無能だからと実家を追いだされ底辺をさまよってる冒険者だったけど、ユニークスキル【魔眼】が覚醒したので無双してみる~え? 歓迎してやるから家に帰って来い? お断わりします~
第12話 便宜を図ってもらった後のお願いほど断りにくいものはない
第12話 便宜を図ってもらった後のお願いほど断りにくいものはない
「思惑ですか?」
「そうだ。ラース君、君に緊急依頼を受けて貰いたい」
突然の申し出に驚く。
「緊急依頼? 僕はさっきまで最底辺の冒険者だった男ですよ。どんな依頼かは分かりませんが、他に適任がおられるのでは」
ギルド長の緊急依頼なんて普通は金級以上の冒険者が請け負うものだと思うんだが。どうして僕なんかに依頼するのだろう。
「私も本来であればもっと実績のある冒険者に依頼するのだがね。ああ、別に君を馬鹿にする意図はない。気分を悪くしないでくれたまえ」
「いえ、大丈夫です」
「話を戻そう。本来、私を通してだされる依頼というものは大抵金級以上の冒険者によって行われる。しかし、今トロンの町には金級以上で依頼を受けてくれる冒険者がいないのだよ。運の悪いことに、みな別の町で発生した魔物の討伐をしに向かったり、怪我で動けないのだ」
頭の中でグレシャムの姿が浮かび上がる。いや、これ半分は僕があいつを倒してしまったことが原因じゃん。
僕がグレシャムに負けていれば今ごろは彼のパーティーがその緊急依頼をこなしていたはずだ。
もしかしてこれは僕を暗に批判しているのかな?
すると、僕の顔色をうかがっていたギルド長が首を振る。
「いや、別に君を批判するつもりもない。ただ、依頼主がどうしても早く冒険者を送って欲しいという要望があってだね……」
「とりあえず、お話をうかがっても?」
ギルド長は話しだす。彼の話によると、緊急依頼は僕とグレシャムが決闘をしたあとに来たらしい。依頼主は町の外れにある墓地の管理をする墓守だという。
墓地といっても、一般の住民が埋葬されるようなところではない。スラム街の貧困層や浮浪者、それに犯罪者などの遺体を葬り去るような場所だ。
そんなだから管理などもあまり行き届いていない。無造作に墓地へ放り込まれていく死体はどんどん溜まっていき、最近は町の方まで腐臭が漂ってくるようになってしまったらしい。
そこで今の墓地は取り壊すことになった。町から離れた場所へ新たに墓地を建設し、そこへ遺体を移送する予定になったとか。
しかし、そこで問題が発生した。
なんと、大量の死体が放置された墓地は、いつのまにかアンデッドの巣窟になっていたのだ。
「一応墓守はいるのですよね? アンデッドが発生していることに気付かなかったんですか?」
「当然気づいていたようだね。ただ、墓守の主な仕事は死体を運び入れることなのだよ。定期的に墓場に異常がないか見回り、遭遇したアンデッドと戦うこともある。だが、基本的には墓場のアンデッド討伐は冒険者の仕事なのだよ」
「それじゃあ、アンデッドは冒険者によって討伐されるはずなのでは。アンデッドの巣窟になる事態は避けられると思いますけど」
「残念なことにそうはならんかった。主に理由は2つある。1つ目は、5年前に発生した黒死病の流行。これによって多くの死者が発生してしまった。これにより、墓場に短期間で大量の死者が運ばれた。このためにアンデッドが活性化しやすくなってしまったのだ。2つ目の理由、これも同じく黒死病の影響だ。病に倒れた者が多かったせいで領地の税収が減ってしまってね。領主であらせられるドース・ラマテール公爵様も色々な分野の予算を減らさざるをえなかったのだよ。貧民用の墓地も当然のごとく予算が減らされてね、墓守はアンデッド討伐用の冒険者を長らく雇えなかったというわけなのだ」
黒死病というのは恐ろしい流行り病だ。
幸いなことに、流行った当時は聖王国の大聖女様がこのヴェオラード王国に赴いてくださり、彼女の神聖魔法によって、なんとか多くの人命が救われたらしい。
しかし、大聖女様の力を持ってしても、すべての人を救うことは叶わず、墓場は死体でいっぱいになってしまったわけだな。
「それが今になって大変なことになってしまったと」
「うむ。そこでだ。つい先日、黒死病によって受けた打撃から回復したラマテール領は冒険者に墓場内のアンデッド討伐を命じたのだよ」
「ならなにも問題なさそうですが」
「問題ないはずだったのだがね……」
ギルド長は話を続ける。
冒険者たちは墓場に潜むアンデッドたちをどんどん倒していった。順調かに思えたその作業は突然難航してしまう。
それは墓場の奥まった場所に冒険者たちが行ったときだった。彼らはそこで大きな洞穴を発見する。なんと、あまりにも長い間多くの死体が放置された結果、墓場の奥は迷宮と化していたのだ。
死体からは瘴気が漏れでるからな。あまりに大量の瘴気を浴びた大地は迷宮となってしまうことがある。
洞穴の中には女の幽霊がおり、冒険者たちは除霊を試みたものの、失敗してしまったらしい。そこで、緊急依頼がだされたようだ。
「女の幽霊というのは墓場の奥にいるのですよね。ならば緊急依頼をだす必要はないような」
「いや、悪霊というのは恐ろしい存在でね。自分が攻撃されたと感じると、自分のテリトリーから飛びだして人を襲うこともあるのだよ。おまけに、銀級冒険者のパーティーを返り討ちにしたのだ。そのような悪霊を放置しておくわけにはいかん」
「どういった経緯なのかは分かりました。では、せっかくですし、緊急依頼を受けようと思います」
ギルド長に冒険者ランクを上げてもらった手前、断ることはできない。
「それはありがたい。君はソロなわけだが、他の冒険者も募集するかね?」
「いえ、他の冒険者と組むと確かに戦力は上がります。しかし、上手く連携できるか分からない以上、一人で戦ったほうが良いかと」
「承知した。ではよろしく頼むよ」
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