第8話 クロネの正体
「な、なんだこのDM!?」
朝っぱらからとんでもない
メッセージを見てしまった。
「だ、誰からだ?」
黒猫クロネ?
あれ......このVtuberって昨日の
Vtuberカードの人じゃ......
こんな偶然あるんだな。
その人からコラボ誘われるなんて。
ど、どうしよ......
星野さんとコラボはしたもののの、
あれは中の人と知り合いだったから
したわけであって......まぁほとんど
強引だったけど。
でも、この人結構登録者いるな。
何で俺なんかにコラボを依頼してきたんだ?
バズったからか?
むしろ、それしかないか。
んーどうするかなぁ......
別に俺は個人勢だし、
誰とコラボしようと勝手だ。
......してみるか?
『メッセージありがとうございます。
個人勢のオオカミンです。
是非! こちらからもお願いします!』
すると、直ぐに返信が来た。
『返信ありがとうございますだにゃん!
とっても嬉しいのにゃ!
コラボの日時はいつにしますだにゃん?』
すっげ。この人キャラずっと
保ってる......
『本日の21時からはどうでしょうか?』
『大丈夫ですだにゃん!
ゲーム配信でいいかにゃん?』
『はい! 何のゲーム実況を──』
色々あって、本日ホラー実況を
することになった。
────────────────────
「引き受けてもらえた......」
石城は未だに信じられないといった
表情でDMの履歴を眺めている。
「や、やったあああああああ!!!!」
石城はスマホを両手で抱き締めて
嬉しさを噛み締めるようにベットの上で
バタバタするのだった。
────────────────────
昼休み。
クラスの男子達の視線が痛いので
屋上で昼食を取っていたところ、
背後から星野さんに声をかけられた。
教室から逃げるのを目撃してたらしい。
「え!? 今日オオカミン
コラボすんの!?
誰と誰と!?」
二人きりのせいか異常に
緊張してしまった俺は、
沈黙を埋めようとそのことについて
話してしまった。
「黒猫クロネって人」
「え!? アニファンのクロネちゃん!?」
「そ、そうだけど」
「うっそ! あたしアニファンの人たちとは何度かコラボしたことあるけど、クロネちゃんはコラボしたことないよ!?
あんまり外部の人とコラボしないで
有名なのに!」
「え、じゃあ何で俺にコラボの
誘い来たんだろ......」
やっぱ何か怪しいし、今からでも
断ろうかな。
そんなことを考えていた俺の目の前に、
星野さんはぐいっと顔を近付けて、
「そんなんオオカミンが
魅力的なVtuberに決まってるじゃん!
楽しんできなよ!」
そう言われても、自分ではピンと来ない。
「でも、いいなぁ~
あたしまだオオカミンとの
コラボの日程決まってないのに」
星野さんはじーっとこちらを
見詰めてくる。
「いやいや、俺はほんとにいつでも
いいんだけどさ」
「けど?」
前から気になっていた。
何で星野さんの推しが俺なのだと。
他にも魅力的なイケメンのVtuberなんて
たくさんいるのに。
しかも、リアルでもこんだけ
美人なんだから、リアルでイケメンの
彼氏くらいいるだろうに。
「何で星野さんって」
そのとき、
「こらっ! 誰だ屋上に行ってるのは!
立ち入り禁止の文字が見えなかったのか!」
タイミング悪く、教師の怒鳴り声が
屋上に響き渡った。
────────────────────
どんな理由があれ、一度コラボの約束をしたのであれば、その約束を果たすべきだ。
例えそれが売名目的だったとしても。
別に売名目的が嫌というわけではない。
俺も星野さんに名を売って貰ったのだから。
何が不安なのか説明すると、
相手がどんな人物なのかが分からないからだ。
そりゃ、チャットしただけなのだから
仕方がない。
通話すれば相手がどんな人か分かる。
「初めましてだにゃん!
オオカミンさん!
もしよかったらオオカミンって
呼んでいいにゃん?」
通話しても訳分かんない人だった。
「あ、はい! 全然いいですよ!」
コラボの30分前に軽く打ち合わせをしようとデスコの通話に入ったが、キャラで
塗り固められたままの話し方に
不安が募っていく。
「黒猫さん」
「ん? クロネでいいにゃんよ?
敬語もなしで大丈夫にゃん」
「う、うん分かった。
えっとさ」
知り合いにクロネさんはあまり外部と
コラボをしたがらないって聞いたんだけど、どうして俺とコラボをしてくれたの?
配信開始の3分前。
そう聞いていいか躊躇った。
さすがに直球過ぎるか?
