最終話 青春の一ページ

 そして1か月が経ち……




>突如引退した男の娘ユーチューバー「ドラン」、その正体は大阪府内の医学生!?


>相手のスーツ男を特定、自由民生党大阪府支部連合会学生部に出入りしている模様


>ソロ活動中の「サリー」、チャンネル休止を控えて新たな相方を募集中? その真偽は?




 久しぶりにボクの実家に遊びに来た里美ちゃんはソファにだらりと寝転びながらタブレット端末のウェブ検索結果を見ていた。



「龍之介君、相当人気だったよねえ。ソロ活動になってから収益が半分以下になっちゃった。ネットにこんなこと書かれて私生活は大丈夫?」

「学内でも割と知られてるみたいだけどもう今更怖いものなんてないよ。コウ君も特定されたおかげで誤解が解けたみたいだし」


 あの引退宣言でボクはユーチューバー生活を終わらせコウ君はファッションゲイとの誤解が解け、そしてボクとコウ君のプライバシーは若干侵害される結果となった。


 といっても自由民生党の裏工作もあって決定的な個人情報はインターネット上に投稿されておらず、ボクが男の娘ユーチューバーをやっているという噂は引退宣言の前から学内で広まっていたためこれといって困ることはなかった。



「今になって思えば龍之介君にいきなり女装しろっていうのは無茶ぶりだったかな。公祐君にも怒られたし私もデリカシーなかったよね」

「いやいや、全然いいよ。ボク自身女装は結構楽しいって分かったし、ユーチューバー生活は人生の大切な思い出にするよ」


 これから大学を卒業して医師となり薬理学教室の教員となる以上は再びユーチューバーのような派手な生活をすることはないと思うけど、あの輝いていた日々のことは一生忘れないだろう。



「そ・こ・で! 提案なんだけど、今度はVTuberデビューしてみない? ドランの弟っていう設定で一からキャラクターを考えて……」

「それは流石に遠慮しときます……」


 里美ちゃんはまだまだ儲ける気満々らしいけどボクはライブ配信はもうお腹一杯だった。


 そして、ユーチューバー生活は青春の一ページに過ぎなくても里美ちゃんとは一生の友達でありたいと思った。

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