第8話 二人ともちゃんと汗を拭いて寝るのよ

 夜、食事が終わったあと、台所でお湯を沸かしてコペルと一緒に部屋へと運ぶ。お風呂がないこちらの世界では、水を被るか、お湯で拭くかしないと身を清める方法はない。昨日はコペルが糸車に夢中でできなかったから、今日やろうとは思っていたんだけど……母さんたちは何を私たちに教えるつもりなのかな。


「コペル、自分でできる?」


 すでに二人とも、身にまとっているものを脱いで裸になっている。


「できる。でも……」


 コペルがジリジリと近づいてきて……


「な、何? あ、してくれるの?」


 コペルが羊毛の生地をお湯で濡らして、私の体を拭き始めた。


「ソルは年上だけど、なんだかほっとけない」


 まずは首から肩、そして指先まで……


「そうかな……」


「そう。腕上げて」


「あはは、くすぐったい」


 わ、脇は弱いの。


「せっかくだから全部やる。次……」


 再度布をお湯で浸し、次にコペルの手が向かった先は、


「ひゃん!」


 変な声が出ちゃった。人から胸を触られるってこんな感じなんだ。思わず身を捩ってしまう。


「拭きにくいから動かないで」


 そんなこと言っても……

 コペルの手で私の胸はキレイに拭きあげられ、そして……


「そ、そっちも?」


「私は昨日しっかりと見られた」


 昨日は調べる必要があったから仕方がないと思うんだけど。

 コペルの手が私の下半身へと伸びてきて……






「うぅー、恥ずかしかった。次はコペルだよ」


「私は自分で……」


「ダーメ、手が届かないところもあるんだから」


 何とかコペルを拭きあげた頃、外から声がかかった。


「入るわよ。……あら、あなたたちもう裸なのね。ちょうどよかったわ」


 ミサフィ母さんとユティ姉が、湯気が出ている桶を持ってやって来た。

 ふぅ、ギリギリだった。間に合ってよかったよ。


「それじゃ、ユティ」


「はい」


 母さんとユティ姉は着ている物を脱いでいく。

 油灯ゆとうの灯りに照らされ、二人の裸体があらわになる。


 母さんは今年で35歳、私たち兄弟を三人産んでいるけど豊満な胸に引き締まった体。いつ見てもすごいなって思う。

 ユティ姉はつい先日ジュト兄のところに隣村から嫁いできたばかりの17歳。裸を見たのは初めてだけど、胸も大きいし体もふんわりしてて柔らかそう。うーん、これはジュト兄にいい人をもらったねって言いたくなるよ。


「ミサフィさんすごい……なんかやっている?」


 コペルもそう思うよね。私も気になるもん。


「もちろん、努力してるわよ。今日はその中でも、カインの女たちに伝わる秘術を教えに来たから、あなたたちも覚えて練習しなさい」


 ひ、秘術なんてあるんだ。知らなかった……


「母さん、これを覚えるとどうなるの?」


「男たちが自然ということを聞くようになるわね。仮に浮気してもちゃんと戻ってくるわ」


 男を虜にするってことかな……


「さあ、二人とも、まずは――――」


 私とコペルは母さんに言われた通り準備をする。


「うう、自分でするのって苦手……」


 テムスと部屋が一緒だったから、あまりやる機会が無くて……

 あ、コペルも顔を真っ赤にしている。最初の方もたどたどしかったから、こういうことになれていないのかもしれない。


「みんな、準備はできたようね。早速始めましょう。まずは私とユティを見てて」


 私とコペルは、母さんとユティ姉を食い入るように見つめる。

 わ、わぁー。あそこがあんなになるんだ。すごい。







「コペル、わかった?」


 コペルは首を横に振る。母さんたちから教えてもらいながら試してみたんだけど、なかなか上手くいかなかった。たぶんこの秘術を会得できたら男の人は喜ぶと思う。地球で男の私がいうんだから間違いない。これは絶対気持ちいいやつだ。


「ふふ、最初はそんなものよ。そのうちわかるようになってくるから。さて、今日はこれくらいにしましょう。二人ともちゃんと汗を拭いて寝るのよ、風邪ひくから」


 母さんとユティ姉は持って来た桶を使って体を拭いていく。

 私とコペルは自分たちの桶を使う。さっき体を拭いた時のものだからもう水になっているけど、火照っている体にはちょうどいい。


「あとは二人で練習しなさい。なあに、今は分からなくても結婚してからでも遅くはないんだから、ゆっくりやりなさい。……そうだ結婚と言えば、そろそろあなたたちも年頃だけどちゃんと自分で見つけないとこっちで勝手に決めるわよ」


「はーい」

「わかってる」


 結婚か……私はどんな人を好きになるのかな。

 ユーリル……うーん、なんか違う。ものすごく親しみは感じるんだけど、恋愛感情とは別の次元な感じがするんだよね。……まあいいか、そのうち誰か現れるだろう。


「さてと、私たちも寝ようか」


「うん」


 これまでとは別の部屋で寝ることになった私は、いつもと違う寝息を隣に感じながらもすぐに眠りにつくことができた。





〇5月5日(祝)地球


 いつものように朝日とともに起きる。お、今日もいい天気。

 うーんと体を伸ばし、スマホを見るとチカチカと光っていた。


 何だろう……


 SNSにマークが……あ、竹下から。ついさっきか……

 朝から珍しいなと思い、内容を確認する。


 なるほど……OK。


 と返信。すぐに返事が来た。


 さてと、散歩に行こう。

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