第11話 頂上への道

 今日もハルは赤い面をつけて一人で『ツル』の頂上をめざしている。


 大きな岩をよじ登ると一つ目の難所、オオワシ達の巣へ来た。


 ハルはおもむろに胸から鏡を取り出した。王家に伝わる秘宝である。


 鏡をオオワシに近づけるとこうべを垂れ従順になっていることが分かる。なぜそのようになるのかは知らない。オオワシは鏡を見ると、しもべの如く小さく屈みこんでいる。

 ハルはオオワシの背中に乗ると、両手両足でしっかりと抱え込んだ。オオワシが立ち上がり大きく羽ばたくとハルとともに宙に舞った。


 山国の王にとって、二つ目の難所、垂直にそびえる氷の壁は手足を使って登るのではない。オオワシとともに飛び、そして頂に降り立つのである。

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