第10話 異物混入

試験から数日が経ち、今日は受験者としてではなく、生徒として俺とエキドナは帝国魔法学園に来ていた。

様々な困難を乗り越え努力してきた者が集うこの学園は本試験の結果を加味されAからFクラスに分けられる。

もちろんAクラスが最上位集団であり、一国の王候補や公爵令嬢、それに英雄候補までいるとかなんとか。

そんなエリートクラスに俺、グラン・ゼルリアス、今はバルバルトとして意図しない形での合格並びにほぼ強制で入学されたのである。


「……………」


「わ!ここがAクラス!私はマスターと一緒のクラスで本当に良かったです!!」


俺とエキドナはそのAクラスとやらのドアをくぐり入室した。

中は階段上に席が用意されており有名貴族や成績優秀者がわんさかいた。


「…………」


  ちくしょうががぁぁぁぁぁぁああ!!!


何故!why?おかしいどこで狂った!

何故俺がこの中にいる!


……俺は当初の予定ではFクラスに行くつもりでありせめてこの順位争いからは逃れ楽に学園生活を満喫するつもりだった。


それがそれが!!


「ああああああ!!」


俺はつい心の声というか叫びが漏れてしまう。

そんな俺を見てエキドナが宥めるように


「まぁまぁマスター私と同じクラスでよかったじゃないですか!だってマスターの腐った性格だと友達一人も作れませんから!」


「お前……こんな毒舌キャラだっけ?」


「事実です!」


曇りなき笑顔で毒を吐くエキドナ。

こいつには悪意がない…

それが逆に俺の心を抉る。


「……まぁお前と同じクラスだったのがせめてもの救いだ……」


「はい!」


元気な声で返事をするエキドナを見る。

そういえば俺はメイド服以外のエキドナを見るのは久しぶりだ…

でもしっかりと学園用の紺色制服も似合ってるいる。


「しっかしお前、なんでも似合うよな」


「ふえ!?」


俺はボソっと口にした。

しかしエキドナはその言葉に驚くように声を上げた。


「マ、マスター?い、今なんて…」


「ん?だからお前なんでも似合うなって」


動揺しながら言い返すエキドナに俺は同じ言葉を告げた。


「ひ、ひゃーー!!!」


「?」


エキドナは嬉しそうに顔を抑える。

それは俺から目線を隠しているようにも思えた


そう…エキドナは見た目もそうだが基本なんでもできる。

洗濯掃除ベッドメイキングまで館での生活はこいつに支えられていると言っていい。

しかしこいつには一個だけどうしても無視できない欠点が存在する……


「じゃ、じゃあマスター!今日の昼は私の手作りハンバーグを……」


「まままて!ちょっとストップ」


俺はエキドナの言葉を遮るように口にした。


「ま、まぁ今日は学食使おう!せっかく学園に来たんだしさ」


「そういうことなら仕方がないですね……また今度作ってあげます」


エキドナは残念そうに下を向いて言った。


……あ、危なかった……


そうエキドナの最大の欠点はまさしく料理!!


なぜかエキドナは全ての料理を意図せず青紫に変色させる。

それが毒なのかなんなのかはわからない。

だがこいつの料理はまさしく「死」の概念そのもの!

部下も何人か意識不明で病院に運ばれるほどである。

俺も一度口にしたことはあるが残念ながらそこからの記憶が無い。


さぁなんでだろうね?


「ふぅ、それよりこの教室に人が沢山集まってきたな」


周りを見渡すとAクラスの名に相応しい威厳を持つ生徒がどんどん入室してくる。

俺もAクラスなんだが果たしてこの波に飲まれないようにできるだろうか……


「ん?」


すると教室のドアから見覚えある人が入ってくる。

この間とはうって違い、堂々した立ち振る舞いを見せる魔法杖を持ったその少女は俺の方を見るとゆっくりと階段を上がりこちらに向かってきた。


「久しぶり……でもないか?」


「まぁ数日ぶりだね」


ピンク髪の幼い顔立ち…ミーナである


「元気してたか?」


「えぇぼちぼちよ、今日まで自分がAクラスだった言うことを実感できてなかったけど」


ミーナはそういうと俺達が席をとっている3人がけの机の片方に座る。


最初の弱気な態度は何処へ……


「まぁいいそれより………」


「マ、ス、タ、ア?」


俺はその狂乱の声の元を辿り後ろをおそるおそる振り返る。

そこには闇の覇気を羽織っているエキドナがいた。


「え……」


「その女……誰です?合格発表の時も一緒にいたような気がしますけど?」


「お、お、落ち着け!!ただの友達だ!だからその狂気の笑顔やめろ!!」


それはにこやかにありえない笑顔の凶器。


「……マスターってこの人が?あんた達一体どういう関係……」


そこに特大爆弾を投下するミーナ



「それはもちろん!同棲している仲です!」


「え……そうなのグラン」


「おいエキドナ!!誤解しか招かない言い方をやめろ!!」


確かに一緒に暮らしているが館にいるのは俺とエキドナだけでない!ちゃんと他に男もいるぞ


その含みのある言い方にミーナは少し顔を引き攣る。


「やっぱり……グラン…」


「だから違うぞミーナ!エキドナもなんとかいえ!!」


「ミーナさん!今貴方が想像している通りで構いませんよ」


「おおいいいい!!」


俺の悲痛な叫びは果たしてミーナの誤解を解いたのだろうか?

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