第15話 ザオ王朝
ザオ王朝は今の皇帝で六代目となる。
初代皇帝は前王朝の執政官の立場であったが乱世を正すという名目のもとクーデターを図り皇帝の座についた。
当初は共和国との融合を進めていたが、徐々に武力を強化すると、力による強権王朝を確立してしまった。その子孫たちもまた、力で敵国を制圧し、今日の絶対王朝を築いたのである。
ザオ王朝が絶対君主として続いているのにはそれなりの理由がある。
皇帝は唯一無二、一子相伝。皇帝に子供が複数生まれても次期皇帝以外は十三歳を超えることは出来ないという厳しい掟がある。
他の兄弟姉妹達が殺されるのは権力闘争の芽を摘むため。これは初代皇帝の生い立ちにも関係するのだが、骨肉を争う権力闘争に苦慮した歴史からすると止むを得ないのかもしれない。
七代目の次期皇帝となるであろうウルフは、現皇帝の一番最初に生まれた子で人一倍体が大きい。
十三歳の時に無事に次期皇帝と認められ、既に二十九歳となり、知力、体力、全てにおいていつでも皇帝になるべき素質を兼ね備えている。そして、歴代最も
ウルフはまだ子供がいない。そのためウルフの小さい弟や妹がまだ生かされているが、ウルフに子供が出来た場合は即時に殺される運命にある。
この厳しい掟がザオ王朝にあることから、当然に共和国にも相応の決まり事がある。
この世界の国々は、皇帝に服従する証として、毎年、それぞれの国で作られる産物の半分を税として納めなければならない。その貢で皇帝は
服従する国々は、もう一つ、重い忠誠心を示さなければならない。
数十年に一度、皇帝が
生贄にされるのは王子や王女だが、それを逃れたいがために通常の貢の他に、次期皇帝や執政官へ大量の貢をしている国が少なくなかった。といっても、生贄を逃れ続けることは出来ない。
すべての国がザオ王朝を支える証として、この恐ろしい忠誠を示さなければならなかった。
もっともザオ王朝からすれば、皇帝が死んだのであるから、それぞれの国から王子や王女が一人死ぬのは当たり前のことであり、来世において、皇帝を支え続ける礎として一緒に陵墓に入るのも当然だと考えている。
初代皇帝が崩御し、二代皇帝がこの世界の国々に生贄を出すことを命令した時、ある国が反逆したというが、既にその国は民も含めて消えて無くなっている。全ての国がこのシステムを受入れなければ国ごと無くなるということを理解している。
一方で生贄を出さなくてもよい国があるのも事実である。それを決めるのは、皇帝を支える国々の代表、ザオ王朝執政官である。
その執政官は歴代ザンバル国王が兼務する。極めて大きい権力である。ザンバル国王のギルドは皇帝を支えながらも、自らの国が真の実権者であると自他ともに認めていたといえよう。
東の果ての国、大和国、海国、土国、山国に加え、結国の五つの小国は同盟を結び、五つの国で貢物を一緒に送り、生贄は五つの国から一人を出すという取り決めである。それを認めてもらう代わりとしてザンバル国へも大量の貢物を毎年贈っていたのであった。
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