第28話 ブリキの太鼓1



 強烈なインパクトと言えば——


 これもね。すごいインパクトの映画なんですよ。

 なんかすごかった。グロかったような? あと、お母さんと叔父さんの浮気シーンが記憶にくっきり。子どもがオモチャの太鼓たたきながら叫び声をあげてガラスを破裂させてた。

 でも、ストーリーあんま覚えてないな。


 というわけで、名前をなんとか思いだし、JAPANの『ティンドラム』みたいなタイトルだった。そうそう。ブリキの太鼓ね。

 名前さえ思いだせば、ネットで調べられる。あらすじザッと読みつつ、記憶をほりおこしました。そうそう。こんな話だった。覚えてる。覚えてる。


 たぶん、映画で最初に「なんじゃこりゃ!」と衝撃受けたのは、この話が最初なんだと思う。

 これより前に『オーメン』とか『ネバーエンディングストーリー』とか「わー、すごーい」と感銘を受けた洋画はいろいろありました。『ジョーズ』とか、『エイリアン』とか、有名どころも普通に見ましたよ。


 でも、なんていうか。そのへんの作品は一流品だったんです。意外性もいい意味で予定調和というか。見終わったあと「ああ、おもしろかった」で満足して寝られるというか。


 そう。初めて割り切れない思いが残る不条理な映画だったのかもしれません。


 さて、どんな映画かというと。

 舞台はナチスの占領時代。えーと、ポルトガルだったかな? どっかヨーロッパ。

 主役の名前はさっき調べたら、オスカルだった。あの男装の麗人とはぜんぜん違いますよ? あんな美しく華麗ではないです。むしろ、グロテスクで気持ち悪い子だった。


 このオスカル少年はなんでかわからないけど、自分で自分の成長(時間)をコントロールできる異能力者です。大人になりたくないと思い、三歳で自分の年を止めました。三歳の誕生日にお父さんからブリキの太鼓をプレゼントされてからは、奇声を発してガラスを割る能力まで身につけました。

 手のつけられない不気味少年オスカル。

 育児ノイローゼ気味のお母さん。


 ところで、このへんのどこかで、一家で食事をする風景があったんですよね。お父さんが「マカローニ! マカローニ!」と叫んでたの、この映画だったっけ?

 お母さんの出した料理に文句をつけて、「おれはマカロニが食べたいんだ! おれのマッカローニ! マッカローニ!」とお母さんを泣かせてた。


 あーあ。最低だな。この旦那。変な子どもだけじゃなく、こんな旦那の面倒まで見なきゃならないのか。


 あっ、違った。マッカローニはこれの前に書いた『カサノバ』の場面だ。最後に面倒見てくれてる屋敷では冷遇されてたので、使用人と同じ食事しかもらえなくて、「マカロニはないのか? 毎夜、豪華絢爛な晩餐に招待され山海の珍味を味わってきた私がこんな下々の食事とは! せめてマカロニだ。マカロニ。私のマッカローニ!」と叫んでた。そうだった。


 お父さんはなんか海産物だったんだよなぁ。大量の魚かタコか、これ料理しろとお母さんにつきつけて、なんかめっちゃグロテスクな場面だった覚えがある。それでお母さんが吐きながら泣いたんだよな。


 でもね。お母さんも意外とやるんですよ。このときの食事、丸テーブルで、お父さん、お母さん、オスカルのほかに、お父さんの弟——つまり、オスカルのおじさんがいるんだけど、なんか変なふんいき漂ってるなぁと思えば、食事してるテーブルの下で、お母さんはハイヒールをぬいで素足で向かい席の叔父さんの股間にキックイン。あ、攻撃じゃないです。エロですね。こちょこちょこちょ。お返しに叔父さんもお母さんのスカートよなかへ、こちょこちょこちょ。それをこっそりしゃがんで見ているオスカルですね。


 この映画、当時、児童ポルノだって各国で問題になったらしいんですよね。


 オスカルって時間を止めてるので、見ため子どもだけど、実年齢はもっと上なんですよね。なので、もっとあとになって出てくるお父さんの愛人の女の子を自分の恋人だと思ってて。


 それはそれ。あとでゆっくり書くとして、とりあえず、お母さんと叔父さん。

 例のテーブル事件で、絶対デキてるよなぁ、この二人、とは思ってたんですが。そのすぐあとの場面かな? お母さんと叔父さんの逢引き。このシーンがまた衝撃。


 日本で言う逢引き茶屋みたいなもんですかねぇ? つまり、ラブホ? どっか家ではない場所で待ちあわせ。お母さんが部屋に一人で入ってくんだけど、さきに叔父さんが来てる。ちなみに、お父さんは小太りのおじさんだけど、叔父さんはスラリとした、けっこうなイケメンだったと思う。お母さんのことも優しく励ましてあげてたし。そりゃ、あのヒデェ亭主なんかより、こっちのイケメンがいいよ。


 衝撃だったのはですね。

 不倫の場面。ラブホで待ちあわせ。遅れて入ってきたお母さん。さきに来てる叔父さん。見つめあう二人。

 ふつう、日本の映画なら、不倫する純愛男女、見つめあったあとは抱きしめあいませんか?


「愛してるわ」

「僕もだよ。愛してる」

「ずっと、こうして二人きりになりたかった」


 とか言って濃厚キス。

 それがセオリー。

 だと思うんですけどね。

 たしか、お母さんが部屋に入ってきた瞬間、叔父さん、もうパンツぬいでるんだよ。衝撃だったのは、上の服は着てるんだ。でも、下半身はまっぱ。ちょっと不倫相手でもドン引き……。


 と思いきや、それを見た(完全に視線がそこ)お母さん、我慢できなくなったようすで、パンツをぬぎすてる! スカートはいてます。赤いワンピだったかな。この場合のパンツは女性用ランジェリーのほう。パンツぬぎながら、叔父さんにむかって突進。抱きついて足をからめる。二人は立った体勢で、そのままドッキング。


 服くらい、ぬげば……?


 あきれると同時に、これがヨーロッパ人の情熱か、と衝撃を受けた。フランス映画とか、むこうの人は急にパッション放出しまくって、わめきだしたり、泣きだしたり、抱きあったり。日本人からしてみると「え? ここで?」みたいな謎の反応を、とくに恋に関してやるんですが、これがその最初だった。


 その後、何度もこの謎現象には出会う。


 イケメンのフィアンセがいるのに、なぜか冴えないおじさんと不倫する若い娘の映画なんかも見たなぁ。あれはなんてタイトルだったかなぁ? 調教とか言われて、ベルトで裸のお尻をたたかれたりしてたっけ? けっきょく、フィアンセをふって、おじさんを選ぶんだけど、そこはフランス映画なので、ラストはおじさんを殺しちゃったんじゃなかったかなぁ? そして娘は自殺? 警察に捕まるんだったかな?


 情熱の国の人とは感性がもう違うんだなと。

 なので、かーくん、昔はそういうヨーロピアンなパッションに憧れて、そんなふうにキャラを描きたかったものだよ。日本人でそのパッションを表現できてるのは、漫画家の萩尾望都さんだけだと思う。あのかたは感性が西洋風。


 話がそれた。西洋のパッション!

 でも、悪魔の子オスカルがお母さんと叔父さんをひきさくんですよね。叔父さんは兵士に徴用されて死ぬんだったか? お母さんは絶望して自殺。


 長くなりすぎたので、後半へ続く!

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