ナハトムジークの追想
ぬん!
第1話
夜のマンションの屋上。
イヤフォン越しに、奏では音楽プレイヤーから流れてくる音楽に耳を傾けていた。
奏:「。. •*¨*•♬✧」
● ● ●
楓:「今晩は」
しばらくすると、唐突に声をかけられる。
奏:「ん?あぁ、楓か。よう」
振り返る奏。
いつの間にか、背後に楓が立っていた。
楓:「いちいち驚かなくなったね」
奏:「まぁ、そりゃな」
楓:「決まって私が現れるのは」
奏:「俺がここで、音楽を聴いてるとき」
楓:「ふふっ」
奏:「はははっ」
お互いに顔を見合わせて笑い合う。
楓は奏での横にやって来ると、音楽プレイヤーを指差した。
楓:「今日は、何聴いてるの?」
奏:「推しバンの新曲」
楓:「名前なんだっけ?」
奏:「Nachtmusik(ナハトムジーク)」
あぁ、と納得した顔をする楓。
楓:「奏、昔っから、そのバンド好きだよね。高校の時、授業中に聴いてたやつでしょ? 先生にバレない様に、イヤフォンでさ」
うっ、と苦い顔を浮かべる奏。
奏:「……何で知ってるのさ?」
楓:「となりの席だったんだよ?音、シャカシャカ小さく聴こえてた」
奏:「あー、ね。なるほど」
楓:「ねぇ、気になってたんだけど。どうしてそのバンドが好きなの? 言い方悪いけど、あんまり有名ではないじゃん? 今は知らないけど」
奏:「そうだな。事実、有名ではないよ。今もインディーズで頑張ってるし。……まぁ、知る人ぞ知るバンド、って感じ」
楓:「じゃあ、どうして?」
奏:「どうしてだろうなぁ……。なんか、惹かれるんだよね。バンド全体の雰囲気って言うか、独特の世界観がさ。Nachtmusik(ナハトムジーク)って言う言葉の羅列も、結構お気に入り」
楓:「響き良いよね。ナハトムジークって、なんか意味あるんだっけ?」
奏:「日本語で"夜の音楽"」
楓:「へぇ? そんな意味なんだ」
奏:「ドイツ語のNacht(ナクト)、musik(ムジーク)って単語を、繋げた合成語だったはず。確か」
楓:「さすがに好きなバンドだけあって、よく調べてるねぇ」
奏:「だろ?」
楓:「うん」
奏:「もっと流行ってほしいんだけどなぁ。良曲、多いし」
楓:「メジャーデビューしたら、お祝いしなきゃね」
奏:「そうだな」
楓:「そうなったら、またここで音楽を聴くの?」
奏:「聴くだろうねぇ。そうでなくても、これは日課だし」
楓:「うちのマンションの屋上で、音楽を聴くのが?」
奏:「そう」
楓:「ふーん……。前々から思ってたけど、変わった日課だよね。どうして、他の場所じゃダメなの?」
奏:「別に、他のとこでもいいんだけどさ」
楓:「じゃあ、なんでここに拘るの?」
奏:「ここなら、楓に会えるから」
楓:「……私に?」
奏:「おう」
奏は静かに頷き、そっぽを向く。
それを見て、楓はふふっと微笑む。
楓:「嬉しい」
奏:「……っ。ほらほら、楓。お前も聴けよ」
照れ隠し気味に、奏はイヤフォンの片側を差し出す。
楓:「わーい、ありがと!」
イヤフォンを受け取り、音楽に耳を傾ける楓。
『。. •*¨*•♬✧。. •*¨*•♬✧』
楓:「これは、Nachtmusik(ナハトムジーク)の……?」
奏:「ん。あぁ、曲タイ?」
楓:「そうそう」
奏:「えっとね、アルファベットで『CryNe(クライネ)』」
楓:「……素敵な曲」
奏:「個人的には、愛音(あいね)さんの最高傑作だと思ってる」
楓:「愛音さん?」
奏:「あぁ、ボーカル。Nachtmusik(ナハトムジーク)の」