「ご、ごめん。質問忘れちゃった」
せめて、裏では素で話してもらえるとこの
不信感もなくなるんだけど。
やがて、配信がスタートした。
オオカミンの同接 1660人
「こんばんはー! オオカ民族のみんな!」
オオカ民族とは俺が自分の
リスナーにつけた名称である。
我ながらセンスがいい。
「今日はとある方とホラゲーを
実況しようと思います。
そのとある方がこの方です!」
「魔界からこの人間界にやって来た!
魔法使いになるのを夢見るにゃんこVtuberの
黒猫クロネだにゃん!
今日はよろしくお願いしまーすだにゃん」
『クロネちゃんだ!』
『おお! オオカミンが黒猫クロネと
コラボするのか』
さすがはVtuberチップスに選抜されてる
Vtuber。
俺のリスナーにも彼女のことを
知っているリスナーがちらほらいる。
『お邪魔しまーす』
『今日はクロネのことよろすく』
相手側のリスナーも
目に入る。
「今日はね、二人でホラゲーを
するということで、赤鬼を
したいと思います。
俺あんまりホラゲーのこと詳しくないんだけど、赤鬼って皆知ってる?」
『当たり前だろ笑』
『なんでオオカミン知らないんだよ』
『これは初見の反応が見られそうww』
「私もびっくりしたにゃ。
まさかこの世に赤鬼のゲームを知らない
人間がいるにゃんて」
「いや、俺は狼なんでセーフ。
そんなに有名なの?」
「もちろんにゃ。
有名すぎて映画にもにゃったし、
スマホゲームもあるにゃ。
そういえば、オオカミンは
ホラゲー大丈夫にゃ?
これ結構怖いけど」
「うん。むしろ、俺悲鳴
上げないかもだから見ててつまらないかも」
そう思ってた時期が俺にもありました。
「ニャハハハハハハハ!!!!」
「もうまじで無理!
今赤い化け物いたじゃん!
この割れた皿とか拾ったら絶対来るって!
どぅわ!!? な、何でお前が出てくるんだよ! お前さっき赤鬼に
食われてただろ!?
恨みか!? 置いていった俺に対する
憎悪か!?」
「怖がり過ぎにゃオオカミン」
意外にも、ビビりまくった俺と
冷静なクロネの相性は抜群だったようで、
視聴者のウケもよかった。
ホラゲーの実況も一段落し、
俺とクロネは軽く雑談をしていた。
打ち解けたというほどでもないが、
少しだけこの人に対する不信感も
薄れ始め、
「そういえば、俺クロネから
コラボの誘いが来た前日にクロネの
こと知ったんだよね」
「え? 何で知ったにゃ?」
「Vtuberチップスのカードにいたからさ」
「あ! Vtuberチップスにゃ!?」
さすがにそのカードが捨てられてたことは
伏せた。
「そういえば、クロネも
Vtuberカードの件で、最近嬉しいことが
あったにゃんよ」
「嬉しいこと?」
「それが、私現世で修行のために
アルバイトをしてるんだけどにゃ。
そこのバイト先で先輩に私の
Vtuberカードを捨てられちゃって」
ん?
今なんて?
「けど、バイトの後輩が
それを見て、私のVtuberカードを
拾ってくれたにゃんよ!
しかも、ゴミ箱に捨てられてたのに
わざわざティッシュで綺麗にしてくれて」
ん????
あ、あれ??????
なんか似たような出来事があったような......
「きっとあのカード、今頃
後輩の家に大切に保管されてるにゃん」
あれ。
なんか俺の目の前にも保管されてる
カードがあるな。
『いい話......』
『捨てたやつ殺す』
『後輩君いいやつやね』
........................こんな偶然ってあるんだな。
世界は広いようで狭い。
「今度お礼を言いたいにゃん。
けど、私その後輩をいつも
怒ってばかりだから
きっと嫌われてるにゃん」
「クロネが怒ってるの
想像できないけどね。
それに相手も自分のために
怒ってくれてるって理解してると思うし、
嫌われてないと思うよ」
「そうかにゃ? ......なら頑張って
お礼言ってみるにゃ! お礼の品でも
一緒に用意した方がいいかにゃ?」
「んーまぁあったら喜んでくれると思うよ」
「その後輩、男子高校生なんだけど
そのくらいの年代の子ってにゃにが
好きにゃ?」
「お菓子でいいんじゃない?
男子高校生なら年上のお姉さんの
手作りお菓子で瞬殺よ」
「そうなのかにゃ!?
にゃら手作りのクッキーも
一緒に渡してみるにゃん!」
そんな雑談をして、クロネとの
コラボは終わった。
いいなぁーーーーー!
俺もバイト先のお姉さんから手作り
クッキーほしいなぁあああ!!!
そのバイト先の男子高校生で
爆発しろ。
────────────────────
ここまで読んでくださり、
ありがとうございます!
作者のモチベーションに繋がりますので、
面白いと思ってくれた方は、
是非とも【レビュー】【スター】【いいね】
の方をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます