第19話 最悪

なんだこの重苦しい空気……

いるだけで呼吸ができなくなってしまう。


突如として訪問してきた星野さんを、

帰すわけにもいかないと家に入れてしまったが、


「……」

「……」


星野さんとネオさんの間には剣呑な雰囲気が

漂っていた。


流石に配信は切り上げたが、

この状況をどうしたものか。


「オー君……二人ってどういう関係なのかな?」


「さ、さあ……? 見た感じそんな

仲が良くなさそうですけど……

知り合いなのは

間違いないでしょうね」


俺とマリアさんはこそこそと話す。


というか、俺はおおよそ予想はついていた。


以前、ネオさんがシャイニングでルインという

Vtuberをやっていたという噂を

ネットで見たし、

星野さんの口から「ルイン」という

名前も出た。

ネオさんがルインなのはほぼ確定だ。


そして、星野さんはシャイニングに

所属している。


間違いなく、そこで何かあったに違いない。


それもこの雰囲気から察するによろしくないことが。


「あ、あの~」


俺はこの空気に耐えきれず、


「二人って知り合いなんですか?」


分かりきったことを訊ねてしまった。


「ええ、知り合いよ。以前、

私はシャイニングに

所属していたから」


やっぱり。


「オー君、シャイニングって?」


「日本で一番有名なVtuber事務所ですよ」


「え!? ネオンちゃんってそんな

凄いところにいたの!?」


「ま、まあ……」


ネオさんは気まずそうに顔を背けた。


「ちなみに、あたしもシャイニングの

Vtuberです」


「あら!? オー君のお友達も!?

凄い! 有名人だらけね!」


よかった……マリアさんがいなかったら、

俺この空気にやられて泣いていたかも。


「だから、ネオンちゃんと星野さん?

だったかしら。

二人は友達だったんだ」


「と、友達……なんですかね? 

ルイン先輩」


「別に友達じゃないわよ」


「あはは、そうですよね。

あんな面と向かってあたしのこと大嫌いって

言いましたもんね」


え!? こわ!?

これ何の話してるの!?

今の軽い冗談だよね!?

冗談じゃないと怖くて泣いちゃう……


「ええ、言ったわね」


そのネオさんの返答に、マリアさんと

俺は押し黙ってしまった。


やばいやばい。これ絶対会ったら

いけない二人だ。


「一方的に嫌われるのつら~

あたしルイン先輩のこと嫌いじゃないのに。

寧ろ、尊敬してます。

前にも聞きましたけど、何であたしのこと

嫌いなんですか?

あたし何かしました?」


「……別に」


「ええ……本当のこと言ってくださいよ。

あたしはルイン先輩と仲直りしたいのに」


「別にする必要ないわ。もう私と貴方は

別事務所のVtuberなんだし」


「え~そんな冷たいこと言わないで、

外部でもコラボしましょうよ。

あたしまたルイン先輩とコラボしたいで」


その直後だった。


「そういう無神経なとこが大嫌いなのよ!」


バンッと机を叩いてネオさんは叫んだ。


「私のこと格下だって思ってる癖に!

また、私から奪うの!?」


「ネオさん! 落ち着いて!」


俺は慌てて興奮するネオさんを

止めにかかる。


それにはっとした様子でネオさんは

我に返り、


「ごめんなさい……今日の

私どうかしてるわ。

帰ります」


そう言って、足早に部屋を後にした。


「え、ちょ」


俺は急いでネオさんを追おうしたが、

あんな辛辣な言葉を浴びせられた星野さんを

放置していいのかと躊躇った。


「オオカミン! 追って!」


そう思った瞬間、星野さんは叫んだ。


まるで、俺の考えていたことが

分かっていたかのように背中を押す。


ちらっとマリアさんを見ると、

星野さんのケアは任してと視線で伝えてくる。


俺はネオさんの後を追った。



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ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

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の方をよろしくお願いします。





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