第15話 クロウ〜飛翔伝説〜



 これも深夜に一回だけ見た映画。ダークな復讐物。

 アメリカ映画だと思う。


 あるところで平穏に暮らしていた若い夫婦。妻は妊娠中で、出産間近。幸せの絶頂。永遠にこの幸福が続くと信じていた。

 だが、街のギャングに自宅が襲われる。愛する妻が目の前で犯され、殺されるさまを見せられ、自身も殺される夫……。


 ここで物語は終わるはずだった。だが、この街には伝説があった。無念の思いで死んだ人物が復讐を願うとき、地獄のカラスの力を借りて、この世に舞いもどる……と。


 この話は前半、後半にわかれていて、ストーリー性はほとんどない。前半は強盗に襲われる場面がえんえん続く。後半は復讐場面がずーっと続く。後半のほうが長かったかな。とにかく、ギャングのアジトを襲撃し、一人ずつ殺していくだけ。カラスの魔力を借りて蘇った主役は、顔に化粧をし、黒い服をまとい、二丁拳銃。武術と銃撃で悪者をぶちのめす。そういう話。


 ラストは、ありし日の妻との思い出の地で、霊になった彼女と再会……したんだったかな? そして、男は闇のなかへと去っていく。ジ・エンド。


 これだけの話なので、文字数が稼げないんだけど、映画って、ストーリーは単純なんだけど、映像は素晴らしいっていうのがありますよね。これはその類いだった。


 なにげに見たあと、どうしてももう一回見たくて、翌日、DVD探しまわったくらい。映画が古すぎて、どこにも置いてなかったんだけど。無念。


 この作品、知ってる人って、どのくらいいるんですかねぇ? 僕が思ってるより有名なんだろうか?

 というのも、この主演俳優のお父さんが、超有名人だから。うんと若い人はあんまり知らないかもだけど、ある一定以上の年齢の人なら、知らない人はいない。

 つい先日も、テレビ番組でこの人のこと言ってましたね。じつは苦労人だったんだと、それで初めて知りました。


 はい。お父さんの名前は、ブルース・リー。カンフー映画と言えば、この人。アメリカ映画史上、もっとも成功したアジア人じゃないでしょうか。


 ブルース・リーの映画も『燃えよ、ドラゴン』は見た。とくにカンフーとか好きなわけじゃないし、ジャッキー・チェンを何作か見たことあるため、むしろ、あんな感じかと思ってたら、予想とまったく違っていた。めちゃくちゃカッコいい! ブルース・リー自身、武術の達人なので、たしかに技のキレがスゴイ。緊迫感。空気が張りつめてる。


 燃えよ、ドラゴンも復讐物だった気がするなぁ。

 街のギャングに妹を殺され、単身敵地に乗りこみ、かかってくるヤツらを倒しまくる。乗りこむ前に妹の墓に花を捧げるスーツ姿がなぜか印象に残ってる。ふだんは知的で物静かな青年って感じ。

 この作品もとにかくアクションがメイン。ストーリーはほんと、それだけ。


 そういう意味では、クロウはお父さんの作品を、そのまま踏襲し、時代だけ今風というか、その当時風に演出しなおしたもの。

 でも、よかったなぁ。


 息子のほうは、ブランドン・リー。

 ここで、確認のためにネットで調べてみたら、なんと、意外な事実が判明した。

 じつはクロウの監督さん、アレックス・プロヤスだ。

 前に『ダークシティ』『アイ,ロボット』を紹介した人。


 むーん。つまり、徹底的にこの監督の作品が僕は好みなんだ。


 たしかにそう思ってみると、ダークなふんいき、夜の景色がダークシティによく似てる。

 この監督が使う主演俳優さんって、みんなカッコいいんだよなぁ。


 ネットでは妻ではなく、恋人と書かれてた。そこは僕の記憶違いかも。1994年公開の映画。


 ちなみに、ブランドンはこの映画の撮影中に、小道具の銃の事故で死亡している。空砲で撃つはずが、弾が入っていたらしい。暗殺だとか、自殺だとか、いろいろ憶測がとびかう。


 このウワサは、子どものころに何かで読んだ。親子ともども、スパイだったんじゃないか、それで暗殺されたんじゃないか、とか。


 そういうのもふくめ、すべてが謎めいている。


 映画のなかで、ブランドンが死亡するシーンもあるという。僕が見たとき、この映画がそれだと気づいてなかったので、どの場面だったのかはわからないんだけど。


 そう思うと、ラストに去っていく彼の姿が、より物悲しいですね。

 闇から現れ、闇へと消えていく。深い愛の余韻だけを残し……。

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