第18話 会ってはいけない二人

もう10時か。


雑談を軽く挟みながらモリオカートと

スリッチスポーツを一通り楽しんだ

俺は、そろそろ配信を終わろうかと

切り上げる機会を窺っていた。


「ねぇねぇ次は

このスリッチパーティーしたい!」


けど、修学旅行気分のマリアさんは

もっと遊ぼうと俺たちを急かしてくる。


これまでゲームに触れてこなかったから

ありとあらゆるゲームが新鮮で

面白いとのことだ。


流石に俺は疲れてきたのだが、

同接は未だに1万人をキープしており、


『まだやるの!? さいこー!』

『三人のスリッチパーティー見たい!』


とリスナー達も楽しんでくれている

ようだった。


「狼どうする?」


「俺はまだいけますよ。ネオさんは?」


「......え」


「逃げるんですか?

さっきスリッチスポーツで

俺にボコられたからって」


モリオカートでボコられた腹癒せに

軽く挑発しただけだったのだが、


「はぁ? 貴方我輩に喧嘩売ってるの?」


負けず嫌いの彼女の闘志に

火をつけてしまったようだ。


その様子にご満悦のマリアさん。


「よーし! 今日は徹夜で

ゲームしちゃお~!」


『やったあああ!』

『明日休日マジ神』


オフコラボもそう簡単にできないだろうし、

今日くらいは俺もたくさん楽しむか。


そう思いながらソフトをスリッチに

差し込んだときだった。


ピンポーン


「あら? こんな時間に誰?」


戸惑うマリアさん。


一方でネオさんは冷静にマイクを

ミュートにした。


リスナー達がそれに混乱しないのように

コメント欄に


『ちょっと休憩挟みます』


とチャットも送ってくれた。


「すみません。ちょっと見てきます」


俺は二人にそう一言残して、

玄関に向かう。


こんな遅い時間に人が訪ねて

来たことなんて一度もない。


誰だ?


不安な気持ちを抱えたままドアスコープを

覗き込む。


「は!?」


俺は驚いて直ぐに扉を開いた。


「星野さん!? な、なにしてんの!?」


慌てて外に出て扉を閉める。


「こんばんは! オオカミン!

ごめんね。急に来ちゃって」


外に待ち受けていたのは、

いつものようにぱっと明るい

笑顔を浮かべる星野さんだった。


いや、待て待て待て!


思わず外に出ちゃったけど、

まじでなんで星野さんが

ここにいるんだ!?


「ど、ど、どうしたの!?

こんな時間に!?」


「あ、あのね......アハハ......

何ていうかのり? というか

そのときのテンションで

来ちゃったっ的な?」


「......は? のり?」


何故か星野さんが目を宙に泳がしている。


動揺してるのは俺の方なんですが。


「......だって」


「だって?」


「だって! オオカミンが悪いんだし!

私とは全然コラボしてくれないのに!

今日は同期の女性達とハーレムでしょ!?

学校ですら私は話してもらえないのに!

こんなの不平等じゃん!」


びっくりした。


急に星野さんが怒り出した。

星野さんが怒ったのを初めて

見たかもしれない。


「ちょ、ちょっと落ち着いてって。

全く状況が分からないんだけど」


「......だから......私とは

全然話してくれないし、

配信に行ってももう

私の居場所ないし......」


今度は泣き出してしまった。


星野さんってこんな一面もあるんだな......


「あ、あのさ。

よく分かんないけど、こんなとこで

立ち話も何だし、とりあえず中で」


俺はそのときはっとした。


や、やべ。

今はマリアさんとネオさんがいる。

それはダメだ。


いや、別に彼女とかでもないし、

仕事仲間だから悪いことをしてるって

わけではないんですけどね。

でも、この状況であの二人と対面したら

もっと状況が悪化しそうな気がする。


「オー君、大丈夫そ?」


そんな心配をしていた俺の背後から

マリアさんが顔を出した。


「こんばんは」


終わったと放心状態の俺を置いて、

星野さんがマリアさんに挨拶をする。


マリアさんは星野さんを見て、

ぱっと顔を明るくした。


「あら!? あらあらあらあら!

誰なの!? この可愛い子!

もしかして、オー君の彼女!?」


「か、か、彼女!?

そ、そんな......私達ってそういう風に

見えます!? うわ~うれ」


「違いますよ。クラスメイトです」


余計な噂が立たないように俺は

はっきりそう言っておいた。


「あら? そうなの?

でも、確かに可愛い過ぎて

倍率高そうだもんね~

オー君も頑張らないと」


「ちょ、出てこないで

中に入っててください!」


マリアさんはぐいぐいと俺たちの

関係に食い付いて来る。


「え~興味あるんだけどなぁ。だって、

こんな遅くに異性の人が訪ねて

来るんだもん。

絶対面白いことが起きそ~」


「何楽しんでるんですか! いいから

家に戻って!」


「ちょっと二人とも遅いわよ!」


そのときだった。


部屋で待機していたはずの

ネオさんまで様子を確認しに来てしまった。


ネオさんは星野さんを視界に入れた瞬間、

ピタリと制止する。


「あ、あのネオさん。

この人は同じ学校のクラスメイトで」


「あの声やっぱルイン先輩だったんだ」


俺の必死の説明を星野さんの声が遮る。


ルイン先輩?


「うそでしょ......星宮?」


対して、ネオさんは星野さんを

見て目を丸くしたのだった。




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ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

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の方をよろしくお願いします。









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