第8話 僕のバラ色の人生



 これ、タイトル忘れてたんですけどね。以前、知りあいユーザーさんと話題になったとき、「もしかして、これじゃないですか?」と調べてくださったやつです。


 ブラックユーモアばっかり三作続いたので、ここらで心の洗われる感動作を。


 この話、よく子どもにあんな役させたなぁと思う問題作。主演の子役、いくつなのかわからないけど、小柄な七、八歳だろうか? 案外、すごく幼く見える十歳? 演技力、スゴイ。


 というのも、これ、今、何かと話題のLGBTをテーマにした作品です。昔の同性愛物ってゲテモノっぽいのが多いんだけど、これはしっかりしたヒューマンドラマ。まだLGBTとか言われるより前の作品。


 心の性が女の子の少年が主役。子どものころから、お母さんの化粧品を使ってお化粧したり、女物の服を着たり、お人形遊びをするのが大好き。好きになるのも近所の男の子。〇〇くんと結婚したいと公言。髪を長く伸ばしたい。だから、お母さんが切ろうとするとイヤがる。夢はバービードールになること。完全に性同一性障害。トランスジェンダー。


 だけど、家族はそれを理解してくれない。

 とくに父親は「男のくせに男らしくない。軟弱だ。もっと男らしくしろ。お兄ちゃんたちは野球やサッカーが大好きだぞ。おまえだって、やれば好きになるはずだ」と、自分が監督をする少年サッカーチームに、むりやり主役の男の子を入れて厳しくしごく。


 自分は変なんだろうか? お兄ちゃんみたいにサッカーが好きじゃないといけないの? こんなことやりたくないのに。男らしくって何?


 少年はお父さんのために、イヤイヤながらがんばる。でも、チームのなかで一人だけひとまわり小柄で、態度もほかの子どもと違う少年は苛烈なイジメにあってしまう。


 僕やりたくないよと母親に訴える少年。

「どうして僕のままじゃダメなの? 僕が間違ってるの? みんなと同じでないといけないの?」


 母は戸惑い、少年の思いを受けとめられない。


 そんなある日、少年はいつものようにみんなにイジメられ、伸ばしていた髪を短く切られてしまった!

 だったかなぁ? お父さんが怒って切った? いやいや、好きな子に「男が男を好きだなんて気持ち悪いよ」とふられたんだっけ?

 とにかく、決定的な事件が起こって、少年は泣きながらかけだす。


 じつはこの映画、冒頭、少年が大事にしてるバービーに語りかけるところから始まって、ときどき、バービーが夢に出てきたりしていた。

 最後の事件、もしかして、大事にしてたバービーを兄か父にすてられるんだったのかも? 髪を切られるシーンは確実にどこかであった。


 誰にも認めてもらえない少年は、バービーの世界へ行くことを決意する。


「バービー。僕もうこんな世界イヤだよ。君の世界につれていって」


 それは自殺を意味する。

 崖にむかって走り続ける少年。

 少年の異変に気づき、あわててあとを追う母親。ようやく、少年がどんな子どもであろうと、自分の愛する、かけがえない存在であると気づく。


 道の途中で少年を見つけ、抱きしめる母。


「僕もうバービーのところへ行くんだ」

「ごめんね。今までごめんね。お母さんが間違ってた。あなたを愛してるのよ」


 泣きじゃくる少年と抱きあう。そういうラストでした。

 もう、これ書きながら涙が止まらないんですけど。


 少年が子どもであるがゆえに、純粋で、体の性別にこだわるまわりの偏見が理不尽な暴力に見える。

 最後、お母さんと理解しあえて、ほんとによかった。でも、このさきも少年の人生は多難なんだろう。お父さんやお兄さんとも和解しないといけないし、将来的にはパートナー選びにも障害があるだろうし。手術をして女の子になるのかなぁ?


 この映画、作られたのずいぶん前です。ネットで調べたら、1998年、フランス、ベルギー、イギリスで制作されたドラマ映画だそう。監督はアラン・ベンリネール。バービーじゃなく、女の子になるのが夢って書いてあるなぁ。


 何軒もまわったけど、近所のTSUTAYAにはありませんでしたと、タイトルを調べてくれた人が言ってました。


 LGBT問題であり、家族問題であり、泣ける話です。

 性的マイノリティのかたでなくても、共感できると思う。


 この内容で、タイトルが『僕のバラ色の人生』

 バラは西洋で男色を意味するからだろうか? それとも、少年が歩くイバラの道を暗示してるのか? こんなに苦しい日々でも、最後には幸福になるきっかけを見つけたからなのか? これから始まるのはバラ色なんだということか?(最後のほうの少年のモノローグで、なんかそんなようなこと言ってた。「だから、僕の人生はバラ色なんだ」とかなんとか)


 これも印象に残る作品です。とくにラストの葛藤がいっきに昇華する感覚が、感動をあたえてくれます。

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