47話 竜と天導の錬金姫
【にじらいぶ】の告知により、レイドクエスト生配信を楽しみにしていたリスナーたちは、開幕から盛大な出オチをくらってしまう。
それもそのはずで————
上位冒険者パーティーとして、そこはかとない色気で注目度の高いケモ耳パーティー【
:なにコレどうゆう状況wwww
:【
:【
:真実は真逆だった件w
:腰が低いどころか頭が低いwww
:いや、おそらく【にじらいぶ】に謝罪するだけの何かをやらかしたんだろ
:だからって土下座までするかw
:さすがっす【にじらいぶ】
:初手から新参の圧倒的マウント配信ww
『あっ、これは違くてっ……えっ、どうしてなの!? ちょっ、頭を上げていただいてもよろしくて!?』
『きるる姉さま! 挨拶忘れてます! にゅっ、にゅにゅーっと登場☆ ぎっ』
『ぎんぴ! それどころじゃないって! もう竜たちが来てるよ!』
『な、なんとかせなやばか! 夜魔法————【キミの瞳に夜の
:カオスすぎるだろwww
:うおおおおおい!? マジで来てるぞデカいのが!
:竜だあああああ!
:かっけえな
:いや怖すぎ
:何気にヤミヤミの対応が一番早かったなw
:竜が頭から城壁にゴツンって
:視界を奪ったんか?
:揺れる揺れるw
:ぎんにゅうさんナイスアングル
:よく倒壊しないな、城
:俺の理性は決壊した。ぶるんぶるんやんぎんにゅう
:めっちゃ瓦礫が吹き飛んでる件
:ヤミヤミって魔法つかえるの?
:ヤミたんしか勝たん
:【
:
:似合ってるけど
:【にじらいぶ】をかばってるように見えるのは俺だけ?
:なんか【にじらいぶ】のみんなもたついてないか?
『さ、さむいわ……』
『身体が
『ピキピキするね』
『帰りたか。もう寝たかあ』
:よくみたら
:何が原因なんだ?
:おい、あっちの方……めっちゃでかい龍いないか?
:飛ぶタイプの奴じゃないんだな
:巨大な白蛇ってところか?
:うおっ、なんか全身鎧のやつが槍突き刺してね!?
:流星みたいに突っ込んでくな!?
:人間じみた動きじゃないぞ……
:一人、二人……たった三人でアレを相手にしてんのか
:
:
『【竜喰いの騎士】たちが【
『はいです! みんな、僕の後ろに来るです———【
『ありがとぎんぴ! 蒼天魔法————【
『竜も少しは出血したわね! 吸血魔法————【
『————【
それぞれ魔法少女たちが、スキルや魔法を駆使して竜たちの猛攻をどうにか防いでゆく。その画角は迫力満点であり、一歩でも間違えればすぐに瓦解しそうなほどの危険をはらんでいた。
九尾やフェンリルといった超常的な味方も、迫り来る竜たちの対応に追われ魔法少女たちの援護までなかなか手が届かない。
しかし、彼女たちにはナナシちゃんがいる。
『【神竜の火遊び】————【
竜たちが吹き散らかす豪炎を、暴風で以て制す。
瞬時に小さな炎玉へと融合させ、今や視界の隅でいくつもの炎玉がお手玉のように浮遊している。それらが時折、竜たちの顔面に向かって飛翔すると猛烈な勢いで炸裂し、頭部ごと一撃で吹き飛んでゆく。
『————【
そして先ほどまで画面のすぐ横に迫っていた巨大な竜が、なぜか一瞬で卵になってしまうという不可解な現象が何度か起きている。
それらを九尾が嬉しそうに持ち去って行くので、リスナーたちは九尾が何か恐ろしい魔法を行使しているに違いないと予想した。
:熱いな
:竜VS魔法少女か
:魔法少女たちが必死に戦う姿がたまらない
:無理だけはしてほしくないけど……この状況じゃ必死だよな
:てかナナシちゃんも魔法少女だって言われても納得だわw
:何気にヤミヤミもちゃっかり魔法つかってるよな?