楓:「そういう名前なんだ」
奏:「本名かは知らないけどね。公表してないし」
楓:「ふぅん」
曲に聴き入るように、目を閉じる楓。
『•*¨*•.¸¸🌙✩*・゚♬•*¨*•.¸¸🎶✩*・゚』
楓:「……綺麗な歌声」
奏:「透き通ってるよな」
楓:「うん。これは奏が好きになるのも頷ける」
奏:「もっと評価されてほしいんだけど。如何(いかん)せん、癖が強くってね」
楓:「癖?」
奏:「この人さ。せっかく綺麗な声してるのに、歌ってるとき以外は全然喋らないんだぜ? 一言も」
楓:「えっ、嘘」
奏:「ほんとほんと。役作りなのか、なんなのか。とにかく話さねぇの」
楓:「うーん、シャイな方なのかも?」
奏:「ライブとかでもさ。MCとかは他のメンバーに任せてて、当人は目配せで会話に参加する、っていう感じ」
楓:「へぇ……。徹底してるんだね」
奏:「ま、そんなミステリアスなところも? ファンとしては一押しなんだけどな!」
楓:「さいですかぁ〜」
奏:「ってな理由(わけ)だから、大衆受けは微妙なんだ。でも、俺みたいな偏屈な野郎には頗るぶっ刺さるのよ。そういうバンド」
楓:「ちょっと、やめてよ。それ、私も偏屈ってことになっちゃうじゃない」
むぅ、っと頬を膨らませる楓。
奏は驚いたように彼女に視線をやる。
奏:「え、なに? 楓、Nachtmusik(ナハトムジーク)気に入ってくれたの?」
楓:「うん。わりと!」
奏:「おっ、いいねぇ。これを機会にハマってけ?」
楓:「ふふ。そしたら、奏に全部教わっていこうかな? 時間があるうちに」
一瞬の静寂。
奏:「……おう」
楓:「あ、ここサビ?」
奏:「ん、サビだな。詩が良いだろ?」
『✤॰ॱ.•*¨*•.¸¸♬✤。. •*¨*•♬✧』
楓:「"ナハトムジークは続く、けれど永遠ではない。いつか終わりが訪れる。前を向こう。――明けない夜はない"」
流れてくる曲に合わせて、口遊む楓。
奏:「ちなみに、これ作詞も愛音さんな」
楓:「わぉ。多才なんだね」
奏:「音楽、ってジャンルにステータス全振りしてんのかもな」
楓:「……なんか印象に残る。ここの歌詞」
奏:「勝手な考察なんだけどさ。『CryNe(クライネ)』を日本語に訳すと。Cryは"泣く"だろ?」
楓:「うん」
奏:「そんで Ne っていうのは、これはもうローマ字読みして"ね"だと思うのよ」
奏の言葉に、ほんの少し考える素振りをみせる楓。やがて思い付いたように、
楓:「……泣くね?」
奏:「そ。合わせると、"泣くね"になるんだ。もしくはCryをそのまま、"暗い"って捉えることもできる」
楓:「えっと……?」
奏:「あぁ、暗闇的なニュアンスの"暗い"な。Nachtmusik(ナハトムジーク)はその名の通り、夜をテーマにした曲をよく作るんだ」
楓:「"夜の音楽"ってバンド名だもんねぇ」
奏:「この『CryNe(クライネ)』はさ。なんていうか……。夜の帳が下りて、漠然とした焦燥感や不安に襲われて、泣いちゃうこともあるかもしれない。暗い気分に陥ることも、あるかもしれない。……だけど、明けない夜はないんだから、大丈夫なんだよ? って励ましてくれてる曲な気がするんだ。俺なりの解釈だけどね」
楓:「…………」
じっと奏を見上げる楓。
透き通った凛とした瞳が、真っ直ぐに奏に向いている。
奏:「ん。楓?」
声をかけられ、楓は我に返ったように首を横に振った。
楓:「ううん。……奏は、すごいなぁって」
奏:「え、何が?」
楓:「好きなものに熱心になれて、そういう風に夢中に考察できるのがさ」
