第7話 わたしが美しくなった100の秘密



 これもアメリカ映画。

 主演、キルステン・ダンスト。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』で子役で出てた女優さんだ。


 金髪碧眼美少女至上主義のアメリカのミスコンを痛烈に皮肉ったブラックユーモア作品。


 主役はアメリカの田舎町に住む女の子(キルステン)。十三、四歳だろうか。長いブロンドの美少女。


 地方のミスコンに参加する。勝ちぬくたびに、村→市→州→アメリカ全土と大きな大会へ出場できるようになる。もちろん、少女たちの夢はアメリカ一番の美少女になること。


 主役の家は平凡で選考に不利。参加者のなかには母が大会優勝者だという娘も?(くわしくは忘れたけど、権威やコネを持っていて、優勝候補と言われていた)優勝候補者Aは容姿からいうと、さほどではない。主役のほうがずっとキレイ。


 参加者は全部で三、四十人はいた。つまり、ひとクラスぶんくらい。田舎なのに、けっこう可愛い子がいる。みんな、ライバルなので、視線がバシバシ。わたしが優勝するのよ、いいえ、わたしよとアピール合戦。地方紙やテレビのインタビューを受けたり、ちょっとでも目立って生き残ろうとする。


 その争いがだんだんエスカレートしていったある日、一人の女の子のもとにプレゼントのオモチャが届けられ、それが爆発。女の子は死亡した。


 え? いきなり死亡? そう。この話はシュールな展開をしていくデスゲームのようなもの。参加者が次々、何者かに襲われ、死んだり、大けがしたり、腹痛で大会に出られなくなったり。


 いったい、誰が犯人なのか? 主役は勝ちぬくことができるのか? 


 小さな地区大会でなんとか上位に入り次の大会へ、いよいよ州の大会へと進む。

 でも、ついに悪意の魔手がヒロインを襲う。州大会だったか、その前の地区大会だったか忘れたけど、参加者全員の共通の飲み物に下剤がしこまれていて、次々に出場じたいするハメに。主役も苦しんだが、なんとか根性で出場。参加者じたいが少なかったので、勝ちあがれた。


 ミスコンには上位入賞者に高額賞金も出るんだよね。


 ラストをよくおぼえてないんだけど……あまりにも記憶にないので、さすがにこれは続きが書けんと思い、ネットでチラッとあらすじを見てきた。


 それによると、主役は貧乏なトレーラー暮らしで、ミスコンに勝ちぬいて、ニュースキャスターになるという夢を持っていたらしい。


 ここで、ふわっと思いだした。印象に残ってるシーンが一つある。この映画、ミスコンじたいはだんだんグダグダになり、けっきょく、ラスト全国大会で主役が勝てたんだかどうか、おぼえがない。


 ただ、なんらかの事故で中止になったかも? そのとき、倒れふす多くの女の子たちを取材するテレビクルーのマイクを奪いとり、主役が惨状を訴える。


「こんなことがゆるされていいんでしょうか? 罪なき少女たちが犠牲になる。アメリカ社会の暗黒の縮図と言ってよいのではないでしょうか?」


 みたいなパフォーマンスを見せ、このときの報道が局のえらいさんの目にとまり、さっそくスカウトの電話が主役のもとに。ミスコンはダメになったけど、ヒロインはなりたかった職業につけた。


 ……で、そのあと、会場をあとにし、一人で街を歩くヒロイン。最初は神妙な顔をしてるものの、しだいにクスクス笑いだす。


 やったわ。チョロいもんね。これで貧乏とおさらばだ。わたしの夢が叶ったー!


 そう。犯人はヒロインだった。自作自演で、ほかの女の子たちを踏み台にしていたのだ。優勝候補者のイジメ対象と見せといて、ほんとに利用してたのは彼女のほう……。


 その後、キャスター(リポーターだったかな?)として活躍する彼女。

 わたしはこうしてキレイになったのよ、ウィンク、みたいな終わりかた……だったように思う。


 ひどい話だった。

 バカバカしくて笑えたけど。


 ただこれ、あながちシュールなだけではなく、ほんとにアメリカの闇の部分ではある。


 有名なジョンベネちゃん殺害事件。何年かに一度はテレビでやるので、知ってるかたも多いと思う。わずか五歳で殺害されてしまった美少女ジョンベネ。ブロンドは染めてたみたいだけど、ものすごい美少女。こんな可愛い子がいるのかっていう。アメリカの美少女コンテストで何度も優勝していた子。お母さんも優勝経験者で、ずっとジョンベネにつきっきり。コンテスト優勝のために日々レッスンしたり、マネージメントに忙しい。ほかにも姉、兄がいたけど、放置されてたようだ。


 これとは別に世界丸見えテレビ特捜部で、二回、アメリカのミスコン舞台裏に密着する番組を見たことがある。


 なんと、赤ん坊から参加できる。何歳から何歳までのクラスと、いくつかにわかれていて、ジョンベネちゃんのように、五歳くらいになると、もう歴戦の勝者みたいな子が多い。


 みなさんはワスプという言葉をご存じだろうか? ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントの頭文字を集めた呼称。白人で、プロテスタントで、初期移民の子孫。アメリカの上流階級のことで、これが根強い人種差別になっている。ワスプだけが特別だと本気で思ってる人たちが、アメリカ社会にはまだまだいる。


 なので、ミスコンにおいても、大事なのは、白人かどうか。ブロンド至上主義。大会に貧乏な黒人の子が参加してたけど、まったく評価されなかった。個人的には、この子、可愛いか? と疑問に思うほど、かなりのぽっちゃりさんが、なぜか、大会ではいつもいい成績を残してるんだそうだ。白人で金髪だからかな? ほんとにデブデブなんだけど……。


 ただ、パフォーマンス重視されてて、ふだんはワガママなくせに、このおデブちゃん、いざステージになると、歌もダンスもトークも完璧にこなし、とたんに愛くるしくなる。そこらへんが高く評価されるらしい。

 黒人の子はたしかにステージでは物おじしてしまって、あまりいいパフォーマンスができなかった。

 けど、やっぱり、人種差別が根底にあるんじゃないかなぁ?

 この番組じたい、ずいぶん前に見たので、今は多少、違うのかもしれないけど。


 今ではミスコンじたいが女性蔑視だと言って、疑問視されてるらしいし、意外と考えさせられる内容の映画でした。

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