第6話 弾丸

帝国立魔法学園本試験は最終局面を迎えており俺達の延長戦も残すところあと5分。

旧校舎の広いグランド。

それは隠れる所はなく平地の戦場と化していた


「はぁ……はぁ……」


「おいおいどうした軍人?もう体力切れか?」


ルミナリエは大剣を地面に突き刺しながら言った。


クソガッ…こちらとら一人護衛しながら平地のグランドで15分だぞ!!


2人ともの体力の限界は近い。

ミーナができるだけ疲れないように俺が抱えて走るにしてもその分速度は落ちる。


せめて剣をなんとかできれば……!!


ルミナリエの大剣には魔法陣がうずまいており術式を見たところ体力増加、筋力増加、武具強化の3つの魔法が最低でもかけてあることがわかった。

多分旧校舎をかち割れたのもこの魔法のおかげ……いや、奴自身の筋力の影響もあるだろう

しっかしまぁ


ズルすぎませんかねぇ!!

魔法使って学生追いかけ回すなんてそこらの犯罪者とやってること一緒だよ!!


どうする……どうする……大剣をどうにかできる方法……何か……


俺はミーナの方を見る。

彼女もすでに体力の限界は近い


ん?手には杖……魔法……あ!


「ミーナ!」


「な、なに!?」


ミーナは突然の呼びかけに少しびっくりする。


「何の魔法が使える」


「え、えーと風属性魔法、水属性魔法、火属性魔法……どれも初心者級!」


つ、使えない………


「他には!!」


「他には……武具強化魔法も…」


「それだ!!」


俺はミーナを横目で見る。


「俺に武具強化魔法を打ってくれ!」


「む、むちゃだよ!!大体武具強化魔法は武器専用の強化魔法であるわけであなたは武器持ってないじゃない!」


そう武具強化魔法は武器専用強化魔法。

武器にしかその魔法の効果は発動せず人にかけても無駄だ。

だが


俺は一つ…いや二つ武器となる物を持っている!


「……これにかけてくれ」


俺はルミナリエの視線を外れるように手を後ろに回す。

そしてミーナに”武器”を見せる


「へぇ?」



ミーナの疑問は最もだ。

何故ならそれは武器とするにはあまりにも小さすぎる。


「できるか?」


「や、やれるだけやってみる!」


俺達は2人はルミナリエを見据える。


「話し合いは終わったかぁー?さぁて最後の一仕事行くかぁー」


丁寧に待ってくれてどうも!

今の戦力差は奴がそれほどまでに油断するほどある。


「……10秒守って」


ミーナは小声で言った。

魔法陣形成の時間は集中しなければならない。

しかしその間魔術師は無防備になる。


……俺の任務はこいつの護衛


「…………了解」


その瞬間ミーナが魔法陣を形成し始める。


———世界を示す鉄の道しるべ———


「血迷ったか!私が魔術師を攻撃しないとでも!」


ルミナリエはミーナに向かって一直線に走って行く。

その間に俺が入り少しずつ下がりながら交戦する。

勿論己の拳でだ。

俺は大剣を受け流しつつ左手からくるパンチをギリギリ交わす。


「は、お前の最後はそこの彼女のための特攻か!」


俺は無言でしかし冷静に攻撃を受け流す。

ペンダントが掴まれないように後ろに下がりつつ。


一回掴まれたらゲームオーバー…


あと5秒!!


「くっ!」


俺はルミナリエの攻撃を正面から受けてしまい

膝をつく。


「終わりだ!!」


—鍛治神の加護をここに!アモーレアムル——


その瞬間俺の握っていた右手拳が光始める。


きた!


俺は右手から銅貨を取り出すと親指で弾いた。


「な!」


 流石にルミナリエも予想外でありとっさに大剣で抑えよう構えるが大勢を崩してしまい銅貨とぶつかった。


大きな金属音と共に大剣が宙を舞うと地面突き刺さる。


「………なるほど、そういうことか」


ルミナリエは納得した表情を見せ膝をつく。


この考えは俺が訓練兵時代に培ったもの。

戦場では物資が少ない、なら使える物はどんな手段にしても使えという教官からの教訓。



俺は立ち上がりもう一つの銅貨を構える。


「ルミナリエ先生、耐えてくださいね」


「は、生徒のやることかよ……」


俺はルミナリエに向かって銅貨を親指で弾いた

それをルミナリエは両手のグローブで返そうとするがこちらの方が威力が強い。

大きく引っ張られ物凄い音と共に旧校舎の瓦礫に衝突した。


「…………… まぁ大丈夫でしょ」


さっきまであんなに元気だったしね!


すると校舎から全体に響くようにチャイムの音がする。


こ、これは………


ルミナリエが壁に寄りかかりながら親指を立てた。


そう、俺達の勝ちである


「あ………危なかった……」


「勝ったの……!そうだよね!!」


俺とミーナは勝利を分かち会うようにハイタッチをした。


「やった!やったよ!グラン!!!」


「マジで助かった………ありがとうミーナ」


「うん!」


今までにない満面の笑みで俺を見るミーナ


建物内にいた時もこいつがいなかったら危なかった……

もちろん最後も……


「ありがとうグラン!」


「おう!」


ミーナってこんな笑顔になるんだな……

俺達はもう一度ハイタッチをした。

その音はグランド中に響き渡った。


「………たく教師を怪我させるってどうんなんかね」


壁に寄りかかりながら言うルミナリエ


「………これでいいかいルーカス」


 

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