奏:「いや、大したことないだろ。これぐらい」
楓:「大したことあるよ。少なくとも、私から見たら」
奏:「そうかぁ……?」
楓:「そうだよ。すごい」
それから楓は、ふっと寂しそうな表情を浮かべた。
楓:「私も。もう少し夢中になれるものがあったら……ちゃんとした高校生活、送れてたのかなぁ?」
奏:「…………」
楓:「どうなんだろうね」
刹那、ヒュルリと冷たい風が屋上を吹き抜けた。
奏は取り繕うように咳払いをする。
奏:「……楓が学校来なくなったのって、いつ頃からだっけ?」
楓:「高一の冬」
奏:「あー。それじゃあ高二からは、完全に御隠居さんか」
楓:「御隠居って、どんな言い方よ……。引きこもりで良いでしょ、そこは?」
奏:「唐突だったよな。来なくなったの」
楓:「そうかな?」
奏:「特に、イジメとか受けてたわけじゃないだろ?」
楓:「身の回りに敵を作らないよう、努力してた自負はあるけど」
奏:「だよなぁ。女友達と仲良さげに話してたし。愛嬌振りまいてたもんな、楓」
楓:「ちょっと、何で知ってるのよ」
奏:「そりゃね。となりの席でしたから」
楓:「休み時間とか、いつも机に突っ伏して寝てたじゃん。聞き耳でも立ててた?」
奏:「声がデカいんだよ」
楓:「ひっどい!」
奏:「ははっ」
楓:「……学校では」
奏:「ん?」
楓:「学校では、あんまり話さなかったよね、私たち」
奏:「あー、確かに。言われてみれば」
楓:「放課後。二人っきりになると、話してたけどね」
奏:「お互い用事もないのに、遅い時間まで学校いたよな。帰宅部だったのにさ」
楓:「私は勉強とかして居座ってたけど、奏に至っては居眠りの延長じゃん」
奏:「家帰っても、やる事一緒だったしな。Nachtmusik(ナハトムジーク)の曲、垂れ流しにしたまま眠りこけるの」
楓:「学校も家も、似たようなものだって?」
奏:「そう。俺にとって、教室って言う箱みたいな空間は、家の部屋と同義だったね」
楓:「結構な言い草なこと。……じゃあ、どっちで過ごしてても、あんまり変わらなかったんだ。奏は」
奏:「楓は、そうじゃなかった?」
楓:「うーん……。家より教室の方が勉強進むこともあったし、その逆の時もあったし。その時のモチベーションかな」
奏:「なるほどね。確かに、早々に帰ってた時もあったな、楓」
楓:「いつも寝過ごしてた誰かさんとは違って、考えて動いてますから」
奏:「さいですか。……ただ一つ、学校の空間ってのは有限だからさ? 俺も見回りの先生に見つかったら、早く帰れって注意されてたよ」
楓:「ふふっ、当たり前でしょうに」
奏:「その辺は、家の方が楽だったな。両親は放任主義だったから。夕飯食わずに部屋で篭城してても、な〜んにも言ってこないし。それで大体、深夜帯にお腹空いて起きてさ? リビング行くと、さめた夕飯にラップがしてあって。置き手紙で"チンして食べてね"って、走り書きされてあんの」
楓:「羨ましいなぁ」
奏:「楓の両親って、厳しかったんだっけ?」
楓:「うん。引きこもった当初なんて、ほんと大変だったよ」
奏:「あんまり思い出したくないなら、無理に話すこともないぞ」
楓:「……っていうか、正直あんまり覚えてないんだよね。もう数年前の話だし。……今じゃ、咎めてもこないから」
奏:「……そりゃな、咎めようがないし」
楓:「ふふ」
奏:「笑い事じゃねぇよ」
楓:「ごめん」
気まずい空気が場に流れる。
奏:「いや、こっちこそ、悪い」