:善戦してるけど、いつも敵に飛び込むきるるんとそらちーが動かないのはなんで?
:今日は竜の攻撃をいなして、耐え忍ぶって感じだよな
:寒いって言ってなかったか?
:凍傷で動きが鈍ってるから前に出るのは危険とか?
:決定力がいまいち足りてない感じ
:火力不足感がいなめないな
氷霜と炎熱が交互に繰り返される。
その理由は常に周囲一帯に影響を及ぼす【
これにより魔法少女たちは竜たちの炎で熱くなったかと思えば、すぐに身体を冷やされるといったジレンマを抱え、接近戦の最中に動きが緩慢になったら命取りだと判断してなかなか前に出れなかった。
:おいおい今度は雪まで降ってきたぞ
:さすがに寒暖差が激しいと戦い辛そうだな……
:でもみんなの動きが少し良くなった気がする
:これなら
『この暖かい雪……【夢の雪国ドリームスノウ】と同じものね?』
『【雪羊のチーズ牛丼】で習得できる【灯る雪】です』
『あたしたちは食べてないから、発動してるのってもしかして……』
『【百騎夜行】が
『【にじらいぶ】のみんな! 大丈夫か!?』
『ちょっと、タロ! 先走らない!』
『早い話、心配症がすぎる。彼女たちも立派な高位パーティーだ』
:んっ? 他の高位パーティーか?
:おいおい【
:うわ、空中で逆さまから反転して着地とか化物だなw
:銀の長髪、幼い容貌、まごうことなき美少女……【
:ってことは、あの2人が【
:めっちゃ動きが俊敏じゃね?
:さすがでござるな
『んん、あの竜の弱点属性は————魔導錬金————【|叡智の四角形《ルービック・アーキテクト】』
その独り言は【
空中を疾駆する【
『こっちに来い————【
【百騎夜行】のユウが敵の注目を集め、その鈍重すぎる大盾で竜の
『横殴りはいただくぞ! 【
竜の逸れた頭部へ、目にも止まらぬ拳を振るったのはコウだ。
容赦のない鉄拳が八発ほど炸裂すれば、金属を削るような悲鳴が上がる。
だが、さすがの竜もタフだ。
片眼がえぐれて吹き飛んでいるにも関わらず、みなぎる闘志は未だ健在らしい。
しかし【
もちろん、その銃口は竜へと向けられる。
『時間稼ぎ、さんきゅー!
激しい銃声が虚空にこだます。
いや、銃声だけはない。
『————
聖句のような詠唱が弾丸を通じて周囲に響き渡る。
それはまさに天の
『————【
弾丸に込められた魔法、魔弾が竜に着弾すれば大岩が芽吹く。それら大岩はことごとくを圧殺する勢いで周囲の竜たちへ激突を繰り返す。
まさに岩の嵐だ。
『た、助かったわ。このお礼は必ず差し上げるわ!』
『はわわわ……すごい、です』
『これはとっても楽になったね』
『竜たちん勢いが弱まったばい!』
竜たちがひるみ、猛攻が止めば【にじらいぶ】の形勢がだいぶ良くなった。
『いや、俺たちがこうも身軽に動けるのはどうやら君たちのおかげらしい。この通り、炎も氷もへっちゃらだ!』
『早い話、貸し借りはなしってな』
『料理バフには感謝してるよ。だからここのメインは僕たちに任せてくれ!』
:あの【百騎夜行】に貸しがあった!?
:【
:俺にはわかる。多分ナナシちゃんだろうなw
:わかる
:きっと飯テロかましたんだろう
:【にじらいぶ】の
:今日も優秀な執事っぷりに感服ですわ
:俺らの推しを支えてくれてありがとおおおおお!
:てか【百騎夜行】の反撃えぐいな
:退散していく竜も出てきてるぞ
:いける! いけるぞ!
:もう少しだ! がんばれええええええ
こうして竜との激戦が終わる頃には、【にじらいぶ】の冒険者としての地位は確固たるものに昇格していた。
魔法少女×VTuber×冒険者。
彼女たちの活躍の場は飛躍的に広がりつつあった。
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