第5話 そんな簡単に行くわけがない


「はっ!若い子は盛んでいいねぇ」


「……やっぱりか」


そうこいつの名前はノア・ルミナリエ

ついさっき会場でルール説明をしていた無駄に堅いがいい女教員だ。


そう、俺が第一印象として


  絶対あの人自分が試験に参加して受験者を落とすタイプの教師だ……


と思った教師である。


嫌な伏線回収だな!!


「いや〜グラン、君を探したよ〜」


「……俺を?」


なんか嫌な予感がする。


 「君のことはルーカスから聞いていてねぇ、性根が腐っているから叩き直せってお願いされたよー」


「…………」


あのクソじじい!!

毎回俺に迷惑かけないと気が済まないのか!!


ルミナリエはそう言うと俺の手元を見る。


「いやーやっぱり君は命令に忠実だ!受験用紙

に君だけ武器の持ち込み不可にしてよかったよ」


お前かぁぉぁぁぁ!!

そういえばそんな事書いてあったなぁ!


「まぁいい、実は試験はもうすでに終わっていねぇ」


「は?」


ルミナリエはそういうと胸元から大量のペンダントを落とす。

数はざっと見て100は超えていた。


「どいつもこいつも根性なし全員私を見た瞬間逃げていったよ!」


「…………」


そりゃそうだろ!

こんな堅いのいい、いかにも格闘技やってますよ感のやつが襲ってきたらみんな逃げるよ!


「だからまぁ片っ端から奪って行ったよ」


「それじゃあ俺は合格っていうことでいいんですかね?」


「はは、君は面白い冗談を言うね」


ですよねーーーー


だが

受験生ではないこいつもペンダントをつけている。

ならあいつからこれを奪えば終わりのはず


「でだ、君と真正面から戦っても私は勝てないのを知っている」


ルミナリエは後ろにつけていた大剣を思い切り床にぶつける。

床はひび割れ俺の方まで亀裂が届く、


「そこで、君にはこれから20分間逃げてもらう」


「おい……まさか……」


ここまでの俺の悪い予感は100パーセント的中している。

なら次に奴が取る行動は……


ルミナリエは自分のペンダントをぶち抜いた。


「ですよねーーー」


「あ、あのー」


ここまで全く存在感を見せなかったミーナが手を挙げる。


「私は合格っていうことでいいですか?」


「うーんそうだな、ここまでの会話を聞かたれたんだ君も特別参加だ、悪く思わないでくれ」


ミーナの表情が一瞬で真っ青になって行くのがわかった。

そりゃそうだ訳のわからない会話を聞かされ

試験が終わったかと思ったら延長戦だ

俺だったら発狂もんだが


「それじゃあ行くぞ!」


「ちょっちょっちょとまってください」


「あ?」


大剣を構えたルミナリエの動きが止まる。


今タイマーがスタートしているかわからない

だがせめて時間は稼がせてもらう

俺は自分が今できる最高の言葉を!




「………今夜は月が綺麗になる予定ですよ」





その瞬間ルミナリエが俺に向かって大剣を振り下ろし床にさらに亀裂が走る。


「チッよけられたか」


これ絶対殺す気だよね!!

当たったら俺死んじゃうよ!!


するとルミナリエの視線がミーナに行く。


「……えっ」


ルミナリエはミーナに向かってジャンプした。

俺はミーナを抱きかかえなんとか攻撃を回避させる。


「逃げるぞ!」


「えっ!えーーー!!」


考えている時間はない


俺はミーナ抱えると階段を数十段飛ばしながら降りて行く。


「ちょっちょちょっと待って!貴方は一体何者なの!!」


「説明している時間はないしっかり捕まってろ」


「だから説明をぉぉぉぉぉーー」


全速力で廊下を駆け抜ける。

ミーナは目を瞑りながら俺に捕まっていた。


廊下は走らないなんてルール知ったことか!


俺は2階にある教室に入りドアをホウキで固定する。


「マジで!死ぬかと思った!」


本当に危なかった。

流石にここまで近づいてくるのであれば足音が聞こえる。

なら教室に入る前に窓から飛び出せる

俺が一生懸命頭の中で作戦を練っているとミーナが


「一体全体どういうこと!説明して!」


さっきまでの弱気な女の子とは思えないほどの強気な意志表示……


そりゃそうだ

いきなりエンドレス試験が始まりあったばかりの男ににお姫様抱っこされれば誰だってそうなる。


「……俺も詳しいことはわからん、でも一つだけ確かなことがある、あいつに捕まれば2人とも不合格だ」


「………ちゃんと後で説明してもらうから」


ミーナは少し強気にそういうと魔法陣を展開する。


———世界を深淵を覗く闇の神よ—どうか我らが敵を捕捉せよ!ディテクション—————


すると光の線が学校中に広がっていき全体を通っていった。


「これは……」


「探知魔法…助けられてばかりだと癪なので」


「……ありがとうミーナ」


すると一瞬だけ魔法陣が揺れた。

見るとミーナの頬が少しだけ赤くなっている。


「ま、魔法陣を乱さないで!」


「どういう……」


俺は訳が分からずミーナを見る。

ミーナは目を瞑り集中するそして


「……見つけた……え?」


「どうした?」


ミーナは何かに困惑しており目を開ける。


「まだ…屋上にいる…」


「は?」


俺は確かにその言葉を聞いた。


まだ屋上だと何故……?


「なんでだよ……」


「もう追いかけてくる気ないんじゃない?やったこれで私達の勝ち!」


……俺は全力で思考を巡らせる。


なぜまだ屋上……追いかけてくる気はない

そんなはずはない、奴はルーカスから俺を落とすように言われているはずだ、ならなぜまだ…屋上、……そういえばこの試験には至るところに監視カメラが…………位置は把握されている



……まさか


「よし後は私達は逃げ切れば勝ち……ですねって……一体」


「飛ぶぞ!」


俺はミーナを抱きかかえ窓から飛び降りた


「えーーーーー!!!」


ミーナと叫びながら下なら落ち行く。

俺は片手で木の枝を掴み勢いで地面に着地する


「し、死ぬかと思った……一体なんなので……」


すると旧校舎が凄い音を立て倒壊して行く。

ミーナがまた絶望的な表情を浮かべる。


……マジで危なかったな


「流石だ、あと少し気づくのが遅かったらゲームオーバーだったな」


「……教師がやることじゃないでしょ…」


瓦礫の山の上にいたのはルミナリエ

彼女は俺達と屋上で対峙している時床に亀裂少しずつ入れ倒壊しやすいようにしていた。

しかも古い旧校舎なので元から崩れやすく

ルミナリエのような脳筋野郎にはすぐに破壊できたわけだ。


「……さてここからどうするか」


俺から攻撃するにしても奴は武器持ち

ペンダントを取られるリスクの方が高くなる。

しかもこっちはミーナを守りながらの戦いだ。

グランドに3人の人影

それはその場にいないとわからない緊張感であり俺は打つ手を全力で模索する。



受験に命かけるってこういうことか!!


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