55話 勝利の竜丼
「待って……! 2人とも、お願いだから……!」
どうにか開きかけたドアを背中で押して、再び封印を施す俺。
そんな必死の俺に、
俺は声を押し殺しながら早口で彼女たちへ状況を説明する。
「その、家族には【にじらいぶ】で働いてるのは秘密にしてて……だから、ほら、ビックリすると思う。うちの妹は【にじらいぶ】を知ってるらしいから……!」
「え、
「言ってなかと!? じゃあ、んー……勢いでバレたら暴露されるやろか?」
「その可能性は……うちの妹たちに限ってないと思うけど、ここは穏便に済ませたい……!」
「んんーじゃあ、妹さんへのご挨拶は変身を解けば大丈夫かな?」
「妹
んん、っと数瞬だけ考え込んだ2人はにんまり。
そして変身を解除した。
「あ、ありがとう」
「いえいえ」
「よかよ。それよりも挨拶してよか?」
「あ、ああ」
こうしてドア越しにいる義妹へと2人は扉を開く。
「うるさくしてしまってごめんなさい」
「ご迷惑ばおかけして申し訳なか」
「えっ……え!? お兄がこんなにっっっっ可愛い女の子を連れ込んでる!? しかも一人は
「おい、真白……言い方がひどすぎるだろ。ほら、うるさかったのは悪かったからさ。挨拶、挨拶してくれ」
「わっ、えっ、わあああー……あ、はい。えっと、こちらの兄がいつもお世話になってます。妹の
「こちらこそ
「白先輩には面倒みてもらろうてばっかで頭が上がらんと。うちは
「あー今日は楽曲作りを3人でしててさ。仕事の打ち合わせ? みたいなのも含まれてるって感じだ」
「ふ、ふーん……」
微妙に懐疑的な視線を飛ばしてくる義妹。
そんな真白へ、蒼や夜宵が気さくに話しかけてゆく。
「ましろちゃんかあ。かわいいね? 少しだけでもお話したいなあ」
「そ、そうだ! うちら作業続きで疲れたばい。一息入れたか!
「えっ、真白は別に……まだ編集もあるし……」
「お、それなら飯でも食べながら休憩するか? 俺が作るよ」
「「「おねがいします!」」」
三人は初対面なのに妙に息の合った返事をしたので俺は苦笑した。
◇
「ましろちゃんは双子キャラでVTuberをがんばってるんだあ。なんだか楽しそう」
「本当ん双子やけん、合いの手入るータイミングとかもわかってそうばいね」
「はい。でも、なんてゆうか自分たちにこれだーって武器がまだわからなくて」
なぜか真白と
キッチンリビングにあるソファに座りながら、けっこうな勢いでトークが花開いている。
「んんー、そういうの探すのって————」
「ばってん、リスナーへのサービス範囲は————」
「わっ、たしかに! 参考になります……! でもどうしてお二人はそんなに詳しいのですか?」
「あたしたちもそういうの好きでね————検証系とか————」
「よくリサーチしとるばい————特に暴露系の————」
「まだ登録者が1万5000人だけなので————」
「個人勢で1万人超えはすごいと思うし、それなら————」
「コラボとかは考えたりしいへんの? うちやったら————」
「そういう考え方もあるのですね、ふむふむ————実は次の企画で————」
さて。
俺の方は料理を始めますか。
今回のメニューはかつ丼!
俺たちの作曲が勝つんだ! という縁起も込めてドラゴン肉をふんだんに使用した、かつ丼にする。
まずは厚切りドラゴンロース肉にラップをかける。
そして上から麺棒で適度にトントンと叩き、ひっくり返してトントン。
この行程が肉のやわらかさをアップさせるのだ。
それから軽く両面に塩胡椒をかけて下味を施す。
次に薄力粉をまとわせ、溶き卵にひたし、パン粉をまぶす。
あとは揚げ油をフライパンに入れて火を通す。
きらきらと光る油が十分に熱しられたと判断したところで、ドラゴンロースを投入!
バチバチバチィィィっとロースの産声が上がる。
じゅぅぅぅぅわわああああっと重厚な音色が響けば、肉に
表面に次々と
5分ほど揚げたところで、クッキングペーパーに置いて油分を取る。
それから包丁でザクッザクッと、食べやすいサイズに切り分けてゆく。
「あとは秘伝のタレを作っていくう!」
まずは玉ねぎを薄切りにしてフライパンに投下。次にさっと水を追加して、醤油とみりん、砂糖と和風だしの素を融合!
「————【
黄金比率で極上タレの完成、からのぶくぶくと煮たせてゆく。
そして今回の主役!
衣をまとったドラゴンロースを、極上タレに乗っけてゆくうう。
さらに仕上げは、まろやかな味わいが引き立つ溶き卵の参戦だあああああ!
竜肉がじゅんわりと
そして偉大なる竜肉が舞い降りるにふわさしい場所は、無論ふっくらと炊きあがった純白に艶めくごはんだ。
おさまるべくして、ほっかほかのドラゴンロースがご光臨された。
「よし完成だ。おーい、できあがったぞー」
「それで、
「いないと、思います」
「
「好みかどうかは知りませんが……前にスマホで巨乳の裏アカ女子を見てて……ちょっとキモかったなって」
「銀条さん……つよし、ね」
「うちは発展途上ばい!」
「おい、
「え? だってほんとのことだもん」
「そうか。お前にだけはこの特製かつどんはやらん!」
「お
「っこの、お調子者め……」
そんなわけでざくっと肉厚、じゅわっと優勝! 竜かつ丼を3人分、テーブルへと置いてゆく。箸と麦茶の準備は
「……わああ……匂いもたまらなかったけど、ほわほわだあ……」
「……ふわりと雲みたいに卵が仕上がっとるばい」
「食べごたえすっごくありそう」
「「「いただきます!」」」
三人はまだ熱が冷めやらないかつ丼をふーふーしながら一心不乱に食べてゆく。
「はふっ……ふーっふーっ、んぐっ……深い、深いよぉ……カツのお味とお醤油の旨味がご飯にしみ込んでて、深いよぉ……」
「はぐっはぐっ……ふーっ、ふーっ、全部んお味が混じゃる、これが美味の原点や!」
「もぐもぐもぐ……もぐもぐ……ザクザクからのじゅわっとやわらかお肉……シンプルにカツがおいし! カツしか勝たん!」
どうやら三人は大変ご満足の様子。
お腹いっぱい幸せいっぱいといった表情で、麦茶を豪快に飲み干していた。
「なんだかお
「あたしたちも負けてられないね! がんがん編曲してこ!」
「
「やよちゃん……お兄は巨乳好きだよ……」
「きょ……くうぅ……
おい、
おまえ、ちょっとこっち来い。
兄妹水
◇
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【勝利の竜丼】★★☆
『赤竜フラムド』のロース肉を豪快な衣で、サックリと仕上げた絶品かつ丼。
どんな苦境に立たされても、このカツどんを味わえば尽きぬ情熱が芽生える。
運命神は言った。『運命に抗うなんて容易なことじゃ。このカツどんを食せばよい』
勝利の女神は言った。『約束された勝利? それはこのカツどんで結ばれよう』
基本効果……3時間、特殊
『情熱』……あらゆる困難においても心が折れない。精神系の状態異常を無効化する。
★……永久にステータス
★★……3時間、特殊
『英雄の燃焼』……
★★★……特殊
『赤竜の息吹き』……
【必要な調理力:290以上】
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