第5話 ウェイクアップ! ネッド
ここらで底ぬけに明るい話を一つ。
陰鬱な作品は心に深く刺さるけど、だからと言って楽しい話が嫌いなわけじゃない。
これまで見たコメディ映画のなかで、僕が一番好きなのは、コレ。深夜だというのに、本気で爆笑した。とくに裸のおじいさん二人がバイクで爆走するシーン。
アメリカ映画。監督はカーク・ジョーンズ。
タイトルおぼえると、ネット検索で出てくるからいいね。話の内容に対して深いつながりのあるタイトル、またはごく短いとおぼえてられるようだ。
この作品もタイトルが内容を端的に表していてシャレてる。
アイルランド(ネットに書かれてた)の小さな村に住む老人、ネッドはある日、自宅で新聞の宝くじ当選番号を見ていた。
なんと! 自分の買ったくじが、十二億円当選してる!
ここで、主役がネッドだと思いましたか? 思いますよね? でも、この老人は喜びのあまり、ここで心臓発作を起こし、人生リタイアです。
だから、「ネッド! 起きろ!」なわけ。
さて、ネッドをたずねてきた友達の老人A、Bが死んでる彼を見つけます。同時に当たりくじも見つけました。
「おいおいおい、これ、12億当たってる!」
「じゅ、12億? どうすんだ?」
「どうって、ネッドが死んじまってるから、遺族のもんだろうよ」
「ネッドにゃ子どももいねぇし、かみさんもいねぇ。誰も遺産継ぐやつがいねぇよ」
「じゃあ、どうなるんだ?」
「継ぐもんがいねぇなら、国に全部、没収じゃねえべか?」
ここから、村人全員をまきこむ大騒動に発展していく。
村の長老会議によって、(最初は十人くらいだったか?)当たりくじをどうするかを相談する。別の誰かが買ったことにしてお金をもらったら? 村は貧乏だし、教会も修繕したい。村のみんなのために使うんなら、ネッドもきっと喜んでくれる。
だが、そこへかかってくる電話。なんだか、宝くじ運営委員会のようなところから。詳しくは忘れたけど、買ったときに店で名前を記入したか、あるいはネッドが生前に連絡したか、なんらかの理由によって、当選者がネッドだと、すでに知れ渡っていた。しかも、ほんとに当たりくじなのか確認するために、調査員が村にむかっているという。
村人たちは一丸となって、ネッドの死を隠し、当選したお金を山わけすることを決定する。そのためには、死体を隠せ、誰かがネッドになるんだ! などなどのすったもんだの数々が。
バイク爆走シーンっていうのは、まだ村の隠蔽工作がすまないうちに調査員が村外れまでやってきたことを知らせるために、服も着ずに知らせに走った場面。ネッドのことを二人で話しながら釣りをしてたんだかなんだか、川に落ちて服がぬれたんだったかなぁ? とにかく、たまたま裸だったときに一人で歩いてくる調査員を見つけた。この村はよそ者が一人もいないので、見かけない顔の人物は、ひとめで調査員だとわかった。
文章にすると、おもしろさが伝わらなくて、なんだか申しわけない。
この調査員がニブイんだか、利口なんだか、いろいろドキドキさせられる。
ちょうど調査員が来たときに、ネッドの葬式をしてたんだったかな。
「これはどなたの葬式ですか?」
「え、えーと、ネ……」
「ネ?」
「ネイルズです」
みたいなやりとりがあったり。
調査員との攻防が続くなかで、村人たちのなかでも争いが起こる。一人、村人みんなから嫌われている、鼻つまみ者の老婆がいて、彼女だけは調査員にほんとのことを教えてやると主張。たしか、イヤなら自分だけわけ前を多くよこせとか言ってたかな? 村人全員の相談によって、わけ前は等分にすると決まっていた。
とにかく、何度も調査員に近づこうとする老婆を、あらゆる方法で排除。監禁とかもしてたはず。かなりブラックなユーモア。
一方で、村の若い娘が父親のわからない子を妊娠していて、彼女に気がある男ともめていたり。
ドタバタあった結果、最終的に、どうにかこうにか調査員を納得させることができ、無事に宝くじを現金化できた。
その夜、村は宴。
だましとおせたことをお祝いして、みんなで盛りあがった。単純に喜び酒盛りする人々のなかで、村長に話しかける例の若い娘。
わたし、このお金で子どもを育てるわ、みたいな話の流れから、
「年齢は離れてたけど、彼をほんとに愛してたのよ」
「彼?」
「この子の父親はネッドなの」
「なんだって? じゃあ、この金は本来、すべて、君のお腹の子のものじゃないか。遺産の正当な後継者だ」
「いいの。わたしは自分のとりぶんで充分よ。12億なんて荷が重すぎる。それに、ネッドはこの子を遺してくれた。わたしには、これ以上の宝はない」
のような会話があり、最後はしんみり、キレイにまとまって終わる。
ドタバタコメディなので、こまかい部分の多くは忘れてしまってるんですが、見たときは、とにかく笑いが止まらなかった。
コメディ映画を好きになった最初の作品でした。
外国のコメディ映画は少しブラックなところも好き。
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