第15話 招待

最寄りの黒島駅に到着した俺は

凄く緊張していた。

三人で会うとはいえ、私生活で女性と

待ち合わせをするのはこれが初めてだ。


絶対遅刻しないように集合時間の

二時間前には到着しちゃったもんね!


それから1時間30分ほど過ぎて、

ガタンゴトンと電車が到着した。


プシューと開かれたドアから

同期の霧島さんと三浦さんが

下車する。


「こんにちは。二人とも

同じ電車だったんですね」


「こんにちは。ええ、電車内でばったり

会ってね」


相変わらず霧島さんはカラフルで

オシャレな服装だな......


「オー君こんにちは~

そうなの。びっくりしちゃった」


三浦さんも相変わらず

ほわほわしてて、

色っぽいお姉さんだなぁ......


この二人が俺の家に来るのか......

なんか......緊張やばい......

動悸が激しい。


昨日慌てて掃除とか片付けしたけど

大丈夫かな?

汚いとか言われたらどうしよ。



隠したあれ見つかったどうしよ......


軽い雑談をしながら

家路を歩き、十分ほどして

自宅へと到着した。


「あら。オー君高校生で

一人暮らしなんでしょ?」


「そうですよ。厳密には祖父と

二人暮らしなんですけど、

今祖父は別のとこに住んでいるので

俺が一人暮らししてます」


一階建ての一軒家だが、

亡くなった両親と暮らしてたから

それなりに広い。

ただ、掃除がめんどくさいけど。


「お邪魔します」


「おいしょ。お邪魔しまーす」


いよいよ、二人が家に入ってきた。


「ふーん、意外に綺麗ね」


「ね~、頑張って掃除したの?」


ば、バレてる......


「そ、そんなことより、とりあえず

先にオフコラボの打ち合わせとか

しときましょうよ」


「え~せっかくお昼に集まったんだし、

一緒にランチを食べましょ?

もしかして、もうみんな食べちゃった?

私サンドイッチつくってきたんだけど」


や、やべええええ!!

普通に食べてしまった!


そ、そんな悲しそうな目を

向けるのやめて!?


手作りサンドイッチが入ってる

バスケットを持ちながら、

三浦さんは不安げに

俺たちを見つめてくる。


「俺まだ食べてないんですよね!

ちょうどお腹空いてて!」


「ほんと!? よかった!

オー君も男の子だから

たくさん食べるかなって思って多めに

作っちゃってたの」


「わ、わぁ~俺泣いちゃいそうだなぁ」


「ネオンちゃんは?」


「え......私は......食べてきてない。

け、けど! ちょうど

今ダイエット中だから」


そう発した霧島さんに三浦さんは

うるうるとした視線を向けた。


「ぅ......きょ、今日くらいは

ダイエットしなくてもいいかもね」


案外、霧島さんのことを冷たい人だと

思っていたが、優しい所もあるようだ。


それから居間の机を囲ってサンドイッチを

食べて始めたが、これがまた地獄だった。


美味しいのだが、黒島駅で

弁当を食べたばかりだったから、

腹に入っていかない。


だが、せっかく三浦さんが作ってきてくれたのだから残すわけにはいかない。


ここは霧島さんにほとんど食べてもらおう。


そう思ってた俺を机の下で誰かが蹴った。

どうやら霧島さんだったようで、

ものすごい俺を睨みながら、


『これ全部食べて』


と訴えてくる。


この人も食べてきてたのかよ。


ほとんど俺が水で流し込みながら

食べることとなった。


「ご、ちそう......さまでした」


「美味しかったわ、マリア。

ありがとう」


霧島さんはほとんど食べてくないくせに

涼しそうな顔をしながら口元を拭う。


「お粗末様でした。

よかった~二人とも喜んでくれた

みたいで」


人は空腹よりも食べ続けるのが辛いと

テレビで観たことがあるが、

マジでそうだった。


「今2時ね。

狼、貴方もう枠は立ててる?」


「立ててますよ......一応配信開始は

7時にしてます」


「そう。サムネは?」


「適当に二人と俺のキャラ並べたやつなら」


「はぁ......いつも思ってたけど、貴方

サムネの作り方知らないの?

あれじゃあ新規の人がなかなか来ないわよ」


「え、そうなんですか?」


「サムネとタイトルで興味を引かなきゃ」


「ネオンちゃんって凄いよね~

プロみたい」


「プロよ。企業に勤めてる以上は

プロとしてやらなきゃ。

狼、配信部屋に案内して。

あとパソコンも貸してね。

私が今日のサムネ作るから」


「わ、わかりました」


か、カッコいい......


もし俺が女で霧島さんが男だったら

今ので恋してたね。間違いなく。



俺の配信部屋は居間から廊下に出て

隣の部屋だ。


「オー君の配信部屋にお邪魔しまーす」


ちなみに、俺の配信部屋には

高校の教科書や寝るためのベッドもある。

ほとんど俺の部屋だ。


「......想像より狭いわね」


「え、そうですか?

ベッドの上とか自由に使って

もらっていいですよ。

そしたら、普通に広いでしょ」


そう思ってはいたが、いざ三人が入ると

狭かった。

窮屈とまではいかないが、相手の呼吸音が

微かに聞こえるくらいには近い。


俺がいつも座っている椅子に霧島さんは

腰かけて、編集ソフトを利用しながら

丁寧にサムネを作っていく。


俺は隣でその様子を眺めながら、

居間の椅子を二つほど持ってきて三人で

座れるように準備していた。


ちなみに、三浦さんは俺の部屋を

興味深そうに観察しながら、


「わぁ! これ数学の教科書ね!

懐かしい~私因数分解が解けなくて

数学嫌いになったの」


と学生時代の思い出に浸っている。


「マリア。あまり人の部屋を

荒らさないの」


「あらごめんなさい。私男の子の

部屋に入るの初めてで、

つい興奮しちゃって」


「変な物見つけちゃっても知らないわよ」


「変な物?」


「男の部屋にはとんでもない物が

あるのよ。ベッドの下とか鍵のかかった

引き出しの中とか」


「あ! もしかしてそれって

えっちな本?」


「もうちょっとオブラートに

包みなさいよ!」


「あらごめんなさい」


とんでもねぇ会話してるじゃん。


俺は三人分の麦茶を持ったまま、

部屋に入るタイミングを見失っていた。


でも、この部屋にはないから

大丈夫なんだけどね!



────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。



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