第12話 同期メンバー

あれから採用担当の畠山さんとdmで

やり取りを重ねて、一週間後。

俺の同期となる選考突破者が

確定したようで、俺はブイライブの

本社に呼ばれた。


マネージャーとの面会と

デビューまでの打ち合わせ、

そして同期メンバーとの

顔合わせも兼ねている。


「す......すげぇ......」


東京の街並みに圧倒されつつ地図を頼りに

本社にたどり着いた。


ここか。


中に入るとアフロのスーツを着た男性が

こちらに顔を向け、


「もしかして......佐藤健児さんですか?」


「あ、はい!」


「あ、初めまして。私ブイライブの

畠山と申します」


ご丁寧に名刺を差し出してくれた。

おお、これが社会人というものか!


「あ、ありがとうございます」


「それにしても、お若いですね。

高校二年生とは伺っていたのですが、

オオカミンさんの声が渋かったもので」


「よく声が渋いって言われますね」


そんなに渋い声をしているのだろうか。


「ささ、どうぞこちらへ。

他の方々はもう到着しております」


そう先導されてエレベーターに乗り込み、

五階へと上がった。


「ここが待機室になります。

みなさん。オオカミンさんこと

佐藤健児さんが到着されました」


畠山さんに続いて待機室へ入った

俺は、待ち受けていた人々に衝撃を受けた。


「あ! この人があのオオカミンさんなんですか~? 思ってたより若いねぇ~」


ほわほわっとした話し方で、

たれ目の優しそうなお姉さんがそう言う。

めっちゃ美人で綺麗な人だ。


思わずその美しさに見惚れてしまい、

自己紹介をするのを一瞬忘れてしまった。


「は、初めまして!

オオカミンという名前でVtuberを

やってる佐藤健児です。

年は16才で高校生です。

これからよろしくお願いします」


「あらぁまぁまぁ配信中の話し方とは

随分違いますけど、もしかして

緊張してるのかなぁ?

緊張しなくても大丈夫よ~」


右手で右頬に触れながら

にっこりと微笑む。


な、なんだ!?この包容力は!?


俺が驚いたのはこの美人なお姉さんが

いたからだけではない。

この待機室にはもう一人いた。


「よろしくお願いします」


俺は彼女のその第一声に

格の違いを感じた。

とてつもなく可愛い声をしているのだ。

まるで、声優。

聞いただけで耳にずっと残って、

人を惹き付けてしまう。

そんな桁外れの声に俺は言葉を

失ってしまった。


椅子の上で体育座りをしながら

彼女は俺を見定めていた。

虹色の派手なツイルテールに、

忍者のアニメに出てきそうな輪◯眼、

ではなくそれによく似た金色のカラコン。

えらく幼く見えてしまうのは隣があの

美人なお姉さんだからだろうか。


「こちらこそよろしくお願いします」


俺は緊張しながら何とか答える。

その人を値踏みするような視線やめてよ......


「想像してたより子供っぽいですね」


ええ!? ひ、酷くね!?

初対面だぞ!?


「ま、まぁ実際まだ成人

してないですからね」


なんとかそう返した。


微妙な空気が俺たちの間に

流れ始めたのを察したのか、


「さ、さぁ健児さんも

お座りください。

まずは簡単に自己紹介でもしましょう」


と畠山さんが苦笑いを浮かべていた。


「えーではまずは私から。

畠山太郎と申します。

最近は採用担当を行っておりましたが、

本日から私は健児さんのマネージャーを

していきます」


「え、俺のですか?

他のお二方のマネージャーは?」


「もう既にお二方はマネージャーと

面会し終えております。

では、次に健児さんは先ほど軽く

自己紹介をされていましたので、

三浦さん。お願いします」


「はーい。

三浦花でーす。

個人経営ですけど実家で花屋を

やってる25才です。

ちなみにVtuber経験はないので、

いろいろ教えてくださいね? 健児君」


あ、あぶね!!!

こ、心が! 心がキューピットに

打たれかけた!


「......はい」


「じゃあ最後に霧島さん。お願いします」


「霧島ほのかです。

フリーターですが、前までVtuberを

やってた経験があります。

あと26才です。

よろしく」


この人Vtuber経験あるのか。

でも、この声だったらとんでもない

人気ありそうだな。


「はい。みなさんありがとうございます!

えーこれでブイライブの一期生が

揃いました。

なんとその内の二人がVtuberの経験がある

ということで、最近設立された

ばかりのブイライブとしては、

これ以上心強いことはありません。

私はこのブイライブを日本一、

いえ世界一のVtuber事務所にしたいと

考えています! どうか私たちに

力を貸してください!

私たちも全力で皆さんをサポートする

所存です!」


熱い人だな......

けど、なんかワクワクしてきた。

このブイライブと一緒に俺も成長して、

いつか超人気のVtuberに!


しかも、同期がこんなに美人と

可愛い人だなんて!


俺はついてる!


────────────────────


ブイライブのデビューを最初にしたのは、

既に知名度があった俺だった。

ブイライブという名前を世に

知らしめる戦略なのだろうが、

一発目なのはさすがに緊張した。


だが、俺の場合は見た目も名前も

何も変わったわけでない。


ただ単に、ブイライブというグループに

所属するという報告をしただけだ。


『ついにオオカミンも就職か!』

『おめでとーー!!』


そんな俺を快く喜んでくれる

コメントが流れていく。


重大報告とタイトルにしたためか、

同接も3000人を超えていた。


「明日、明後日に俺の同期が二人

デビューするから絶対見てな!」


そして、バトンが俺から三浦さんに

引き継がれ。


「初めまして~

ブイライブ一期生のマザー・マリアと

いいます。

好きなものは年下の子と人の懺悔です」


三浦花さんことマザー・マリアさんの

見た目はその名の通りシスターだった。

あとどうでもいいが胸が大きかった。

リアルも。


「可愛いすぎじゃね!?」

「推しになりました。贅沢は言わないので

結婚してください」


「え~お姉さん、結婚はできないかなぁ?

でも、ママになってあげてもいいよぉ?」


『ママ!!!』

『ばぶばふ!』

『えー、非常にばぶみがあります。

赤ちゃん評議会より』

『とりあえず、これから毎日僕のこと

おこちてくれるかな?』

『ママ~メンバーまだ?』


コメント欄がとんでもないことに

なっていく。


それを面白そうにマリアは笑った。


その日、一瞬にしてマザー・マリアの

登録者は6000人を突破した。




────────────────────

ここまで読んでくださり、

ありがとうございます!


作者のモチベーションに繋がりますので、

面白いと思ってくれた方は、

是非とも【レビュー】【スター】【いいね】

の方をよろしくお願いします。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る