猫の日常
目が覚めるとベット上にいた。しかも何やらお顔にタワワに実った果実が!
「ふにゃ!///」
「ななー、いい子にしてねー」フニャフニャ
なな?!だれ?!わたし?!なんで?!前の名前と同じなの?!
「うにゅぅぅ」
「ふふ。かわいい」
ああ、本当にダメだ。このひとがこんなにも無防備な姿を晒しているこの状況に、とてつもない優越感を感じている自分に、嫌気が差す。
「大丈夫?くるしい?」
あぁ本当にこの人は、どうしてこんなにも優しいのか。今は欲しくないその優しさにときめいてしまう。
「にゃっ」
「そう?じゃあもう少しこうしててもいい?」
「にゃあー」
「ありがとう」
でも、こんな私に出来ることがあるのならなんでもやろう。たとえ猫の姿のままでも。
それから抱かれたまま10分くらいたった時、私を抱きしめる腕の力が緩くなる。
すると姉は少し涙ぐみながら「ななぁ、どこにいるのよぉ。」と小声でまるで気持ちが溢れてしまったかのようにこぼした。
初めて見る弱った姉の瞳に溜まった涙を舐めて少しでも気が紛らわせようとする。
「なな、ごめんね。あなたじゃ無くて、妹の、あなたと同じ名前の、いもうとの、なまえを、よんだの、ごめんね」
そう言いながらどこか無理をして我慢をするように、自分に言い聞かせるように言う姉の姿になぜか腹が立ってしまう。
「にゃ!!」
「?ど、どうしたの?なな」
突然大きな声を上げる私に少し戸惑いながら頭を撫でる姉。
「にゃあー!」
私の前で他の女の話をするな。そう言うかのように声上げる。・・・まぁどっちも私なんだけど。
「ふふ、ほんとうに、本当に妹にそっくり」
微笑みながらそう言う姉の表情は先ほどよりも晴れて見えた。
「ありがとう。さて、そろそろお仕事に行かなきゃ。」
「にゃあ」
「なな、ちゃんとお留守番できる?」
「にゃあ!」
「ふふ。じゃあお願いね」
そうしてすぐに支度を済ませると姉はお仕事に行ってしまった。・・・寂しい。ただその気持ちが心の中がいっぱいになる。
さっきまであんなに抱きしめたり撫でたりしてくれたからか、それとも久しぶりに姉と触れ合えたからかより一層寂しく感じる。さっきまで姉を騙して見た景色に嫌気が差していたのに、今はただ姉と一緒に居たいと思ってしまう。
本当にどこまでも自分勝手だなと自虐する。
あれからどれくらい経っただろうか、気がつくと姉のベットの上で寝ていた。
開けっ放しのベランダに行くともうすっかり夕方のようで、もう少しで姉が帰ってくると思うと少し幸せな気持ちになる。
それにしても姉は一体何者なのだろうか、今始めて気づいたが姉の住んでるこの部屋は高層マンションのかなり上の階のようだ。
「ふにゃぁぁ」思わずなんとも形容し難い情けない声が漏れてしまう。
ガチャ「はぁーつかれた〜」
「にゃっ!!」
「ななぁ!元気にしてた?」
「にゃぁ!」
「そっか、じゃあいまご飯用意するね」
なんと!ようやくご飯にありつけるのか!実は猫になってから何も食べてなかったからものすごく嬉しい。
「にゃっ」
「さ、たくさん食べてね」
まあ、当然というべきか出てきたのはキャットフードだ。流石に食べるのに少し抵抗はあるが仕方ない。い、いただきます。
「にゃっぁ!」
「ふふっ美味しい?」
「ふにゃっ、にゃっ」
しかし、一口食べるとあまりの美味しさに止まらなくなってしまう。猫の体だとこんなにも美味しいのか。なんて感動していると姉が頭を撫でてきた。
「そんなに慌てて食べなくてもまだあるからね」
その顔はどこか寂しそうで、ただどこか嬉しそうな、そんな不思議な雰囲気だった。
そうしてご飯を食べ終え、姉と共にソファーでくつろいでいるときも姉の表情は明るくはならなかった。
そして一緒にお風呂に入り、寝る時間になりソファーの上で寝ようとすると姉の部屋から泣きながらなにかに懺悔するように「あぁ...,どうして、どうして」と繰り返し嘆く声が聞こえた。
そのあまりにも悲痛な嘆きを聞いていても居ても立っても居られなかった。
昨日、私とは違う感情ではあっても姉は自分を好きだと言ってくれた。
ならば少しでも支えになることが今の私にできる唯一の姉孝行。
「にゃぁぁぁあ!!」
私は姉の部屋に乗り込み、ベッドの近くで思いっきり声を出した。
「な、な?どう、したの?」
すると姉は少し困惑しながらも私のことを抱えながらそう質問してきた。
私はただ姉に安心してほしくて昨日と同じように姉の涙を舐めとる、これが今の私ができる最大の愛情表現だから。
すると姉も落ち着いたのか「あり、ありがとう、なな」とそういって眠りについた。
私もそのまま抱きしめられながら眠りについた。
そして朝、私の目が覚めるのと同時に姉も目が覚めたらしくお互いに目が合う。
また今日も姉との一日が始まる、そのことが何よりも嬉しい。
「おはよう、なな」
「んぁぁぁ」
「ふふっ」
姉は今日も仕事があるから一緒にいる時間は短いけれど、少しでも姉との時間を共有できるのがものすごく幸せだ。
ガチャ「それじゃあ行ってきます」
「にぁー!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます