただ一人だけ

教室の隅で無賃金強制労働を

強いられるに決まっている。


というか、去年そうだったし。

皆が友達を作り、恋人を作っていく中、

上手くその波に乗れなかった俺は、ずっと

孤独に風船を膨らませていた。

ちなみに、去年はバルーンアートでした。


それに、何より今はチャンネル登録者数も

順調に伸びていて大事な時期なのだ。


リアルに時間をかけている場合じゃない。


こうなれば、そんなに仕事の少ない

役割を立候補しよう。

いつもは立候補しないで

余りものの雑用をやってるからな。

今回ばかりはわがままに

なってもいいだろう。


「ということで、多数決の結果、

うちのクラスはCMとか映画のパロディを

クラスで作成して上映することに

決まりました」


文化祭委員の言葉にクラスが盛り上がる。


「何のパロディやる?」


「やっぱ面白いCMのやつとか

やりたいよな」


「それ! 去年の先輩たちやってて

めっちゃウケてたもんな」


「私恋愛系の映像とか作ってみたい!」


「あ! いいね! 

胸キュンするやつがいい!」


「誰が役者する!? 

やっぱ男役は吉田君か武田君だよね」


「うわ、それやばいわ。絶対女子からの

反響いい!」


「じゃあ女子は?」


「そんなの凛ちゃんしかいないでしょ!」


「え!? あたし?」


「お願い! 凜ちゃんが出演してくれたら

本物の映画並みのクオリティになるって!」


「いいよ! あたしでよければ」


「まじで!?」


「ありがとう! 星野さん!

武田と吉田もいいよな?」


「全然おけ」


「任せろ!」


す、すげえ……とんでもない速度で

文化祭の準備が進んで行く。


去年はもっとのんびりだったのに。

黒板に買い出しとか役割を書いて、

そのやりたい役割の下に名前を

書きに行っていた。


このクラスは陽キャの集まりだから、

そんなめんどいことをしなくても

事が運んでいく。


いつもなら、今の山田のようにクラスの

波に乗り切れなくて、あたりを

きょろきょろしていただろう。


だが! 

仮想世界の自分が順調に行き出した今、

リアルのことなどどうでもいいのだ!


俺はどっしりと腕を組んで

クラスの動向を静観した。


これなら陽キャがやりたいことをやって、

俺にはほとんど何も回ってこないだろう。


「健児君」


そんなことを考えていた俺に、

突然星野さんが声をかけてきた。


「……なに?」


「何かやらないの?」


「やるって言っても、

もう俳優役は決まってきてるじゃん。

どの動画をパロるかも女子たち

が考えてるし。

もう特にやることないでしょ」


と、思っていた時期が俺にもありました。


「はい、じゃあ残ったのは、パロディを

撮影するときに使用する衣装とか

小道具を調達、作成する係。

動画を撮影する係です」


残ったのはどれも手間のかかりそうな

役割ばっかだった。


ほとんどが動画に出演する側に

行きやがった。

陽キャ多すぎだろ。

出たがり過ぎだろ。

絶対、こいつらチックトックやってる。


俺は重い足を引きずりながら、

黒板の前へと歩み出た。


撮影ってあれだろ。

動画を撮影するときに

絶対いないといけないやつだろ。

てことは、ほぼ準備のときは

無賃金強制労働させられるじゃん。

何より、陽キャ共の眩しい青春を

カメラ越しに直視しなければ

ならないのが嫌だ。

それなら家で牧場ストーリーやって

ゲーム内の嫁を眺めていたい。


けど、小道具とか衣装を

作るのはセンスがいるし、

共同作業だからな……

そもそも裁縫できないし、

嫌とかを通り越して、

迷惑がかかるのではという不安しかない。


そうなったら、撮影か。

いやでも、撮影は最初の方は

忙しいけど、撮影した後は

ほぼすることないし、暇になるかも。


故に、俺は撮影係になった。


────────────────────


それから二週間が過ぎた。

クラスの皆が議論を重ねた結果、

撮る動画は男子たちが

野球アニメのOPのパロディと、

チックトックで流行ってる消しゴムを

皆でコップにいれる謎のすご技。

そして、女子たちによるチックトックで

流行っている謎のダンス。


最後に、男女混合の面白CMが二本と、

有名な恋愛映画のワンシーン。


以上となった。


やっぱりこいつらチックトック

好きすぎるだろ。

きっと文化祭が終わったら誰かが

こっそり動画を投稿します。



────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

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の方をよろしくお願いします。

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