1-2 トモ
次の日、私は相変わらず溶けきってない雪道に悪戦苦闘しながら登校していた。
小学生の時は雪が降ったら顔を輝かせて放課後雪合戦なんてしていたような気がするが、雪が降り積もるたびにむしろ苦痛を感じるようになったのは私も一つ大人になったということなんだろうか。
まったくもって嫌な成長の仕方であるものだ。そう考えると内心苦笑してしまう。
こんなこと考えるのはやめだやめ。
そう軽く首を横に振ると、再び足元に伸びる薄く凍った雪道へと注力する。
絶対に転んでなんかやらないからな。
「美柑〜おはよ〜!」
未だ寒々しい空の下、私が足元に対して喧嘩を売っている一方、ひどく明るい声の持ち主はまるで雪なんて積もってないかのように軽やかな足取りで私に近づき、横からひょこと顔を覗かせてきた。
短く切られた猫っ毛が本人の動きに沿ってぴょこぴょこと跳ねており、なかなか可愛らしい。
「あっ
そう。会うなり早々その変化に気づける程度には、友の顔に明らかに"上機嫌です"と書いてあったのだった。
くりっとした猫目はきらっきら。口元も、なんとか表情の変化を抑えようとしているのか少し下唇を噛んでいる。が、ムズムズしている口角がずっと上へ上へとあがりっぱなしだ。いやもうわかり易すぎる。
私の問いに対し、友はさらに瞳をきらめかせた。
「おっ、わかっちゃうか〜?ふふーん!さぁて!なんだと思う〜〜?」
そいつはややうざったいとも言える言い回しでこちらに質問し、ニヤニヤした。
そんな表情で私を見るという事は、私にも何か関係があることだったりするのだろうか。心当たりが一つもないのだが。
まあ、とはいえ
「いや...知らんし...」
私にその問いに付き合ってやる必要はなかった。
私はしれっとした顔で適当に流し、スタスタと何もなかったかのように歩いていると、慌てたように
隣の友は頬がやや膨れている。
「お〜い〜なんでそんなこと言うのさぁ!少しは考えてくれてもいいじゃんかぁ!」
「いやそもそも聞いたのはこっちが先なんだけどな…」
軽くボヤく。まあ私はあまり気にしてるわけではないので、これは陰キャなりの戯れだ。
「別にいいじゃんかっ!ほら早く!!」
「いやまあそうだけど…」
「ほら〜〜!じゃあほらほらぁ!」
「そう言われても知ったこっちゃないし…」
「え〜」
「いや…うん…」
「...」
急に相手が静まり返る。ああまずい。私の悪い癖だ。ついついからかいすぎた。
こいつ...
ここがからかってもいいギリギリのラインだというのは今までの経験上分かっていた。一日中むくれ面だった鈴の顔を拝むはめになった事は、一度や二度ではない。
小学の頃から同じ学校に通う、やや性格が悪い私の数少ない友達なのだ。ここは私が素直に謝るべきだろうと、話に乗ってやることにした。
「
「ちがうちがう」
「じゃあ...晩御飯にデザートで【三ツ葉】のいちごショートがあったとか!」
「なんでそんなので朝まで喜んでると思ってんの...たしかにあそこのケーキ好きではあるけどちがいますー!」
軽い冗談をはさみつつ、個人的な本命を聞いてみる。
「ええ…じゃあ……まさか、例の好きな人に告白された...とか...!?」
その一言にギョッとしたような様子を見せた鈴は
「なっ!?ちがう!そんなんじゃないし!!」
と、顔を赤くし、全力で否定していた。
そうか…これもちがうのか...期待してたんだけどなあ。
「うーん」
思いつくままにとりあえず口に出してみたが全く答えにたどり着かない。どうしたものか。
そろそろ学校に到着するし、ここは両手を上げて降参しようかなあと思っていると、少し先に見える校門前にとても見覚えのある人物が立っていた。
「えっ…」
思わず声が漏れる。
何で君がここにいるんだ。いや、いてもおかしくは無いんだけど。
明らかに動揺が隠せていない私に気づいたらしい鈴は「うん?」と眉をひそめてから、私の目線を辿り納得した様子を見せた。
「とうとう気づいたかぁ。そうだよ、これが今日機嫌が良かった理由ってわけ。」
校門に立つ人物は、雪のように白い肌で、ぱっと見華奢に見えるが、細くともしっかりとした筋肉をつけている。
同年代より少し高めの身長で、スラッとした体に私と同じ高校の制服を着ている。校門に背を寄せてスマホを持っているだけなのに、なかなか絵になっていた。
シンプルな灰色のネックウォーマーをつけ、背中には無地の黒いリュック。
そして、私とは比べ物にならないくらい整っている顔だち、まじ黄金比。
涼しげな薄い青色の瞳とやや短めに切り揃えられた真っ白の髪。
その髪は太陽に照らされて、銀色にきらきら光って見えた。
雪の化身みたいな美しい人は、手に持っている、透明なケースをつけた白いスマホから目を離すと、ふと顔を上げた。そしてきょろきょろとあたりを見渡したかとおもうと突然動きを止める。
私達のことを探していたらしい。私と
「おはよう、
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