用語集1-2 医学部用語(大学生活編)

※用語集はおまけコーナーです。読まなくても物語の理解には差し支えありません。

※特に断りがない場合、この用語集の内容は作中の設定ではなく現実に準拠しています。

※用語集に含まれる情報は2023年3月時点のものであり、現行の制度とは一致していない場合があります。



・医学部医学科のカリキュラム


 一般に1年生で一般教養、2年生で基礎医学、3~4年生で臨床医学を学び、5~6年生で病院実習に臨みます。

 いずれの科目も試験があり、4年生ではCBTとPre-CC OSCEオスキー、6年生ではPost-CC OSCEと医師国家試験に合格しないと医師になれません。


・科目


 高校までと同様、分野別に分けた教科を指します。「一般教養」を教科とすればその科目は「生物学」「心理学」「ドイツ語」など、「基礎医学」を教科とすればその科目は「解剖学」「生化学」「病理学」など、「臨床医学」を教科とすればその科目は「循環器」「消化器」「神経」などということになります。


・必修科目と選択科目


 文学部や工学部など、通常の4年制大学では必修科目は一部のみであり、選択科目を自由に履修して必要な分の単位を認定されれば進級や卒業が認められます。

 一方で現代日本の医学部医学科には選択科目という概念はほとんど存在せず、大抵は一般教養を除くすべての科目が必修になっています。単科医大の場合は一般教養もほぼ100%必修科目ということも珍しくありません。


・一般教養課程


 高校までの教科の延長となる「物理学」「化学」「生物学」「数理科学」、医学英語を除く語学、文系科目としての「心理学」「哲学」、医学・医療の社会的位置付けを学ぶ「医学概論」といった医学に直接関係しない科目を学ぶ課程で、一般に1年生で履修します。

 かつては医学部医学科でも2年生の最後まで一般教養課程とされていましたが、医学教育の高度化・分量増加に伴って一般教養課程は大幅に削減され、単科医大では1年生の前半で一般教養課程が終わる場合さえあります。


・基礎医学課程


 主に「解剖学」「生化学」「生理学」「微生物学」「薬理学」「病理学」の6分野で構成される基礎医学を学ぶ課程で、一般に1年生後半~2年生で履修します。概念として「解剖学」は「組織学」「発生学」を含み、「微生物学」は「免疫学」「感染症学」を含みます。

 大学によっては「病理学」が「腫瘍病理学」「炎症病理学」というように細分化されている場合もあり、臨床医学課程と比べて大学ごとの違いが非常に大きい課程です。

 一般教養課程と異なり大半が医学部医学科ならではの内容で占められ、臨床医学課程と異なり国試予備校の参考書や映像講義で学習しにくいため、基礎医学課程はあらゆる大学において難関となります。中でも学問的な側面が強く臨床医学に直結しにくい「発生学」「生化学」は苦手とする医学生が非常に多く、進級の鬼門となりがちです。


・臨床医学課程


 「循環器」「消化器」「神経」などの内科・外科や「眼科」「耳鼻科」「皮膚科」などのマイナー科をはじめとする臨床医学を学ぶ課程で、一般に2年生後半~4年生で履修します。CBTや医師国家試験において出題基準が臨床医学の科目別に規定されている関係上、基礎医学課程と異なり臨床医学課程の科目はどの大学でもほとんど同じです。

 臨床医としての仕事に直結する内容を教わり、CBTや医師国家試験合格のためにもさらなる猛勉強が求められるようになりますが、国試予備校の参考書や映像講義など対策手段が豊富なため真面目な医学生にとっては基礎医学課程よりも楽な場合が多いです。


・クリニカル・クラークシップ(クリクラ、CC)


 「臨床実習」「病院実習」と同義で、かつてはポリクリと呼ばれていました。一般に4年生後半~6年生で履修します。

 ポリクリは見学が主体となる臨床実習でしたがクリクラは医学生も医療チームの一員(スチューデント・ドクター)として診療に参加する参加型臨床実習であり、医学生は一定の基準に基づいて自ら診察や治療に関与します。

 クリクラはさらにコアCCとアドバンストCCに分けられ、各大学の附属病院で行われるコアCCを終えてから外部の病院でも行われるアドバンストCCに参加し、クリクラを完了してPost-CC OSCEと卒業試験に合格すれば卒業が認められます。


・出席


 近年の日本の大学では文部科学省の方針により授業への出席が厳格化され、授業にちゃんと出席しなくても単位認定される科目は少なくなりました。

 医学部医学科はその中でも特に出席の規定が厳しく、一般に授業のうち講義には全体の3分の2以上、実習には100%出席しないとその時点でアウトとなります。出席不足は本来であれば単位未認定(事実上の留年)となりますが、実際には定期試験の本試験受験不可(再試験は受けられる)という措置で済む場合が多いです。


・留年


 現代日本の医学部医学科では大半の科目が必修科目扱いなので、1科目でも単位認定されなければそのまま原級留置(留年)となります。6年生が卒業できずに来年度も6年生となる場合を特に卒留(卒業留年)と呼びます。

 学費が余分にかかり友人関係もリセットされてしまうなどデメリットしかないため、医学生はいつも留年の恐怖に怯えています。


・「~年生」と「~回生」


 大学生を指す「1回生」「4回生」という表現がありますが「回生」とは本来「その大学に何年間在学しているか」を指し、例えば1回留年した大学3年生は「3年生かつ4回生」ということになります。

 一方で近畿圏や四国では慣習的に「~年生」の意味で「~回生」という用語が使われ、「あの後輩は2回生だ」という表現を口にした大学生がいればその大学生は近畿圏か四国の大学に通っていると判断できます。派生形として「上級生」の意味で「上回生」といった用語が使われる場合もあります。

 『気分は基礎医学』作中に登場する大学はいずれも近畿圏内にあるため大学生は「~回生」という表現で統一されています。


・学籍番号


 大学生にはそれぞれ番号が割り当てられており、小中高校の出席番号と異なり学籍番号は大学に入学してから卒業するまで変わりません。

 大学によっては学籍番号に入学年度が記されており、「2017」という数字が学籍番号にある学生ばかりの学年に「2015」という数字が学籍番号にある学生がいればその人物は2回留年していると判断できます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る