女 帝国城塞の光禁城①
パクスコーレ帝国には
中央にある門、キャッスルゲートをくぐると中央には広大な広場があり、左側には王への貢物や王の家族への俸禄を司る部署と宝物殿。妃や王子達の食封を司る食糧庫などがある。広場の右側には大臣達が政務を行う文華殿や帝国の史料殿などがある。
中央の広場を進むと最初にあるのが 『王城』 となる。
三階建ての大きな城で重要な臣下との集まりや玉座の間などがある。
その奥には 『暇殿』 という二階建ての宮殿があり、ここでは王が政務を行ったり王城での仕事の合間に休んだりする。
そして、その奥に逆凹型に広がるのが、王や皇后、妃達、そして、王の子供達が暮らす 皇宮 『光禁城』 になる。
グレースや王女選抜を勝ち抜いた王女達はそれぞれが皇宮で暮らし始める事となった。その中でも上位四名の王の養女達には宮殿が与えられた。
アケーシャ宮殿 :グレース レガリオ
マグノリア宮殿:リリム ダンジョン
バルンストック宮殿 :モネ ロレーヌ
レッドエルダー宮殿:ジャド
四つの二階建ての宮殿を貰った王女は、その場所に親交のある王女を住まわせる事も認められている。 むしろ全員に宮殿が与えられなかったのは王女達に自由に交流をさせる目的もあった。
グレースが宮殿の中を見て回りその豪華さにはしゃいでいる。
「ミュウさん。実家の広さは劣るけど、私とあなた達が住むには大きすぎるわね。豪華なのに落ち着いていて、とっても綺麗な宮殿だわ。」
グレースの言葉を聞き侍女ミュウの顔色が青ざめる。
「グレース王女殿下。お願いですから年上だからと敬称を付けるのはおやめ下さい。ここは光禁城です。誰かに聞かれたら私が不敬であると判断されかねませんよ。」
「ええー。誰もいない所であなたを敬っても別に良いじゃない。」
「よくありません。私が選ばれたのはグレース王女殿下に知識やマナー、礼儀作法を教える為でもあります。敬うというのでしたら、どうか私達侍女を使い、王女殿下らしく気品を持ってお過ごし下さい。」
「お父様が選んだだけあって硬いわね。分かったわよ。でも、私達だけの時は楽しくしましょう。王女殿下っていうのはどうにかならない? うーん。さん……いや、せめてグレース様かグレース殿下にしてくれないかしら?」
「グレース殿下。畏まりました。」
「グレース殿下。客が来たぞ。」
ミュウは、更に落胆していた。仕事を受けるべきではなかったのかもしれないとさえ思っている。
「ゾーイ。殿下に向かってその言葉は何ですか? 気を付けなさい。」
「ミュウさん。私達だけなんだし別に良いじゃねーか。」
「ゾーイ。あなたは戦闘の才能を買われ侍女となった。でも、ここは伯爵家ではなく光禁城なのですよ。無礼な言葉を使っただけで簡単に殺されるような場所なのです。」
「はいはい。分かりましたよ。グレース殿下。お客様ですよ。」
殺伐とした雰囲気のミュウに代わりグレースがゾーイに問いかける。
「ゾーイ。それで、誰が来たのかしら?」
「ネウレザ王女です。」
グレースはゾーイの言葉にミュウからのお叱りを忘れ、嬉しくなり笑っていた。王女選抜で仲良くなったネウレザがさっそく会いに来たのだ。
「すぐに通してちょうだい。」
アケーシャ宮殿に最初の来客が訪れた。
ネウレザ ステュアートは伯爵令嬢で今はグレースと同じネウレザ王女となった。ゾーイに通されると走ってグレースの部屋にやって来る。
「グレース。私もこのアケーシャ宮殿に住まわせてくれないかしら? 私はあなたのおかげで皇后様に選んで貰えた。恩返しをしたいし、あなたとはお近づきになりたいの。」
「もちろん歓迎するわ。あともうひとり声を掛けたい人がいるんだけど、良いかしら?」
「誰? リリム様はマグノリア宮殿を貰っているし。」
その問いでグレースは真剣な表情に変わる。
「おそらく元平民の子。モネに虐められている所を偶然見てしまったの。敵の敵は味方とも言うし、放ってはおけないでしょ。」
「モネ様と敵対するという部分には賛同は出来ないけど、仲間を作るという点では良いと思うわ。」
――コトは、少女達の言葉に激しく動揺していた。どこにも属さず、なるべくは波風を立てないように過ごしていたかった。でも、結果はグレースに誘われてしまった。唯一最後の審査を受ける前に合格した才女。最も大きな派閥となるであろうグレース レガリオからの誘いには断る事が出来なかった。
「お誘い頂きありがとうございます。これから、よろしくお願いします。」
コトは本当は断りたい。だけどコトはこうなってしまった以上、恐ろしくて断れない。そして、グレースとネウレザに精一杯の苦笑いをした。二人はその言葉と表情を好意と捉える。
「うんうん。ネウレザ。やっぱり喜んでくれたようで良かったわね。」
「そうだねグレース。さっそく宮殿に戻ってお茶会でもしましょうよ。私達、仲良し三姉妹になれるかしら。」
だが、そのまま三人のお茶会にはならなかった。
アカーシャ宮殿に戻った時、更なる来客が二人、グレースを待ち構えていたのだ。
一人目は
ロートリンゲン伯爵を叔父に持つ『第三王子 サッズ』。
ロートリンゲン伯爵家はモネ ヴェントス ロレーヌのいるロレーヌ公爵家の分家として有名だ。即ち、モネやその兄。婚約破棄をした顔も知らない婚約者や破談を計画した親族まで。全てがサッズを支援する後ろ盾だった。
グレースは父親から、特にサッズには気を付けろとの忠告を貰っている。
二人目は
『第六王子 フェイ』。
こちらの後ろ盾はブロイ侯爵家。派閥はないが当主が従二位で帝国の右大臣でもある。 ただしレムリア公爵家及び分家のレガリオ伯爵家とは良好な関係である。
そして、最初にグレースを助けた『第十王子 フィア』の同腹の兄でもあり、顔がそっくりだった。
フェイ自身も第二審査では『第五王子 ウィズ』と共にグレースが討伐出来なかったモンスターを倒してくれた。
まずは、第三王子のサッズが話を切り出した。
「グレース。俺は君と仲良くしたいんだ。今後の約束を貰いに来た。」
グレースがそれに答える前に、フェイが話に割り込んだ。
「俺の要件も兄上とおおむね一緒だ。ただ、ひとつだけ違うのは、俺は友として次に会う約束がしたい。」
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