第34話 不倫は悪魔の誘惑



 そう言えば、こんな映画も見たなぁと、ふと思いだしたんですが、例のごとく、タイトルをおぼえてないんですよね。検索してみたけど出てこない。


 これも古い外国の映画でした。ヨーロッパなのか、アメリカなのかまではわからないけど、悪魔崇拝物って意外とアメリカが多いのかなって。たぶん、1990年代ごろの映画じゃないかと。


 さて、あらすじ。

 あるところに男がいて、まだ子どもはないけど、愛する妻と幸せに暮らしてる。だけど、なんだか近ごろ、妻の態度がおかしい……そうです。不倫。洋画にはよくある。妻に男の影を感じて……? いや、というか、友人知人なんかを集めた席に来てた怪しい男が相手だったかなぁ?


「あれ、誰だっけ?」

「さあ、あなたの知り合いじゃないの?」

「いや。僕は知らないよ」


 わりと高齢(と言っても五、六十代か?)だし、まさかその男が妻の恋愛対象になるとは思ってなかったんだけど、男はグイグイ、二人の生活に割りこんでくる。最初は相手にしてなかったはずの妻が、なぜか、あるときを境に一転して、男に夢中になる。果てには主役に離婚してほしいとまで言いだす。


 このへんくらいまではねぇ。ふつうの恋愛物なんですよ。怖いふんいきもそんなにないし、ぼーっと見てたら、じつはオカルト映画だと気づかない。


 妻がすっかり男に入れあげて、なんやかんやで別居、離婚となってしまったあと。妻をあきらめきれない主役は会いに行く。妻は男の家で同居してる。妻と少しだけ話すことはできたものの、そのとき、主役は妻がなんか変だと気づく。別れたばっかりなのに主役を忘れてしまったみたいだし、趣味や好みもぜんぜん違って、まるで別人のよう。

 男の家には変な人たちが定期的に集まって、妙なパーティーというか、儀式みたいなことしてる?


 何か変だと思った主役は、男の過去について調べ始める。そのくわしい過程は忘れたんだけど、男の過去を知る人たちに会って話を聞くと、まわりに気味悪がられてる。「あいつにはかかわらないほうがいい」「黒いウワサのある人物だ」「悪魔を崇拝してるんだ。恐ろしい」「〇〇って名前の男は前に死んだはずなんだがね」

 つまり、悪魔を崇拝してる同じ名前の男が、数十年ごとに復活してるくさい……。


 心配して、妻のもとへ走る主役。

「アイツは危険なんだ。五十年前に死んだ〇〇は、アイツなんだよ。どうやったかなんてわからない。でも、アイツは不死なんだ。悪魔の力を借りて、何度も死者の国から蘇ってる。逃げよう。じゃないと、君も殺されるぞ」

 抵抗するもと妻。

「何してるんだ。急げ!」

「……」


 そのとき、男が帰ってくる。なんとか妻をつれて逃げようとするものの、あろうことか、主役の手をふりきって、男のもとへ走る妻。

「〇〇、この人、あなたが悪魔に魂を売っていて、死んでも蘇るって言うのよ」

「おかしなことを言うもんだ。ねぇ、〇〇」


 愕然とする主役。なぜなら、男が呼んだのは、妻の名前ではなかったからだ。それは男の死んだ前妻の名前だった。


(え? 〇〇? どういうことだ? なんで、アイツの死んだ妻の名前なんか——)


 もと妻になぐられて失神する主役。

 気づくと自分は縛られて寝かされていて、そのまわりを逆さ十字とか持った黒服の集団がブツブツ言いながら拝んでまわってる。ふたたび失神。


 そのあと、場面が変わって、男の家で暮らしている主役。そのとなりには別れたはずの妻。二人で世間話なんかしながら、なごやかなふんいき。


「〇〇。新聞とってくれないか」

「いいわよ。〇〇」


 おたがいに呼びあう名前は、主役と妻ではなく、謎の男とその死んだ前妻の名前……。


 これけっきょく、謎の男は悪魔の力で、他人の肉体へ自分と妻の魂を何度も移しかえ、数百年の時を生きていたのでした。若い夫婦が新しい体に選ばれて、二人とも乗っ取られるという、なかなかのバッドエンド。


 映画ではくどい説明もなく、調査中に男を知ってるって人たちの話から総合して想像しないといけなかったので、意味がわかったら怖い系ですかね? グロい場面とか派手な演出もなかったし。


 こういう他人の肉体に魂を移しかえて乗っ取るって話、けっこうありますよね。アン・ライスの『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』シリーズの『肉体泥棒の罠』もそうだったし、マンガでも何作か読んだし、たぶん、僕が知らないだけで、ほかにもたくさんあるんだと思う。こういうののオリジナルって、どこから来てるんだろうか? この映画? 最初にやった人はスゴイと思う。けど、今ならこのネタじたいはテンプレと言えると思うので、別の味つけをしてこれで書いても著作権問題にはならないと思う。ただ、いろんな人がやってるぶん、新鮮味やオリジナリティを出すのが難しそうだけど。

 男女がなんかのきっかけで体と心が入れかわるって話はさらに多い。おれがあいつであいつがおれで、とか。君の名は。とか。けど、コメディ的な入れかわりは、なんらかの形であとでもとに戻るんで、ここではあえて、悪魔的能力で相手の体を奪うっていうシチュ限定です。

 体から体へ移り変わり生きる不滅の魂……一度は書いてみたいですねぇ。

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