エピローグ
278 気分は思い出話
一人暮らしだったおばさんの死は誰にも発見されず、その6日後の午後に異臭騒ぎで駆け付けた近所の人は無残な姿になった淑子おばさんの腐乱死体を発見した。
おばさんは僕の母方の祖母の姉(大伯母)だが銀行員を結婚退職してからサラリーマンの夫を支える専業主婦として暮らした祖母と異なり良くも悪くも自由な性格で、若い頃は地元を出て東京の出版社で編集者として活躍していた。
彼女はライフスタイルのみならず性的な面でもかなり
性格のきつさから両親や妹をはじめとする親族からは敬遠されていたがおばさんは子供にはとても優しい人で、自分が子供を産めなかった寂しさもあってか幼い頃の僕は淑子おばさんによくお菓子やお小遣いを貰って懐いていた。
40代前半になって初めて結婚した男性とは仲良く暮らしていたらしいがその夫もたった10年ほどで交通事故により他界し、それから淑子おばさんは以前のような奔放さを失くしてしまった。
夫の死亡保険金と遺族年金を受け取って編集者の仕事を辞めたおばさんは今治に帰ってきて、それからはずっと一人で生きてきたという。
物心ついた頃にはほとんど交流がなくなっていた相手だが、子宮頸がんのせいで子供を産めずようやく結婚した夫とも10年ほどで死別してしまったおばさんはどんなに寂しかったのだろうと想像して、僕は葬儀の場で真剣に淑子おばさんの冥福を祈った。
87歳で亡くなった一人暮らしの女性ともなると葬式に参列する人は少なく、僕はほとんど親族しかいない葬式で祖父母を助けた。
親戚一同は生前の淑子おばさんを敬遠していたが本気で嫌ったり絶縁したりしていた訳ではないので、告別式ではおばさんの思い出話で盛り上がっていた。
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