第22話 忘れてた

三日後、教室に到着した俺は

この前星野さんとどうなったのか

について質問攻めされた。

聞くところによると、

どうやらクラスの陽キャ男子である

武田の元に星野さんからメールがあり、

俺の住所を訊ねてきたらしい。

それが既にクラス中に広まっていた。


どうして俺の家を特定できたのか

疑問だったがようやく理解できた。


しかも、星野さんは俺に教科書を

届けることを口実にしていたらしいが、

それを知らなかった俺は適当に、


「え? あ、ああ……ふ、普通に

一緒にご飯食べただけだよ」


と苦し紛れな言い訳をしたせいで

事態を悪化させた。


確かに、今冷静になって考えてみれば

クラスの女子と夜に一緒に

ご飯を食べたとなれば、それは

もうカップルじゃんとなる。


だが、本当はVtuberのコラボを

してくれないから抗議しに来たのであって、

その現実が強烈過ぎてご飯を食べることは

別におかしくないと勘違いをしてしまった。


「……がちお腹痛い……

一緒に夜ご飯食べたって……クフフ」


一方、それを聞いた星野さんは

爆笑していた。


「あのさ……なんでここにいるの?

いつもの友達と昼飯食べないの?」


クラスの男子の鋭い視線と、

あの二人まじで付き合ってんのという

女子の囁きに耐えきれなくなって、

昼飯を屋上で取ることにしたのだが、

なぜか星野さんまで付いてきた。


「え、だって面白いから」


星野さんは平然と言ってのける。


相変わらずこの人は……


「今二人でいるのを見られたら、

もっとめんどくさいことになるよ」


「めんどくさいこと?」


分かってるくせにとぼけるんだから。


「まあ……いいんだけどさ。

あ、そういえば星野さん」


「何?」


「ネオさんがごめんなさいって。

謝っておいてって言われたよ」


「嘘!? ルイン先輩が!?」


星野さんは意外そうな顔を浮かべる。



星野さんの手紙を読み終えた後、

ネオさんは一度目を閉じて一呼吸を置き、

ゆっくりと目を開いた。


『狼、今度……星宮に会ったら

言っておいて。

ごめんなさいって』


『それはいいんですけど、そういうのは

本人が直接言うべきだと思いますよ』


『年下のくせに言うじゃない。

その通りよ。けど、今の私が言っては

ダメなの。

全く意味がない。

だって、私はまだこの嫉妬心を拭い

切れてないのだから。

いつかこの邪心を振り払って見せる。

それくらい凄い配信者になるわ。

もしそうなれたら、

そのときは私から――』


ここから先は俺じゃなく、

ネオさんが言うべきだ。


「あんまり言えないけど、

星野さんの手紙読んだネオさんは

いつもの大人っぽい人に戻ってた」


「ほんと! そっか……よかった。

あの手紙書くのめっちゃ怖かったけど、

書いてよかったかも。

にしても、オオカミンいいな~

ルイン先輩とマリアさんが同期なんて。

マリアさんとかめっちゃ優しい

お姉さんじゃん。

この前すごい頭よしよししてくれたし。

もう二人共チャンネル登録しちゃった」


「まあ、確かにあの二人が

同期でよかったかも」


二人共年上だし、色々詳しかったりするから

本当に助かっている。


そう思って言ったのだが、

星野さんはじーっと俺を睨みながら、


「そりゃ最高だよね!

あんな美人なお姉さんたちと

オフでコラボできて」


と言ってきたのだった。


「あ~あ、あたしもしたいのになぁ~

これからお互い忙しくなるだろうし」


「お互い? 星野さんは分かるけど、

俺は別に忙しくはないよ?」


「え? まさか、オオカミン

忘れてない?」


「何が?」


「これから文化祭の準備が始まるの」


────────────────────


「はい、じゃあ今から一か月後に

ある文化祭で、クラスで何をするのか

決めたいと思いまーす」


わ、忘れてたああああああああああああ!




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。







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