第30話 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち



 はいはいはい。ただれた映画はほかにもいっぱい見てるんですが、そろそろ清涼感のあるやつも紹介しとかないとですね。

 カニカニ〜とか言ってるばっかじゃ、ヘンタイだと思われてしまうー!


 グッド・ウィル・ハンティング旅立ち。

 これはね。名前覚えてなかったけど、「不遇な数学の天才青年が真実の愛を手に入れる話」って検索したら出てきたよ。スゴイね。


 じつは、見たのはわりと最近。もしかして去年? おととし? そのくらいの新春映画でやった。すごく感動した。なにげに見たけど、見てよかったと泣きながら思った。最後の長い長いハイウェイをただひたすらまっすぐ、まっすぐ、愛する人のもとへマイカーを運転してく。あの感じが、その後の人生の長い道のりを思わせていいですよね。ラクな道ではないかもしれないけど、彼は自分のほんとに求めるものを見つけられた。


 ネットで調べてみると、この映画をつまんないと言ってる人もチラホラいるけど、たぶん、そういう人たちは、自身の人生で深く傷ついたことが一度もないんでしょうね。あるいは他人の胸中を想像することが苦手。こまやかな心理描写を描いた人間ドラマに興味がない人たちですね。


 もしかしたら、出だしが天才にしか解けない難問をかるく解いてしまう清掃員だったんで、その後のサクセスストーリーを期待したのかも? 「人間ドラマなんかいらないんで、おれスゲェ、天才かよ、清掃員とかってバカにしてたやつら見返したるわー!」的なのを見たかった派?


 この話はそういうんじゃないんです。薄幸な青年の魂の救済がテーマですよ。

 僕は文句なく名作だと思います。泣けた〜


 つい最近だったので、見た人も多いはず。主演がマット・デイモンだから検索にひっかかったのかなぁ? それか、最近に放映されて、検索する人が多かったから?


 1997年製作のアメリカ映画。なので、決して新しくないんだけど?

 さっきのカニバリズム映画なんか検索しても、まったくひっかからないよ?

「映画 カニバリズム 山岳地帯で男に追われる」って検索したけど、『ほんとに怖いホラー映画30選!』とかしか出てこない……。

 ホラーじゃなかったんだよな。いちおう文学だった。


 さて、グッド・ウィル・ハンティング。これは近年に放映したから、今さら僕が紹介しなくても、カクヨムでもすでに誰かがエッセイなどに書いてると思うんですけどね。


 ええ、主演はさっきも言ったマッド・デイモン。脚本もベン・アフレックと共作してるのかな? 監督はガス・ヴァン・サント。


 ある大学で数学を教えてる教授ランボー。彼はかつて著名な数学の賞をとっているが、今はふつうの数学者。学生たちに難問を出す趣味がある。誰も解けないなかで、学内の掲示板にその答えを書いたのが、アルバイト清掃員のウィル・ハンティング(マッド・デイモン)だった。


 ランボーはウィルの才能に目をつけ、数学を教える。だが、ウィルは幼児期に義父から受けた虐待がトラウマになっていて、誰も信用できない。数学に関して天才的頭脳を持つものの、素行が悪く、悪友たちと問題行動ばかり起こしている。今も鑑別所から出て保護観察中の身分。


 そのため、週に一度、セラピストのセラピーを受けなければ大学には入れない。しかし、ウィルは過去のトラウマにふれられるのがイヤで、セラピストたちをからかい、みんなお手あげ。最後に、ランボーの過去の学友であるショーンにセラピーを頼む。


 このショーンとはランボーのとったなんとか賞を競いあった仲。学校の成績はショーンのほうがよかったが、賞はランボーのものに。


 ところで、ショーン自身、心に傷を負っていた。最愛の奥さんが癌で数年前に亡くなり、まだその喪失感から立ちなおれていない。

 のちに、ウィルとショーンがちょっとずつ信頼を高めていく過程で、奥さんとの出会いの日の話をする。野球の歴史的な試合を友達と見にいくはずだったが、たまたま試合前に奥さんと出会い、試合へは行かず、奥さんとデートをした。それを悔いたことは一度もない。

