男 再会③

うららがシャワーを浴びてスッキリした所で二人はテーブルに座った。最初の作戦会議である。

「まず、俺には行きたい場所がある。出来ればそこを拠点として夏さんを探したいんだが、大陸北端のここの国とは正反対の場所、大陸の南にある国なんだ。」


「わかりました。私にはこの世界の事は分からないのでついていきます。」


うららの返事に、春人は固まっている。これから一緒にいるとして、ずっとよそよそしい態度をされるのは疲れると考えたのだ。


「うらら。これからしばらくは行動を共にするんだから、敬語はいらないよ。」


うららもそれを一瞬で理解する。これからこの異世界を二人だけで旅するのだ。うららとしてはそれでも問題は無いが、春人が嫌がっている以上春人の気持ちを優先させたい。うららの方が一緒にいる事をお願いをしているのだ。


「春人さん分かったわ。最初に言ったように私に出来る事は戦闘しかないの。その代わりに絶対にあなたを守ってみせる。」


「ありがとな。うららはその槍で、この世界のモンスターともう戦ったのか? 武器には、オドというものを流さないと攻撃力が出ないらしいのだが?」


「襲い掛かってくる魔物は全て討伐したわ。オドというものは分からないけど、戦い方はなぜか理解している。」


「ちょっと情報を見せてくれ。【鑑定】」


「春人さん鑑定なんて使えるの? それって、国が私達にやったやつでしょ? 貴重なものって言ってた気がするけど。」


「俺のはそれよりも詳しく分かるみたい。あの鑑定は10倍までしか測れないみたいよ。なるほど。俺には戦闘用の才能が無かったから、もしかすると、全ての武器に精通するという武戦技とやらの影響かもな。」



『愛媛うらら 17歳 Lv32 称号 戦女神 

 属性 天属性  


 ≪ 天賦の才 ≫

 全言語理解

 一騎当千  - 絶 -

 武戦技  - Ⅰ -

 戦威魔法  - Ⅰ -   

 戦気完全開放 - 超 - 


 ステータス 

 HP 5,040,000

 MP 2,541,000

 SP  2,541,000

 CP 100

 スタミナ 60


 力  1,575,000

 魔  1,575,000

 守  1,575,000

 精  1,575,000

 器  1,575,000

 早  1,575,000

 運  1,575,000 』


春人はそのステータスの部分まで見るとその鑑定結果に驚いている。戦闘に自信を持っているようだったが、正直ここまでの数値だとは思っていなかった。あれだけたくさん天賦の才を付けたレイアを上回っている。


「ん? 待て待て。レイアよりも強いの? ……なるほど。レベルの差と戦気解放-超-の効果か。Xから超に一段階上げると飛躍的に倍率が高まるのか。たしかに格闘遊戯のボーナスキャラで、そこは仏にしか上げられないもんな。となると一騎当千- 絶 -の攻撃威力上昇値が怖すぎる。超<真<極<絶<無でⅩ以上の四段階目の強化値だもんな。 」


「それはそうでしょ。レイアちゃんってまだ子供よね。」


「……それはそうなんだけど。レイアもかなり強化をしたからさ。あれじゃ足りなかったかな? まあ、今更言っても仕方ないか。うららは素早さが凄いから移動には問題ないね。乗り物には頼らずに最短で南下しよう。」


「うん。分かったわ。私はお風呂とトイレがあるだけで本当に全然違うもの。春人さんに再会出来て本当に良かった。」


「大げさだな。この世界でも街に行けばいくらでもあるでしょ。」


「それはそうだと思うけど、この世界の生活レベルは低いと思う。あっ! そうそう。春人さんに会った時の為に食事をかなり制限していたの。春人さんから貰ったものだけど食べるわよね?」


「さっき食べたばかりだし、うららに返した物だし俺はいらないよ。制限していたなら全部うららが食べれば? モンスターを討伐して肉だけはたくさん獲得したからな。」


うららは春人の言葉が以外過ぎて驚いている。


「それはありがたいけど。春人さんはモンスターの肉を食べるの?」


「ああ。さっきは豚の生姜焼きと豚汁を食べたぞ。」


うららは日本と同じ食事のメニューにもっと驚いた。


「……異世界の素材でそんなものが食べられるのね。」


「俺の能力は生活特化みたいだから、日本にいた頃とほぼ変わらない生活が出来ると思うぞ。モンスターを討伐してくれるなら、食事だけは期待してくれて良い。」


うららは、異世界に来てはじめて希望を持った。食生活に風呂とトイレ。日本と同じ生活レベルならこれ以上ない程の環境だ。


「……本当に良かった。春人さん。私の事を見捨てないでね。それって一番良い能力じゃない。私頑張ってモンスターを倒すわ。」


「サンキューな。夏さんの娘を見捨てるわけがない。そうだ。ルルシア聖皇国を抜けたらアゴラ王国で冒険者ギルドに登録しよう。ギルドではモンスターの素材を売れるらしい。冒険者登録をしてカードを発行して貰ったら、それは世界中で使えるしな。ただ、俺が討伐したモンスターに触れると肉になっちゃうし、その関係でアイテムボックスにも入れられない。俺達の旅にアイテムボックスを持っている人を仲間にしたいな。」


うららは聞きなれない単語を頭の中で1つずつ咀嚼していく。その中でもアイテムを入れる箱の意味が特に分からなかった。


「アイテムボックスって何? 箱??」


「この世界で物を収納出来るスキルだよ。それがないと巨大なモンスターを倒した時にわざわざ持ち運ぶ事になるからな。」


「そうなんだ。考えてみたらモンスターの素材を売るにしても、一体倒したらそれを運ぶなんて大変だものね。」


「うん。もしくはモンスターを解体出来る人がいれば、素材だけを持ち込めるんだろうけどな。」


「じゃあ。私達のやるべき事は、まず、ルルシア聖皇国を抜けて、次の国で冒険者ギルドへの登録ね。」


「そうだな。でも俺達にはこの世界の金がない。考えがあるけど、果たして通用するかが問題な。」


春人は、SPと現実世界のお金を使ってアイテムを生成出来る。最初はそれをこの世界の貨幣に変えようと考えていた。



これで、春人達の最初の行先と、旅の仲間探しをする事が決まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る