第17話 出陣

「はい。じゃあこれが最後の質問です。

えー皆さんこんにちは。私は最近

ブイライブのファンになった者です。

いじられキャラのオオカミン、バブみ溢れるマリアさん。そして何でもできちゃうカリスマのネオさん。皆大好きです。

そんな皆さんに質問があります。

どうして数あるVtuber企業の中から

このブイライブを選んだんですか?

なるほど。

俺の場合はスカウトだったんですよね。

だから、選んだという

訳じゃないんですけど、

入ってみたら熱心なマネージャーもいるし、個性豊かな同期にも恵まれたので、

入ってよかったと思ってます。

二人は何でこのブイライブを

選んだんですか?」


「私はね~実を言うとそもそもVtuberって

職業を知らなかったの。

たまたまネットの広告で見たのが

このブイライブのメンバー募集告知で、

面白そうって思って募集しちゃった」


それで一発合格してるんだからほんと

マリアさんは凄いな。

知識は無いけど個性もあるし、

ファンも直ぐについたし。


「なるほど~

運命の出会いみたいですね」


「ね~

ネオンちゃんは?

私個人的に凄く気になってたの」


「え!? 我輩!?」


「うん! だってそんなに才能に

溢れてるんだし、他にも色々

選べたでしょ?

どうしてブイライブにしたの?」


「わ......我輩は......」


何事もそつなく熟してきた

ネオさんが、視線を泳がして

言葉を探している。


「......ん? あ! わかった~

ネオンちゃんも私と同じでたまたま?」


「そ、そう! 我輩もたまたま

見つけたのがブイライブだったの!」


何か隠しているように思うが、やっぱり

あの噂は嘘だったのか?


でも、前もVtuberをやってたって

言っていたし。


考えすぎか?


「さぁこれで質問は終わり。

そろそろゲーム配信でもしましょ」


ネオさんはそう言って質問会を

切り上げると、スリッチを起動した。


「さぁここからはモリオカートの時間よ」


ネオさんは不敵に笑いながら

俺とマリアさんにコントローラを渡した。


────────────────────


正直言うと、星野凛はオオカミンと

コラボしたくなかった。


「お疲れ様~星野ちゃん」


星野はちょうどモデルの撮影の仕事を終えて

車で家まで送迎されていた。


「お疲れさまです~ふわぁ~」


星野は自身のマネージャーに

あくびをしながらそう答える。


「最近眠そうだけどどうしたの?」


「え!? 眠そうでした?」


「うん。撮影中もたまにぼーって

してること多いし」


「まじか~ごめんなさい。

気を付けてはいるんですけど」


「学校との両立で忙しいのは分かるけど、

あんまり無理すると体に影響出ちゃうわよ」


「影響?」


「太ったりとか。逆に痩せすぎたり」


「え!? それは困ります!」


「だから、ちゃんと睡眠は取ってね」


「......は~い」


こんなにも忙しいのは学校だけが

理由ではない。

Vtuberの仕事が一番大きく影響している。


モデルを始めたのはお金を

稼ぐためだったが、それなりに

有名になってやりがいも感じ始めている。

今のところ辞める選択肢はない。


そして、Vtuberのお仕事は

推しのオオカミンに憧れて始めた。

こちらも人気が出てきて今が

一番楽しい時期なのだ。

それに、オオカミンとの唯一つの

接点でもある。

だから、こちらも辞める選択肢はない。


「あ~疲れた~」


ベッドに倒れ込んでスマホに触る。


「やっぱどっちかは仕事減らすべきだよね。

じゃないと、オオカミンの配信見れないし」


最近の星野はオオカミンの配信を

全く見れてなかった。


「......まぁ配信に行っても、

もう私の居場所はないんだよね......」


星野は力なくそう呟いた。


星野にとって過疎っていたオオカミンの配信は、推しを独り占めできる最高の空間だった。


けれど、人気になってしまった今の彼は、

もう自分だけのものではない。


だから、コラボしたくなかったのだ。


けど、推しの有名になりたいという夢を

叶えてあげたかった。


星野はこうなるのを予想してコラボをした。


「学校じゃ全然話してくれないし。

意味分かんない」


学校で健児に声をかけても、

すごく気まずそうにして教室から

いなくなる。


これでは全く推しを接種できない。


「んんんんんん!!!!!

もう我慢できない!

今日は配信見に行こ!」


コメントが溢れるオオカミンの配信に行くと

自分の居場所がないことを痛感するから、

あまり乗り気ではないが、流石に

我慢の限界だった。


「今9時だからオオカミンの配信が

始まるまで2時間か~長過ぎ~

オオカミン早く......あ!

アーカイブ見とけばいいか!」


ポチッと配信サイトを開いて

オオカミンのチャンネルを見に行く。


「はぁ!? オオカミン

今配信してるじゃん! 嘘!?

珍しい! 最高過ぎるんですけど!」


星野はタイトルなど一瞥することもなく、

ポチッと押した。


「......え」


なんと推しが両手に花を

抱えているではないか。


「オオカミンがコラボしてる......

あ、もしかしてこの二人がオオカミンの

同期かな? 前言ってたもんね。

企業Vtuberになるって。

にしてもオオカミン弱すぎでしょ。

うける」


モリオカートで同期の二人、

特にネオというVtuberに後ろから

甲羅をぶつけられまくって泣き叫ぶ

自分の推しの姿に、星野は

くすぐったそうに笑う。


「いいな~この二人。

オオカミンとこんなに楽しそうに

ゲームしてて。

私もそろそろ二回目のコラボしたいのにさ」


そのとき星野はふと何か気がついた。


「あれ......このVtuberの声どっかで」


それは一位を独走しているネオの声だった。

どこかで聞いたことがある。

たまたま?

いや、こんな特徴的な声私生活でそう

聞くことはない。

じゃあ、一体どこで?


星野ははっとした。


「嘘......この人の声ルイン先輩に

そっくりなんだけど」


確証はない。

けど、こんな特徴的な声をしてるのは

この人しかいない。


もしもそうなら......


星野は思い出したくもない

記憶が脳裏に甦った。


動揺しながら配信を閉じようと

スマホの画面に目を向けた。


直後、星野の思考は止まった。


さっきまでのその嫌な記憶が

消し飛んでしまうほどの衝撃だった。


「はぁ!? オフコラボ!?」


星野はようやく気がついた。


「オ、オ、オ、オフコラボって

ことはオオカミンは今リアルでこの

お姉さんたちと一緒にいるの!?

私だってリアじゃオオカミンと

遊んだことないのに!

てか、まともにリアで全然

話してくれないのに!

同期の二人とはリアルで会うんだ!」


星野の感情は完全に嫉妬に支配されていた。


最近の多忙なスケジュールでストレスが

たまっていたのもあったのだろう。


もうなりふり構っていられなかった。


「あ、もしもし春菜?

ごめんね。こんな遅い時間に。

あのさ、ちょっと聞きたいことが

あるんだけど。私達のクラスの男子で

一番交流が広い人って誰だと思う?

クラスの男子の人達の家の場所

知ってそうな人。

うん。ちょっとね。間違って

健児君の教科書持ち帰っててさ。

明日休日だし、早めに返しとこうと思って。

おけおけ。分かったー!

サンキュー!」




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。

























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