第2話 隊長は挟まりたくない
部下たちから差し出される戦利品――女騎士2人。部下たちの言う楽しむとは…まあ、そういうことでしょう。
(えっ…、隊長からって…。俺が!?この2人を!?凌辱するの!?)
改めて彼女たちを見ます。鎧のせいで全体はよく見えませんが、破れた部分から覗く肌から2人とも中々豊満な体つきをしているのが見て取れます。
整った容姿と合わせてかなりの上玉です。もし彼女たちを抱けるのなら男にとってこれ以上の幸福は中々無いでしょう。しかし、私は――
(無理無理無理!この尊さを汚すなんて俺にはできない!)
この通りの百合豚なのです。今も、肌の露出よりもお互いを守るように抱き合っている姿の方に夢中です。
しかし、相手は敵兵。虐げこそすれ、慈しむことなど魔王軍では許されません。なにより――
「どうしたんですか隊長!早くヤっちまいましょうぜ!」
獲物はまずは隊長からという部下たちの厚意を無下にするわけにはいきません。しかし、自分の意志を曲げて乱暴を働くわけには…。ですが部下の手前断るわけにも…。しかし断ったら彼女たちが酷い目に遭うのは確定してしまうし…。
部下と自分の嗜好の板挟みとなり、一瞬で窮地に立たされました。まさか最大の危機が戦闘の後に襲ってくるとは…。
「私は騎士だ!騎士道を重んじる身として、絶対に貴様らには屈しない…!」
必死に打開策を考える私の耳に女騎士(お姉様)の啖呵が届きます。その言葉を聞いた瞬間、私の脳にまるで天啓が下りたかのようにアイデアが湧きました。
(騎士道…!?これだ!!)
「隊長、怪我でもしたんですかい?気分が乗らないなら俺たちでマワして…」
「馬鹿野郎!!」
沈黙していた私の突然の叫びに、部下たちだけでなく女騎士たちもビクリと身を強張らせます。
「お前らそれでも誇り高きオーク族か!勇敢に戦った彼女たちを称賛こそすれ、辱めようなどと武人として恥を知れ!!」
そう、武人路線。これならば彼女たちの身の安全を守りつつ隊長としての体裁を保つことができます。我ながら完璧な策です。
「…いや、突然どうしたんですか?急に高潔っぽいこと言って。隊長だって普通に落とし穴仕掛けたり、う〇こ投げつけたりなんて姑息なことしてますよね?」
「う、うるさい!使える手段は何でも使うのは戦士として当然だ!」
呆れたような顔の部下にツッコまれてしまいました。おかしいですね、こんなに早く私の完璧な策に穴が開くとは。
「人間の騎士よ。部下たちが失礼をした。私はこの部隊の隊長であるロスという者だ」
とりあえずは自己紹介です。種族は違えど礼を尽くす相手を無下にはできないでしょう。
「君たち捕虜の処遇を決めるためにも話し合いたい。席を設けるから君たちの話を聞かせてほしい」
「何紳士ぶってるんですか隊長。さっきの戦闘中、肥溜め落とし穴に嵌った敵兵見て大笑いしてたくせに」
「や、やかましい!クソまみれでキレ散らかしてたハゲデブ将軍が悪い!」
部下の余計なチャチャ入れで彼女たちの私を見る目がどんどん胡散臭そうなものになっていきます。こんなに穏やかな物腰で話しているのに酷いですね…。
「…部下たちは気にしないでくれ。君たちがおとなしく話し合いの席につくのなら手出しはさせない」
不満そうな部下たちを横目に軍議に使っていたテーブルを指さします。いまだに不審そうにこちらを睨んでいる彼女たちですが、静止している部下たちを見て一応は信用したのでしょう。立ち上がって姿勢を正しました。
「…私の名はリリアナ。第5王国騎士団所属の上級騎士だ。」
「わ、私はルカですっ!お姉様と同じ第5王国騎士団の下級騎士です!」
リリアナの名乗りを見てルカも慌てて立ち上がり名乗り上げます。どうやら話し合いの意思はあるようです。
事態の打開に一歩前進できたことに喜びを感じながら席につくよう促します。部下たちがずっと白い目でこちらを見てくることが気になりますが…。
「最初に言っておくが、私は騎士団の機密に関わることは一切喋るつもりは無いぞ。私たちを懐柔して騎士団の動向を探るつもりなら見当違いだと言っておく」
ウンウン、と隣で頷くルカ。どうやらこちらの態度に下心があると思われてるようですね。まあ、そんな情報手に入れたところで活用できるほどの脳みそはこの小隊には無いんですけどね。
「あくまで君たちの処遇を決めるための話し合いだ。聞くのは君たちの身の上話程度だよ」
私にとって必要な情報はそんなものではありません。私が知りたいのは彼女たちの詳細。そしてなにより――
「まずは君たちの関係から教えてもらおうか」
彼女たちの百合エピソードです。
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