第8話 さっちゃんのOSCE教室 胸部・腹部編?

 【OSCE課題その3 胸部】


「今から胸部の聴診を行います。聴診器が冷たかったら教えてください」


 そう言って昨年度に購入した聴診器を手に取り、イヤーピースを両耳に装着すると膜型のチェストピースを左のてのひらで温める。


 ヤミ子のシャツの下からチェストピースを持った右手を差し入れ、前胸部の聴診を始めて……




 むにゅん。




 押し当てたチェストピースは、ヤミ子のDカップの乳房に吸い込まれた。


 その感覚があまりにも衝撃的で、思わず聴診器を繰り返し押し当ててしまう。




 むにゅん、むにゅん……




「……あの、さっちゃん?」

「あ、ごめん! 柔らかすぎて、つい……」


 慌ててチェストピースを胸の外側寄りに移動させ、ヤミ子の呼吸音を聴取した。


 ベッドの上で背中を向けて貰って、背中からも呼吸音を聴取する。



「もう、真面目に練習してるんだからそういうのは駄目だよ。今度は私がやるから」

「本当にごめん。ヤミ子の身体が綺麗すぎて、ついドキドキしちゃって……」


 ヤミ子に謝りつつ私が患者さん役になって胸部の身体診察を再度復習し、次の項目に移った。



 【OSCE課題その4 腹部】


「それではお腹の浅い部分の触診を行います。現在痛む所があれば教えてください」


 腹部の視診・聴診・打診が終わり、私はヤミ子の腹部全体の触診を開始した。


 ベッドに仰向けに寝転んで部屋着のシャツをめくってくれているヤミ子のお腹に手を伸ばして触れ、まずは浅い部分を触診していく。




 ふにゅ、ふにゅ、ふにゅ……




 むぎゅ。




 ヤミ子のお腹を触っていたはずが、いつの間にかヤミ子の胸を揉んでいた。




「さっちゃん、いい加減にしないと怒るよ?」

「あっ……」


 ヤミ子が薄く笑みを浮かべているのは、かなり本気で怒っている証拠だ。


 慌てて両手を引っ込めると、私はダブルベッドの布団に潜り込んでしくしくと泣いた。



「駄目、もう駄目! ヤミ子の身体がエッチすぎて真面目に練習できない!!」

「ちょっと、身体がエッチとか言わないで! 流石に私も恥ずかしいから!」

「私今すっごくムラムラしてるんだよ。この気持ちヤミ子には分かんないでしょ!?」

「そういう問題じゃないっ! これじゃOSCE練習できないでしょ!!」


 布団の外側からヤミ子にものすごく怒られたけど、私がヤミ子に身体診察をするのはどうしても無理だった。



「大体、普段もっとすごいことしてる仲でしょ? 胸の聴診とかお腹触ったぐらいで興奮するのおかしくない?」

「確かにそうだけど、いつもと雰囲気が違うと興奮しない? ほら、イメージプレイとかあるし」

「私はそういうお店のお姉さんじゃありません! さっちゃん、いつもそんなこと考えて生きてるの!?」

「うう……」


 これまでヤミ子と口喧嘩して勝った試しはないし、私が一方的に悪い状況なのでもはや何も言い返せなかった。



 その後は全て私が患者役になってOSCEの練習を続けたけど、これではヤミ子の練習にはなっても私は練習できない。


 練習中にヤミ子にセクハラをしてしまったことはちゃんと謝ったものの今後どうするかを考えないといけなかった。



「OSCE直前実習もあるし、さっちゃんはそれまで諦めたら? 個人で練習しなくても何とかなった先輩もいるらしいし」

「だけど、私も練習したい。……そうだ、ヤミ子とそういうことしてから練習するのはどう? それなら冷静に」

「また怒られたいの?」

「ごめん」


 時刻は既に13時を回っており、それからはヤミ子が茹でてくれたそうめんを遅めの昼食にした。


 度重なるセクハラにヤミ子は怒っていて、その日は寝る前まで中々許して貰えなかった。

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