男 異世界にできた可愛い妹②

「弱いのは俺も一緒だからさ。」


「お兄ちゃん。いろいろと物凄く勘違いしているの。SPや運を使わないなんて事はないの。お兄ちゃんにはどう考えても恐ろしいスキルがたくさんあるなの。それに、運はクリティカルにも影響するの。」


 それから、レイアは春人に説明をした。


 まず、春人の天賦の才の数々は、この世には存在しない聞いた事もないランクのものである事。

 例えそれがⅠであっても、基礎の天賦の才のⅤや希少ランクのⅤをも大きく超える価値がある可能性が高いと教えられる。


 それに春人が思っている程、春人のステータス値は悪くなかった。

 Lv1でのステータス1の表記では判別が出来ないが、ステータスのLv10で19は、100%の数値で、基礎職業の場合ではそれが最高値になる。


 戦士なら力が100%の19 魔力が30%の6で

 魔術士なら魔力が100%の19 力が20%の4になる


 ただし、ステータス上段のHP/MP/SPはそれよりも高くなる。

 春人の場合HPとMPは100%。


 さらにSPと運は驚異的で100%の1000倍数値だという。

 それは他の勇者の比ではないだろうという話だった。


賢聖サガスエア様の話だと、人間の持つ初級の鑑定ではステータス値は基礎の10倍までしか表示されないらしいの。お兄ちゃん。やっぱり森を抜けるまで私を守って欲しいなの。」


「分かったよ。ただ武器がないからな。」


  「武器ならあるなの。」


 レイアが春人に武器の入ったバックを渡す。


「ちょ、渡しちゃ駄目だ!」


 春人がそれを拒否しようと両手を出すが

 間に合わずバックごとマテリア化してしまった。


「忘れてたなの。」


 困った春人は、今度はタブレットを操作する。

 マテリア化したものは、素材として端末にストックされているのだ。


『アレオパゴスの宝刀ジュエルナイフ

 攻撃力355 強化耐久値(11)3905

 材質:ミスリル

 スキルスロット:無し


 タブレットにはステータス画面と連動してあり

 春人は製造スキルの項目を見る。

 マテリア化した素材で武器やアイテムを作成出来るらしい。


「武器製造。SP100と1000円を使用し、マテリアル化した素材で武器を製造する。通常は素材から武器を製造するみたいだけど、武器から武器を作る方法もあるな。」


「……1000円?」


「こっちの通貨950ゴールドが1000円に変換出来るみたいだ。」


「ごめんなの。バックに20万ゴールドくらい入れていたけど、消えちゃったなの。」


「お。それ端末に入ってるな。ゴールドは取り出せないから使っても良いか?」


「もちろんなの。」


 春人はレイアからマテリア化した物で武器と防具を製造した。


アレオパゴスの宝刀ジュエルナイフと呪符系アイテムで、アレオパゴスの呪殺宝刀カースナイフを制作し、プリンセスローブと薬草で女帝エンプレス癒法衣ヒールローブを制作した。


 春人の目の前に二つのアイテムが顕現する。


「出来たっ。制作した装備は、現実世界の物と一緒で、マテリアル化しないんだな。はい。これレイアの服女帝エンプレス癒法衣ヒールローブだよ。来ていると一定時間で回復の効果があるみたい。」


「え? ……女帝エンプレス癒法衣ヒールローブ? スフィア付き……いや、新たにスキルスロットが出来てるの。セットしていないのに防具に特殊効果があるなんて聞いた事ないの。もしかして、これは聖遺物レリックなの? ……こんな貴重な物を受け取れないなの。」


「そんな事より、俺、自分の服を着たいんだが……それにレイアのお金と素材で作ったんだから別に良いじゃん。」


「お兄ちゃん怖いなの!」


「俺さ。家族も友達もいなかったんだよ。だから、レイアにお兄ちゃんって言われてかなり嬉しいんだ。これはお兄ちゃんからの贈り物だ。異世界での人生は、そんな当たり前の事をやってみたい。」


 春人の悲しい話を聞いて、レイアは受けとる事を決める。

 自分も兄弟が欲しかったように、きっと春人も寂しいのだと思った。

 レイアはローブを着る。

 精気が溢れるような優しい感覚がレイアを包みこむ。


「お兄ちゃん。ありがとうなの。絶対大切にするの。」


「喜んでくれたなら良かったよ。ナイフの方も後で返すけど、当初の予定通りモンスター退治に使っても良いかな?」


「それは私からの贈り物にするの。」


「ありがたいんだけど、異世界で戦う気がないから、やっぱり後で返すよ。後で実用的なものを頂戴。」


 春人はプレゼントをされるのが苦手だ。

 今まで経験がなかったのもあるが、節約家のため実用的なものしか貰いたくない。

 レイアは自分だけ価値のある物を貰い、少し理不尽にも思うが言葉にはしなかった。

 わがままでも春人は自分を守ってこれから戦ってくれるのだ。


「……わかったなの。」


 モンスターから逃げ続けていた春人。

 迷いの森に来てからはじめて、自分からモンスターを探していた。

 危険だとは思うが、それよりも空腹に耐えきれなかった。

 

「いたっ。」


 


 Dランクモンスター ホグワイルド 


 ワイルドにチョビ髭を生やした大きめの豚

 獰猛で大きな角を持ち突進してくる



「お兄ちゃん。どうするの? あれは、Dランク ホグワイルドなの。Eランク ホグダンディーの上位種。ここはベテラン冒険者しか入らないような森だけど、あの大きさだと普通の個体じゃないの。多分見た目やランクよりもっと危険なの。」


「でもやるよ。どのみち倒さないと俺が飢えで死んでしまう。」

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