第6話 夢見る頃をすぎても……じゃなかった?



 コメディ、だけどブラック、という映画をもう一本。

 これも深夜帯に見た。赤いドレスが印象的。


 これ、タイトルをてっきり、『夢見る頃をすぎても』だと思ってたんだけど、どうもネットであらすじ見ると、違うっぽい。

 じゃあ、僕が思ってたのはなんてタイトルなんだろう? 僕が見たやつには殺人事件なんて出なかったと思うんだけどなぁ。


 まず、主役からして違う。主役が平凡な主婦って書いてあるけど、僕が見たやつは老人。白髪の男性。若いころはそうとうのイケメンだったらしい。今でも女好きで、若いキレイな女の子を見てはフラフラ。年老いてみにくく太った女房を無視して、今日も浮気の真っ最中?


 このとき、デブデブの奥さん視点。部屋のなかで椅子にすわり、テレビ見ながらお菓子バリバリ(だったかな?)二階からギシギシ振動が。腹を立て、無視しようとするほどに振動は激しく、奥さん、ますます立腹。グルグル目がまわり、振動は激しく、グルグル、画面がグルグルグルグル……奥さん、倒れたきり、帰らぬ人に。


 これ、映画冒頭です。これも人の死から始まる。コメディなのに。


 奥さんが死んでることに気づいた旦那。主役はこっちなので、ここからはずっと、旦那視点。


「ふん。あんな口うるさいヤツ、いなくなって清々した」


 最初のうちはそんなふうに言ってるんだけど、なぜか、死んだはずの奥さんが目の前に現れる。

 道を歩いてる若い女の子のスカートがフワリと浮きあがり、ニヤける旦那。奥さんの亡霊が怒鳴りつける。


 そういうパターンが続く。


 えっ? これ、ほんとにコメディなの? ホラーの間違いじゃないの? かーくん?


 いやいや。コメディなんですよ。文章では伝わりにくいんですが、きつめのブラックユーモアなんですって。


 まず、画面がカラフルで明るい。女の子たち、みんなハデハデのディスコ服を着てる。たぶんアメリカである年代流行った様式なんだと思う。

 この映画で度々、出てくるのは、ダンスシーン。女の子はフレアのミニスカートワンピ。黄色とか、赤とか色とりどり。形は同じ。それがクルクルクルッと回転すると、スカートがねじれながらフワーッと舞って、パンツが丸見えに。一回や二回じゃない。それぞれ別の女の子なんだけど、みんな回転して、そのたびにパンツ見える。すごいパンチラ映画だった。アメリカのダンスってコレなんだと衝撃を受けた。


 で、そのダンスシーンは必ず、旦那が浮気に走ろうとするタイミングで出てくる。彼の浮ついた気持ちを舞いあがるスカートで表していたようだ。


 で、その直後、必ず奥さんの霊が出てくる。出るんだけど、亡霊と言っても生きてる人みたいで、正直、ぜんぜん怖くない。アメリカの亡霊って日本のそれより、リアルに人間ですよね。シックスセンスなんかでもそうだった。


 この映画ではさらに、奥さん、出てくるたびに、だんだん若返っていく。若返るごとにやせてキレイになっていく。最後は二人が出会ったばかりと思われる二十代の姿に。赤いドレス着て。これもほかの女の子が着てた例のワンピース。丸顔で鼻がツンと上をむいた、アメリカ人好みのチャーミングな美人。


 最初は文句ばかり言う亡霊に、旦那も悪口を返していたけれど、若返る彼女を見て、しだいに当時を思いだしていく。


「あのころのあんたはイケてたなぁ。そうだった。ベタ惚れだったよ」とかなんとか。


 奥さんを愛していたことを思いだす旦那。そんなころ、彼女が死ぬ前、クッキー缶に隠していた手紙を見つける。

 そこには、あなたが毎日、〇〇(奥さんの妹だか親友だか)と浮気していてツライ、無視して食べ物に走っていたけど、もう我慢できない、と言ったような内容が書かれてた。


 で、ここで、じつは——


 旦那、なんと、浮気してなかった。彼女の妹と浮気してると思われてたことがショック。女好きで気が多いのでフラフラはしてたけど、そこまでヒドイ裏切りはしてなかった。逆に妹だかが旦那に気があり、関係してるような嘘をついてた。


「〇〇と浮気なんてするわけないじゃないか。ほんとに愛してるのはおまえだけだよ」

「でも、毎日、部屋がゆれてた」

「あれはダンスしてたんだ。昔がなつかしくて」

「わたしの勘違いだったのね」

「またおまえといっしょに踊りたいよ」

「天国で待ってるわ」


 と、ここで終わればキレイなんだけど、この話、どんなラストだったかおぼえがない。なので、ここからはもしかしたら、僕の妄想かもしれない。


 ただ、赤いドレスで霧雨のシーンがあった気がして、なんとなくだけど、こうだったんじゃなかったっけ? というかすかな記憶が……。


 もう天に召されたのか、彼女は二度と現れないのか? と思われたんだけど。

 その後、なぜか車の運転をしてる旦那。彼女が消えて泣いてたんだったかな? それとも、ディスコ(クラブではない)に行こうとしてたかな?

 霧雨。暗い夜道。ネオンの光。カラフル。

 すると、街路に立つ美しい女。赤いドレス姿の若かりし奥さんだ。思わず見とれて、脇見運転し、猛スピードで事故る旦那。即死。二人で天に召される。


 だったような気がするんだけど、これは自信ない。別の終わりかたをしてたかも?


 そもそも、タイトル、なんだ?

 もうずーっと、夢見る頃をすぎても、だとばっかり思ってた。違うのかぁ。

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