第14話 故にオフですることとなった

遡ること2日前。


ネオさんとマリアさんが初配信をしてから

一週間が過ぎた。

あれから二人は各々のチャンネルで

配信を行い、登録者数も順調に伸びた。


ネオ 登録者数 33809人 平均同接3200

マリア 登録者数 15040人 平均同接1700

オオカミン 登録者数 29680人

平均同接 2500


今のところこんな感じである。


ネオさんだけ異常すぎた。

まぁあれだけ多彩で美声なら

この結果になるのも不思議じゃない。


だが、一つだけネオさんに対する不確かな

噂を耳にした。

それはネオさんの前世のVtuberが

とんでもない大物だったということ。

彼女が初配信をした日からネットで

噂されだしていた。


『あれ? この声ってどっかで』

『めっちゃルインちゃんに似てない!?』


【ブイライブの一期生ネオ・ヴァイア。

元シャイニング一期生のルイン・リーゼ説】


こんなネット記事まで出される始末。


シャイニングっていったらあの星野さんも

いる大企業だろ?

それにシャイニングの一期生なら

デビューは5年前になる。

大御所じゃん。


俺はちらっとルインと検索してみた。


ルイン・リーゼ

登録者数 68万人

3か月前に引退か。


もしもこの人が今のネオなら何で

ブイライブに来たんだ?

シャイニングの方が有名だし、

お金もがっぽがっぽ稼げるだろうに。


まぁでも、ただの噂なのにその真偽を

霧島さんに聞くことはできない。


ピコン


デスコにチャットが入る。


『ちょっといいかな?』


一期生が入っているグループに

メッセージを送信したのは三浦さんだった。


『どうしたんですか? マリアさん』


うっかり配信でお互いの本名を

言ってしまわないように、

裏でもVtuber名で呼ぶようにしている。


『オー君、私したいことがあるんだけど』


オー君とは俺のことである。


『したいこと?』


『私たち同じ事務所の同期でしょ?

だから、親睦を深めるためにもコラボしない? 私コラボって凄く憧れなの~』


コラボか。みんなデビューして

一週間経つし、そろそろコラボも

していい頃だろう。


『そうですね』


『私もいいと思うわよ』


『オー君、ネオンちゃんありがとぉ』


ネオンちゃんとはネオさんのことである。


『でも、コラボって何するの? 雑談?』


『それもいいけど、

せっかくの同期なんだし、

もっと別のこともしてみたいな』


『ならゲームでもする?

みんなスリッチ持ってる?』


スリッチとは今大人気の家庭用ゲーム機。


『俺は持ってます。ソフトは

モリオカートだけですけど』


『私もモリオカート持ってるわ。

マリアは?』


『どうしましょう......

スリッチすら持ってないの。

いくら?』


『だいたい高いので4万。安いので3万くらいですね。モリオカートも中古で

4000円くらいです』


『あら......買えなさそう......』


まぁデビューして間もないし、

お金がかつかつなのは仕方のないことだ。


『それならpcのゲームで

何か探すしかないわね』


『俺スペックのいい

ゲーミングpcじゃないんで、

もしかしたらきついかもっす』


『何で二人とも配信に大事な

機材持ってないのよ......』


だってお金ないんだもん。


『そのスリッチはオンラインじゃなくて

ローカルプレイはできないの?

私昔はよく従姉妹たちとmiiで

遊んだことがあるから、

スリッチもそれができるんじゃないかって

思ってた』


『できるけど、それって

オフコラボになるわよ?』


『オフコラボって何?』


『スリッチを持ってる人の家に行って

配信すること。リアルで会うのよ』


『ええ! それって凄く

楽しそうじゃない?

私それしたい!!』


ん???

ちょっと待てよ。


『まぁ私は別にいいけど、

私のマンションは無理だから。

人呼べるほど広くないの』


『私も無理かも。

父が厳しい人だから恋人以外の男は

家に入れるなって。

だから、オー君が入れなくなっちゃう』


なら辞めとくか。

一ヶ月後ぐらいに収入も入って

マリアさんもスリッチ買えるだろうし。


『オー君の家は?』


え?


『狼、どうなの?』


ネオさんは俺のことを狼と呼んでいる。


『......できなくはないですよ。

俺一軒家の一人暮らしだし』


『あら! 最適じゃない?

お邪魔してもいいかしら?』


え、えええ!?

二人が俺の家に来るの!?

それはちょっとまずくないか!?


『い、いや......流石にそれは

まずいのでは? 世間的にいろいろと』


『なに? まさか変な妄想でもしてるの?

そんなの起こるわけないでしょ。

アホらしい』


『オー君可愛いわね~』


なんか腹立つな。


『今マネージャーに確認したわ。

特に問題はないって』


『あらま!

いつにする? 私今日でもいいけど!』


めっちゃマリアさんノリノリだな。

ただ純粋に友達の家に遊びに行く

感覚なんだろうし、大丈夫か。


『さ、流石に今日は無理です。

明日なら何とか』


『私も明日なら行けるわ』


『じゃあ明日にしましょ!

集合場所はどこにする?』


聞いた話だとお互い住んでる場所は

同じ県内だそうだ。


『黒島駅まで来てくれたら迎えに

行きますよ』


『了解。夜の配信なら18時くらいに集合すればいいわね』


『え~せっかくの休日だし、

お昼頃に集まろうよ~』


『遊びに行くわけじゃないのよ、マリア』


どことなくマリアさんは

配信業を娯楽として捉えている節がある。

対してネオさんは完全なる仕事人だ。

プロ意識がめちゃくちゃ高い。


けど、別にどっちが良い悪いとは

思わない。

どっちにも個性があるということだ。


何だかんだやり取りを重ねて、

明日のお昼頃に黒島駅で待ち合わせを

することとなった。



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