楓:「……奏、いくつになったんだっけ?」
奏:「二十一」
楓:「大人だぁ」
奏:「クソガキだよ、学生なんて」
楓:「私からしたら大人だよ。ちゃんと通学して、授業にも出席して。……本当に偉い」
奏:「授業、まともに聞いてないけどな」
楓:「Nachtmusik(ナハトムジーク)は、ちゃんと聴いてるんでしょ?」
奏:「勿の論」
楓:「だと思った」
奏:「単位さえ落とさなきゃいいんだよ。授業なんか、テキトーなぐらいがちょうどいい」
楓:「して、その結果は?」
奏:「既に、卒業が危ういです」
楓:「バーカ」
奏:「返す言葉も見つかりません、ってね」
顔を見合わせ、どちらからともなく笑い合う二人。
『゚.*・。゚♬*゜。. •*¨*•♬✧•*¨*•.¸¸♬︎』
楓:「……あ、次の曲に移った」
奏:「これもいい曲だよ」
楓:「これは?」
奏:「『夜に浸透できれば』。これも、愛音さん作詞」
楓:「小説にありそうなタイトル」
奏:「この、さ。夜の闇に溶け込みたい、っていうニュアンス、すげぇ共感できるんだよなぁ」
楓:「そうなの?」
奏:「たまに湧かない?漠然と、なにもかも投げ出して、解き放たれたい気持ちとか」
楓:「んー……」
奏:「大抵、そういう変なこと考え始めるのって真夜中なんだよ。缶ビール片手にさ、煙草ふかしてると。……"夜"が優しく手招きしてくれるんだ。これがまた、甘美な誘惑でさ? ついつい、手を伸ばしたくなるんだ。"夜"に体をうずめて、深く深く、どこまでも沈んで。浸って」
楓:「奏、煙草とか吸うんだ?」
奏:「あぁ、吸うよ」
楓:「ビールも飲むんだね」
奏:「うん、飲む」
楓:「不良だ」
奏:「二十歳過ぎてますから」
楓:「あ、そっか」
奏:「おいおい……。楓にとっての俺の記憶は、高校までで止まってるのかぁ?」
楓:「ふふ、そうだね」
奏:「たまげた」
楓:「……仕方ないよ。私にとっての奏は、高一の時に教室で顔合わせてた、あの奏なんだもん。いつまでも」
奏:「ん、そっか。こんな荒んだ輩じゃなかったよな、あの頃は」
楓:「荒んではいないでしょ」
奏:「どうだかな」
楓:「あ、でも」
奏:「ん?」
楓:「捻くれてはいる。そこは、今も昔も、変わってないよ」
奏:「……ぷっ、ははは。それ、貶してる?」
楓:「ふふ。さて、どうでしょう?」
奏:「笑って誤魔化すな、よっ!」
言うが早いか、奏は楓の耳元からイヤフォンを奪い去る。
楓:「あぁ、ちょっと! 聴いてたのに……」
奏:「今日はここまで。充電も尽きそうだしな」
楓:「バッテリー、持ってくればよかったじゃん」
奏:「そしたら際限なく居座っちまうだろうが」
楓:「良いじゃん。居なよ」
奏:「なんだよ、寂しいのか?」
楓:「うん」
奏:「……やけに素直だな」
楓:「この次は、いつになるの?」
奏:「すぐ来るよ」
楓:「日課のわりには、毎日来ないじゃん」
奏:「これでも留年しないために、多少は勉学に勤しんでいるのですよ」
楓:「嘘」
奏:「本当だよ。レポート課題に追われる日々。あぁ、辛い辛い」
楓:「で、本当のところは?」
奏:「……講師に媚び売るので忙しい。」
楓:「バーカ」
奏:「面目ない」
楓:「しっかりしてよ。タイミングもあるんだからね、こうして会うの」
奏:「あ~、……前々から思ってたんだけどさ」
楓:「なに?」
奏:「楓と会えてるこの状況、って、もしかしなくても奇跡だったりする?」
楓:「もしかしなくても、奇跡だよ」
一瞬の間があり、奏は鼻頭を掻いた。
