第19話 秘密結社と少年と後宮の魔女達 9
「異なる時間線がどうとか・・・。
今の私にはさっぱり分かりかねます。
ですがそれが、只ならぬ何事かであるのは拝察できます。
皆さんは軽々には扱えない情報を共有なさっているようですね。
・・・どうも我々は最初から君等のことを見誤っていたようだな」
再び萩原氏の顔つきが変わり、どうした訳かいきなり打ち解けた態度になった。
そうして、ネクタイを緩めると親し気な砕けた口調で、事情説明と言うやつを始めた。
佐那子さんがチラっと聞いたトンデモ話も含めた長い物語だ。
それを聞く僕らは、やっぱりぶったまげたのだった。
OFUはとても古い組織だと言う。
今では各地のブランチが世界規模の繋がりを持つまでに拡大しているらしい。
一言で言ってしまえば、OFUは世界規模でグローバルな一大秘密結社なのだとさ。
ショッカーとか死ね死ね団を連想した僕は正しく昭和の男の子だ。
組織の起源は共和制ローマの時代にまで遡るとのことだ。
年代で考えれば紀元前。
キリスト教が生まれる前と言うことに成るだろう。
当初の組織は小さく、始めは人目を忍んでひっそりと活動していた。
キリスト教が迫害の時代を経てローマ帝国の国教になってからは、組織運営も徐々に地域を拡大していく。
組織の拡大はキリスト教の伝道と布教を隠れ蓑にして行った。
やがて東西に分かれるローマ帝国ではあるが、その版図に組織が勢力を広げるのは早かったろう。
キリスト教との相乗りは効率が良かった。
ローマ帝国衰亡の後は、シルクロードや海路が更なる組織の拡大を支えることになる。
組織と一口に言うが、要は超能力者=エスパーの相互扶助組合に他ならない。
超能力者はそれこそ神代の昔からいるわけだ。
迷信と信仰が分かち難かった時代には、大向こうをブイブイいわせていたこともあるという。
そりゃそうだろう。
現代人にだって合理的説明が付かないのだ。
大昔なら、神の子が持つ奇跡の力か悪魔の業としか思えなかったろう。
世界各地に残る神話や説話、昔話に残る神人や御使い、魔法使いの類なんかが僕らのご先祖スジに当たるらしい。
そいつらは、自己顕示欲の強いお調子者の超能力者だったと考えて良いらしいよ。
ナザレのイエスやゾロアスター、ブッダのように後の世で聖人扱いされるヤツらは、力を悪用しなかった能力者ってこった。
だけど、どの時代にも夏目のように能力を邪な目的で使う者が必ずいるのはお約束かな。
余談ながら、夏目が能力者であることは既にバレていた。
あの修羅場に駆け付け救助活動に当たってくれたのはOFUだってさ。
そうして夏目も含めて僕らはヘリでこの病院に運び込まれ、今日に至るってことなんだと。
佐那子さんがずっとピリピリしている理由。
先輩が本音じゃ信用してない司法手続きの事をわざわざ萩原さんに明示して見せた理由。
それは、ふたりが全体状況の訳の分からなさを警戒する疑心暗鬼からきているってことだね。
成るほど、夏目による略取誘拐と殺人未遂に傷害事件は、ニュースになってもおかしくない刑事犯罪だ。
それなのに司直の手がまったく及んでないのは、法治国家としてはありえないことだよ。
萩原さんなんて国家公務員なのに法律より
OFUの都合を優先している始末だぜ。
警察や検察おまけに裁判所からムショまで引き回された過去を持つ僕としてはだよ。
そこに思い至らなかったのはうかつだった。
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