第14話 オーメン



 ホラー映画のなかで、たぶん一番好き。悪魔の子ダミアンがカッコよくてねぇ。

 人間って善なるもの、美しいものに惹かれる一方で、邪悪なもの、悪の美学みたいなものにも惹かれる。


 その両極の悪のほうに惹かれる僕がのめりこんだ作品。うんと子どものころに、2を見た。そのあと、大人になってから、レンタルビデオで借りてきて、シリーズ三作をあらためて見たように思う。3は見なきゃよかったなってほど落胆したけど。


 オーメン1

 赤ん坊のころから5歳までの子ども時代のダミアンくん。邪悪な演技がとてもお上手な子役であった。見ためはめっちゃ可愛い巻毛の少年なのに、この子のまわりでは、なぜか事件や事故が多い。よく人が死ぬ。疑問に思った刑事(? 牧師?)が少年の過去を調べる。


 少年は外交官の夫婦が出産後、すぐに亡くなったわが子のかわりにひきとった養子。だが、彼の出生を調べていくと、実の母は魔女だったとか、山犬が父だとか、変なウワサがいろいろと。ダミアンの父が埋まっているという墓をあばくと、犬の死骸が埋まっていた。ダミアンは六月六日の六時生まれ。これは悪魔の子の特徴であり、その証がダミアンの体のどこかにあるはずだ。寝ているダミアンを調べると、頭部の髪の毛に隠れて666の文字が。

 なんということだ。やはり、この子は悪魔の子だ。これまで死んだ人々も、すべてはこの子が殺していたのだ!


 ダミアンの危険性を訴えるも誰も信じてもらえない。わが手で退治するしかないと決心する牧師。

 だが、ダミアンはそれを察し、牧師が彼を殺そうとする現場を、わざとほかの大人に目撃させる。牧師は狂人あつかいされ、病院送りに……。

 ニヤリと笑うダミアン少年のアップで終わる。


 オーメン2/ダミアン

 僕が最初に見たのは、じつはこっちから。

 中学生くらいにまで成長したダミアン。

 ストーリーはよくおぼえてないんだけど、あいかわらず大人を翻弄し、自殺に追いこんだり、事故に見せかけて殺したり。それを楽しむ美少年ダミアン。なんか、学校の男性教師を授業中に弁論でやりこめたり、たぶんその先生だったと思うけど、誘惑して男色に走らせ(つまり、わざと自分を襲わせて)破滅させたりしてたような?

 悪魔的なカッコよさがあった。彼の個性は僕のキャラクター作りにかなり強く影響していると思う。

 このへんあたりまで、向かうところ敵なしのダミアン。大人をしのぐ賢さが憧れだった。


 オーメン3/最後の闘争

 これがねぇ。ほんと、ガッカリ。

 なんで、ダークな世界観を売りにしてきたシリーズが、ラストになると急に善に負けちゃうんですかねぇ? それも安易に。あきらかにキャラクター的に、らしくない負けかたをするんですよね。これはたいていのドラマなんかでもありがち。ダークヒーロー、ダークヒロイン、みんなラストは善人にほだされ、自分の罪を悔いて死んでいく。


 最後の闘争では、ダミアンはすでに三十代くらい。なんか、いっきに見ため、ふつうのおじさんになったなって感じで、すでにここで残念。もっとイケメンにしてくれてもよかったのに。

 英国紳士っぽかった。

 設定上、舞台はイギリスなのかも? 馬に乗って狐狩りなんかしてたし。


 さて、この世界にキリストの生まれ変わりが誕生している。ダミアンはその少年を自分の手中におさめようとしていた。神の子を堕落させたかったのか、その力を利用したかったのか。


 少年を近くに置き、親切を装い、籠絡ろうらくしようとする。狐狩りもここらで出てくる。狩った狐の血を少年の顔にぬったり。外国ではそういう風習があるんだなと。


 まあ、けっきょく、ストーリー性もあんまりなかったんで、ほとんどおぼえてないんだけど、牧師だかなんだかに、この少年がキリストの生まれ変わりだと悟る人物が現れ、ダミアンと争い、奪いあう。

 悪魔の手で堕落させてはいけない。

 闘争の結果、ダミアンは負け、少年は善の道に進む。ダミアンはたぶん死亡?


 なんか、急にあっさり負けたんだよなぁ。

 神の子をどっちが手に入れるかばっかりクローズアップされて、ダミアンが人を殺したりとかもなかったし、たしか、あげくの果てに、神の子に言いくるめられ、ダミアン自身がそれまでの自分の生きかたを悔やみ、神の道に改心するっていうラストだった気がする。うーん……。


 山犬から生まれた悪魔の子が、そんなバカな?

 せめて負けるとしても、悪魔の子として、せいいっぱい戦って死ぬならよかったんだけど。3のダミアンはカッコいいとこがどこにもなかった。駄作も駄作。安易な善の勝利。なんかなぁ。1、2とは監督が違ってたんじゃないだろうか?


 関係ないんだけど、同じころに流行ったホラー映画に『ローズマリーの赤ちゃん』というのがある。僕は大人になってから、深夜番組で見た気がする。怖いというより、アンニュイなふんいきのオカルティックな文学映画っぽかった。


 これも好きなんだけど、そのあと、続編を日本語訳の原作で読んだ。大人になった我が子と再会するローズマリーの話。

 途中まではめっちゃよかったんですよね。母と息子のちょっと恋愛にも発展しそうなあやうい展開で。

 ローズマリーは自分の子どもが悪魔だと思ったあと、意識を失い、植物状態のまま二十年が経過していたらしい。大人になった息子はカルト宗教の始祖になっていて、悪魔というより、世間では神の子と認識されていた。世界中に広まっていく息子の宗教。平和の人、神の子、キリストの再来と信じられていた。

 ローズマリーもそれを誇らしく思うようになっていたのだが、母の愛を求められ、受け入れるうちに彼の奇妙なところに気づく。ときおり、瞳のなかの虹彩が縦長に見えたり、人間のようではなかったり。もしかして、やっぱりこの子は悪魔?


 このへんまですごくよかったのに、最後の最後、とつぜんに、事故で意識を失ったローズマリーが目をさますと、病院にいて、自分が若返ってる。まだ二十代で、赤ちゃんも生んでいないという。じゃあ、あれは全部、夢だったのか……?


 という終わりだった。

 これもガッカリ。

 ええー! 夢オチかよぉという。あとがきでは、ただの夢ではなく、これから始まることを暗示してるとかなんとか言ってたけど、つまんなかった。


 シリーズ物のラストを閉める難しさが表れてた二作品だと思う。

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