「君にもきっとその日が来る。野球はそのあとでもいつでも見れるが、彼女との奇跡はその日しかなかったんだ」みたいなカッコいいこと言ってた。

「選択を誤るな。絶対に後悔しない道を選ぶんだ」みたいな。


 最初は無礼なウィルに、さすがのショーンもキレたりしてたけど、奥さんの話などをとおして、しだいに心が通いあっていく。


 一方で、ランボーはウィルを天才数学者として大成させたい。「自分はただの人並みよりできる秀才にすぎないが、君は天才だ。天才は才能をムダにしてはいけない」的なことを言ってた。

 ウィルの才能を開花させるために献身的だったのは事実。とは言え、かわりに人間的な幸せはすてろと言ってた。


 じつはランボーとショーンは仲が悪い。昔、そのへんのことで対立したからだ。

 ショーンは奥さんとのささやかな幸せを求め、ランボーはなんとか賞に固執した。ショーンの生きかたをランボーは侮蔑してる。


 で、このころ、ウィルは女子大生スカイラーに出会っていて、急速に惹かれあっていく。スカイラーはお金持ちの家の子で将来は医者になるつもり。でも、勉強が難しくてたまにへこむ。でも、がんばる。わりとエキセントリックで魅力的な子。トラウマをかかえたウィルを心の底から救ってあげたいと願ってる。ほんとにいい子。


 ちなみに、このあとの会話はショーンにセラピーの一貫で、ウィルが語った過去。


「義理の親父がさ。毎晩、聞いてくるんだ。さあ、ベルト、ナイフ、金槌(だったかなぁ? 最後の一個がなんだったか忘れたなぁ)のどれがいい?」

「最良の答えはベルトだよ。だから、おれは毎晩、ベルトって答えてた。そしたら、親父はベルトでおれが失神するまでなぐるんだ」

「でも、ある日もうとことんイヤになって、ヤケでナイフって答えたんだ。これが親父に刺された跡さ」


 脇腹に刺し傷を縫ったあと。


 彼女はそういうウィルをありのまま受け入れてくれる。


 でも、人に愛されたことのないウィルは、彼女に愛され、自分も惹かれていく感情をうまく処理できない。


「何を恐れてるの? わたしは何も怖くないわ。あなたをもっと知りたいのよ」という彼女を、ウィルはつきはなす。

 ネットで見ると、ウィルは複雑性PTSDなんだそうです。愛という感情を感じられなくなってたとかなんとか。


 なんか途中で悪友と詐欺まがいやったりとかもあったんだけど、そこはカット。

 ただこの悪友もスゴイいいやつだった。ウィルが天才だと知ってて、「おれらはどうせ同じだよ。何やってもここからぬけだせない。でも、おまえは違う。おまえは出ようと思えば出られるんだ。もっと上に立てるやつだよ。おれらが行きたくても行けない場所に。おまえがおれたちへの哀れみでそこへ行かないなら、おれはおまえをなぐる」みたいなこと言って励ましたりしてた。誕生日プレゼントに自分たちで修理した車をあげたり。


 ラストの二択があって。


 ランボーが勧める超一流企業への就職。政府関連の企業かも。数学者として、これ以上ない成功。ただし、恋はすてろ。なぜなら、スカイラーは遠くフロリダ州かどっかの大学へ留学するので、そんなことより、ニューヨークのその企業に入って足場を築くべき。こんなチャンスは二度とないぞ。


 もう一つは、ショーンの示す「自分に素直になるんだ。まわり道に見えたって、自分にとっての正解は一つしかない。その道が正しいと感じるなら迷うな」みたいなことを言われて、愛をつらぬくか。


 スカイラーはすでにフロリダ州へ旅立っています。最後に旅立つ前に、彼女へ電話をかけたけど、どうしても会いたいと言いだせずに無言で切ってる。彼女は泣きながら出立した。


 そのあと、ショーンとのセラピーのシーンがこの映画最大の見せ場。

 なんかめっちゃ感動的なこと言って、ウィルの心からの信頼を得るんですよね。

 ショーンがウィルを「息子よ」とか言って、二人泣きながら抱きあう。

 けど、ごめん。ここが大事な場面なのに、セリフとかいっさい覚えてない。泣いてたからかなぁ?


 たしか、このシーンでウィルは決心して、ランボーの勧める企業の面接をすっぽかし、フロリダ州のスカイラーのもとへ車を走らせる。長い長い道を、ただ愛する人のもとへ……。

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