第3話 開始
俺は受験票の裏に書いてある会場まで足を運ぶどうやら俺の試験は旧校舎のグランドであるらしい。
重い足を運ぶとそこには俺と同じ受験者が集まっていた。
「………ここか」
皆顔が強張っており俺は視界に入らないように角の方に移動する。
男女共に同じくらいの数か〜
一般的に剣術の訓練では男の方が体格的に有利なのだが魔術にかんしては女性の方が上手く扱える。
ソースは俺!何故なら
俺は魔術が使えない!!
は?と思うだろう
では何故俺が魔術学園に行くことになったのかあのクソジジイに聞いてくれ……
俺は角に置いてあるベンチに座る。
周りを見ると皆何やら小言をぶつぶつと呟いていた。
ん?一体何を言って
俺が耳を澄ますと……
「潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す」
「神様神様神様神様神様神様神様」
………いや怖すぎんだろ!
なんか宗教始めちゃったやつもおるし
でも俺も人の事を言えない…
頭に浮かんだのは軍学校時代の地獄の訓練の日々
「おい!!何やってんだグラン!テメェの代わりなんぞいくらでもいるんだぞ!!」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
10キロの急な坂を爆発する砲弾を避けながら登って行く。
地面は雨が降ったばかりか水分を含んでおり靴に泥がまとわりつき離れなかった。
「クソが……なんでこんな……ことに…」
「遅いぞ!罰としてこの坂をもう3週だぁ!」
「は、はい!!」
教官に怒鳴られながらでこぼこの坂を進んで行く。
俺、7歳の頃の思い出……
ろくな思い出ないな!
あの時は軍をやめてやろうかと思ったが今となっては部下との共同生活…
俺がそんなことを考えていると
「あ、あの〜」
声に釣られ顔を上げるとそこには俺より少し身長が低くピンクの長い髪が特徴の女子がいた。
手には魔法杖を持っている。
「隣…いいですか?」
ピンク髪の視線の先には俺が座っているベンチ
「どうぞ」
俺は一言返事を入れると少し左によけピンク髪が座れる隙間を作った。
「あ、あの…受験緊張しますね」
ピンク髪がもじもじしながら言う。
「確かに緊張するな、人生かかってるもん」
※かかっているのは命
「ですね!もし落ちたら親に合わせる顔がないです」
「俺も合わせる顔が吹っ飛ぶもんな……」
「へ?」
「え?」
ピンク髪が不思議そうな顔でこちらを見てきた
「どうした?」
「い、いえなんでも……皆さん緊張していて表情が凄く怖いんです」
確かにそうだな
あいつら人殺しそうな勢いだもん
「あ、あの!!」
「ん?」
「あ、貴方は緊張しないんですか?その全くそれが感じられないっていうか……」
少女は俺に問いかける
煽りでもなく口論をしたいわけでもない。
ただ純粋なら知りたいという表情だった。
「まぁそりゃ緊張するよ、でも焦っても何も変わらないな、今できる自分のベストを尽くすだけだ」
まぁさっきまでやばいくらいに焦っていたがな
「す、すごいお強いんですね……」
「強い……か……」
俺は軍学校を卒業している。
もしかしたらそこでアドバンテージが取れるかも……なんて考えないわけではないが
そういえばついこの間……
*
(マスターーー!ちょっと試食してください!)
(無理無理無理マジで無理頼むやめろ!!)
エキドナの手の持つ箱の中には紫色の何かがミキサーかなんかで粉砕してあった。
それを無理矢理ねじ込もうとエキドナは猛スピードで追いかけてくる。
俺は迫り来る死から全力で逃げるのであった。
*
…………………。
「どうしたんですか!」
ピンク髪が心配する勢いで俺に声をかける
「………ちょっと過去を思い出していたよ、俺より強いやつが周りにわんさかいるから自信なんてもんはとっくの昔になくなった…」
俺はどんよりとした顔で言うとピンク髪は顔を引きずりながら
「そ、そうなんですね……」
「まぁそれでも」
俺は立ち上がって言う。
「お互い頑張ろう」
俺は手を伸ばし握手を求めた。
するとピンク髪は手を伸ばし俺の手を両手掴む
「はい!」
俺達は固い握手を交わした。
「そ、そういえば貴方のお名前を聞いてなかったですね」
「あー」
そういえばそうだったな
「グラン・ゼル……ゲフンゲフン、バルバルトだ」
「グラン・バルバルトさん!私はミーナ・ルーベルクです、お互い頑張りましょう!」
「おう」
ミーナの言葉の中にはお互いがライバルであることを忘れないようにという意味も含まれていたと思う。
正直1番最初に仲良くなった奴が落ちると嫌なので是非とも受かってもらいところである。
『それではこれより本試験を始めます!』
さっきとは違う女性教員が呼びかけると一斉に空気が重くなる。
「グランさん!」
ミーナは親指をまっすぐ立て俺を見る。
俺も同じように返すと2人で受験生が集まっているところまで走って行った。
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