百合豚オークはブヒりたい

柿炭酸

第1話 百合を尊んで一人

 どうも初めまして。魔王軍第7軍 第7オーク小隊所属 隊長オークのロスです。

 特にこれといった特技も無く真面目だけが取り柄の私でしたが、人間たちとの戦争が激化し、上官たちが次々と(現世から)離席していったことで隊長の席に収まることになりました。

 まだまだ至らない点も多く、血気盛んな部下たちを何とか指令通りに行動させることに精一杯な日々を過ごしております。

 今日もとある渓谷で人間たちの部隊と戦闘をするよう指令を受けて戦場に赴きました。待ち伏せてトラップを仕掛けたのが功を奏したのか、危なげなく戦闘には勝利し、人間の部隊を撃退することには成功。ひとまずは胸をなで下ろしました。

 しかし、私の最大の危機は戦闘に勝利した後に待ち受けていたのです――


「くっ…!殺すなら私だけを殺せ…!」


「ダメですお姉様っ!私が、私が代わりに…!」


 ボロボロの鎧姿で満身創痍ながらもお互いをかばい合っている人間の女騎士2人。


「ぐへへへッ!メスだ!メスだ!」


「上物じゃねえか!たまんねえ!」


「こちとら1ヵ月も行軍続きで溜まってんだ!たっぷり楽しませてもらうぜ!」

 

 その周りを取り囲み、今にも飛び掛からんばかりに舌なめずりをしている私の部下たち。


「あっ、隊長!敵部隊は取り逃がしましたが女2人を捕虜にしました!さあ隊長からどうぞ!」


 こちらに気づき、嬉しそうに走り寄ってくる部下。彼の指した手の先にはこちらを睨みつけてくる女騎士たちがいます。

 一人はショートカットと強気そうなつり目が印象的な、お姉様と呼ばれていた女性。反対にもう一人は温和そうな顔立ちで、まだ幼さを感じさせる少女。どちらもオークでも分かる美人です。

 そんな彼女たちの衣服は所々が破れ、張りのありそうな白い柔肌を覗かせています。なるほど、女日照りな部下たちを欲情させるには十分でしょう。

 しかし私は彼らのように喜ぶことはできません。いえ、私もオスですから、女体に興味が無いわけではないのですが。

 というのも、私には他のオークには言えないある秘密があるのです。


「どうしたんですか隊長?さっきから黙りこくって」


 部下が不思議そうにこちらを伺っています。女体が目の前にあるのに何の反応も見せないことに不審に思ったのでしょう。

 ですが私はそんなことはお構いなしに、彼女たちを観察することに夢中になっています。彼女たちの肢体にではありません。お互いをかばう言動、お姉様と呼ぶ関係性、抱き合っている体勢。

 そう、何を隠そう私は――


(お、お互いを守る姉妹騎士…!尊い…!)


 女性同士の恋愛関係――百合が好きな百合豚だったのです。





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