第14話 堕天使は嘘をつく 14
「晶子は思いやりのない大人達の間で孤立するごく普通の少女です。
その少女が自殺を試みるまで何かに追い詰められた。
元凶には恐らく母親や母親に与する大人達がいるのです。
そうして全く意図せずに自分の自殺を阻止した見ず知らずの少年を罪に陥れてしまった。
・・・プロファイルを読んで思い浮かんだ私の想像ですが・・・。
少し落ち着いてから晶子は考えたはずです。
自分のウソなどすぐばれると。
そうなれば少年の冤罪も晴れるだろうと。
取り敢えずは、ウソがばれるまでに何か気の利いた言い訳を考えておこう。
彼女はそう思ったのではないでしょうか。
けれどもあてがはずれました。
嘘がバレて少年の冤罪が晴れるどころかどんどんことが大きくなっていきました。
秋吉晶子というごく普通の内面を持った少女は、今どんな状態にあるでしょう。
おそらくは、自分の弱さが招いた冤罪事件に対する罪悪感で、心が押しつぶされそうになっているはずです。
私たちが知らないだけで、あるいはすでに彼女は自殺未遂の心理的混乱から立ち直っているかもしれません。
一度彼女が本来の自分を取り戻したのであればですよ。
正気に返った真っ当な良心に従って証言を翻し、本当のことを話しているかもしれません。
今日までに知りえた彼女の人となりを考えると、そうしている確率はそれなりに高いと私は踏んでいます」
「けれど・・・もし秋吉晶子が嘘を吐いたと告白し、証言を撤回して真実を語るとしても、今度は誰もそれを信じてくれない」
「もちろんです。
何と言っても晶子の証言は、まどかさん謹製のギフトによる大きな力で武装していますからね。
証言した当の本人にだって覆すことなんてできやしません」
「秋吉晶子がマドカを陥れた嘘を本当に本当の真実で上書きする。
そのためには、彼女の言葉に再びマドカの能力で力を与える必要がある訳ですね」
ルーシーが一語一語確かめるように目指すべき道筋の確認をする。
「でもどうやってそれをさせるんですか。
秋吉晶子の言葉に力を与えるウイザードは鑑別所の中ですよ?」
雪美が『素朴な質問です』と手を上げる。
「おふたりともまたまたお忘れですね。
私、最初に言ったじゃないですか。
能力を授けられた私たちが、まどかさんにどんな感情を抱くようになったかと。
晶子がモヤッてる理由ですよ。
まだお分かりになりませんか?
良いですか。
・・・晶子は自分の命を救ってくれた少年に今、ほのかな恋心を抱いているはずです。
ほぼ確実に」
ルーシーは「アッ!」と小さく声を上げ、雪美はポンと拳で掌を打ち、ふたりとも同じように大きく目を見開く。
「これを使わない手はありませんよ。
同志諸姉!」
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