無能だからと実家を追いだされ底辺をさまよってる冒険者だったけど、ユニークスキル【魔眼】が覚醒したので無双してみる~え? 歓迎してやるから家に帰って来い? お断わりします~
第11話 思いがけない報酬ほどありがたいものはない
第11話 思いがけない報酬ほどありがたいものはない
冒険者ギルドの中に入った僕は、依頼が張りだされている掲示板を見やる。さて、なんの依頼を受けようかな。
これまでたまに依頼をこなすことはあったものの、低ランク冒険者の僕にまともにこなせる依頼はあまりない。
なので基本的には《時雨の森》でゴブリンやスライムの魔石を入手し、ギルドで売却することで生活していた。だけどこれからは安定した収入を得るためにも、依頼もしっかりこなしていきたい。
「あの、少しよろしいでしょうか」
突然、受付嬢の一人から声をかけられる。よく見ると、彼女は僕が先日ゴブリンキングの魔石を売却したときに立ち会った人のようだ。
彼女がうっかり大声を上げたことがきっかけでグレシャムと決闘する羽目になった。
「なんでしょうか」
「その……先日は大変申し訳ございませんでした。私がうかつに声を発してしまったせいで迷惑をかけてしまい」
受付嬢は頭を下げる。
「あれは事故のようなものですから。もう気にしていないので、顔を上げてください」
確かに、決闘することになったきっかけは彼女なのだが、そもそもグレシャムが僕に悪い感情を持っていなければあんなことにはならなかっただろう。
「お許しいただきありがとうございます」
「いえいえ」
僕は再び掲示板へと目を向ける。
「あの、実を言うと、お声がけしたのには他にも理由があるんです」
しかし、彼女にはまだ用事があるらしい。
「ギルド長がお呼びです。ついて来て頂けないでしょうか」
あのギルド長がか。いったい何の用だろう。まぁ、ギルドに所属している以上、断るという選択肢はない。
「分かりました」
僕は彼女の後をついていく。受付のカウンターを通り過ぎて、案内されたのはギルド長室だ。受付嬢がノックをすると、「入って来い」という声が扉の向こうから聞こえてくる。
だが、受付嬢は扉の前で立ち止まったままだ。僕一人で部屋に入れということらしい。
仕方なく、僕は扉を開き、中へと入る。
「先日はご苦労だったね、ラース君」
ギルド長の執務室には初めて来たが、思ったよりは質素だ。しかし、壁の方には本棚が取り付けられており、古今東西のあらゆる書が収納されている。
そんな本棚に囲まれるようにして執務室奥には木製の机がある。その更に後方でギルド長は椅子に座っていた。
「ははは。なんとか勝利できて良かったですよ」
無難に愛想笑いをしながら返事をする。ギルド長は僕の右肩をちらりと
「ふむ。しかし、まさか君がグレシャム君に勝ってしまうとは思わなかったよ。とりあえず君にはレベルアップによって新しく魔法を覚えたことを周囲に証明してもらえれば良いと私は考えていたからね。ラース君が金級冒険者であるグレシャム君と戦ったらまず勝ち目はないし、大けがをする。そのためにわざわざ知人の回復術士を呼んだのだ。なのに、結果としてグレシャム君に回復魔法を施すことになって大変驚いたよ」
そうなのだ。僕のショートソードで腹を切られたグレシャムだが、駆けつけた回復術士によって一命はとりとめている。
まぁ、失血量が多く、傷も深いのでしばらくは安静にしておかなければならないらしいけども。
しかし、回復術士が到着するのがやけに早いと思っていたら、ギルド長があらかじめ手配していたのか。
「僕のために配慮してくださり、ありがとうございました」
僕はギルド長に頭を下げる。
「なに、君が気にすることではない。決闘の話を提案したのは私なのだしね。それより、今日ここに君を呼んだのは昨日の話をするためではないのだよ」
「ではいったい?」
「まずはこれを君に渡そう」
ギルド長は机にあったプレートを僕に手渡す。それは銀色をしており、僕の名前が刻まれている。
「これは、もしかして銀級冒険者のプレート!?」
「その通り。ラース君、君の冒険者ランクを私の権限で上げさせてもらった。金級冒険者を決闘で倒したのだ。このくらいの報酬は問題ないだろう」
一気にランクが2段階もあがるとは。これはありがたい。冒険者のランクが上がれば上がるほどこなせる依頼の数は増えていくからな。
依頼をする側からしたら、当然低級冒険者に凶悪な魔物を討伐する依頼を受けてほしいとは思わないからだ。
低級冒険者の身を案じているからではなく、純粋に依頼を失敗する可能性が高くなるからである。そのため、たいていの依頼にはランク制限を設けているものが多い。
例えば、オーガの討伐には金級以上の冒険者でないと依頼を受けられないことがほとんどだ。もちろん、依頼人が報酬をけちって銀級冒険者に依頼することもまれにある。
けれども、銀級冒険者にとってオーガは強敵だ。なので依頼を受けた銀級冒険者は帰ってこないこともそれなりにある。おっと、少し思考がそれたな。とりあえず、ギルド長には感謝しよう。
「ギルド長、本当になんとお礼を言ったら良いか」
僕は深く頭を下げた。
「うむ。まぁしかしだね、私が君の冒険者ランクを上げたのにはちと思惑があってのことなのだよ」
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