奏:「考えないようにしてたけど、いつか、訪れたりするのかな? 音楽聞いてても、会えなくなる日って」
楓:「たぶん」
奏:「たぶんって……。随分と曖昧な返答なことで」
楓:「確信は持てないから。でも、そんな予感はしてるの」
奏:「…………」
楓:「だから後悔しないように、たくさん喋っとこうよ。となりの席同士なのに、あんまり話してこなかった分もさ」
奏:「遅いよ」
楓:「え?」
奏:「俺はずっと後悔してる。……楓が不登校になった日から。今日まで、ずっと」
楓:「大袈裟だよ」
奏:「もっと会話しておけばよかった」
楓:「今、してるじゃん」
奏:「在学中の“あの頃の楓”と、だよ」
楓:「変わらないと思うけどなぁ。今も、あの頃も」
奏:「全然違うって」
楓:「そうかな?」
奏:「そうだよ」
奏は軽いため息を吐いた。
奏:「Nachtmusik(ナハトムジーク)、高一の時に聴かせてやれたら、よかったんだけどなぁ……」
楓:「どうして?」
奏:「そしたらきっと、こんな屋上で、俺は感傷に浸る必要なんてなかった」
楓:「うーん、……でも、未来は一緒だったと思うな」
奏:「そうか?」
楓:「そうだよ」
奏:「……なぁ、何か悩みでもあったのか?」
楓:「……さぁね」
奏:「結局のとこ、決め手は?」
楓:「ご想像にお任せしようかな」
奏:「…………」
楓:「ねぇ」
奏:「ん?」
楓:「Nachtmusik(ナハトムジーク)の、『CryNe(クライネ)』。もう一回、聴かせて?」
奏:「おいおい。充電切れそう、って言っただろ?」
楓:「良いじゃん。ほら、夜もそう長くないんだからさ」
奏:「ん、だな。……もう明朝って頃合いか」
楓:「夜の魔法が覚めないうちにさ。ね? お願い」
奏:「仕方ねぇなぁ。ほら」
奏、再びイヤフォンの片方を楓に渡す。
楓:「やった。ありがとう」
奏:「最初から聴くか?」
楓:「サビからでいいよ」
奏:「わかった」
音楽プレイヤーが再生される。
楓はそっと目を閉じ、曲に耳を傾けている。
楓:「うん。やっぱり好きだな。詩が刺さる」
奏:「そいつは、オススメした甲斐があるってもんだ」
楓:「"ナハトムジークは続く、けれど永遠ではない。いつか終わりが訪れる"」
やがて、楓は目を開くと、奏に顔を向けた。
楓:「奏」
奏:「ん?」
楓:「私を忘れないでね。記憶の片隅にでもいいから、いつまでも覚えていて」
奏:「バカ。忘れるかよ。その為の追想なんだ」
楓:「追想?」
奏:「さっきも言ったろ。ここで感傷に浸るってのは、それ即(すなわ)ち追想なんだよ。……楓が手の届かないところにいっちまった、このマンションの屋上で、Nachtmusik(ナハトムジーク)を聴くことはな」
楓:「ナハトムジークの追想、って?」
奏:「ははっ、カッコいいな」
楓:「ふふ」
奏:「あ」
日が昇り始める。
夜の暗闇が、徐々に薄れていく。
奏:「夜明けだ。楓、そろそろ」
声をかけた時には、楓の姿は消えていた。
貸していた片方のイヤフォンは、ぶらぶらと垂れ下がっている。
奏:「……もういねぇか。また来てやらないとな。せっかく、気に入ってくれたんだから。Nachtmusik(ナハトムジーク)」
静寂。
奏:「さぁ、"前を向こう。――明けない夜はない"」
音楽プレイヤーの充電が切れる。
陽光が、優しく辺りを包む。
ナハトムジークの追想 ぬん! @honhatomodati
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